NHKBS番組 「プリズン・ドッグ 〜僕に生きる力をくれた犬〜」
NHKBS番組 「プリズン・ドッグ 〜僕に生きる力をくれた犬〜」
かつて同じオレゴン州の女子刑務所での、盲導犬や介助犬として育成のパピーウォーカーを受刑者が行うという素晴らしいプログラムが紹介されました。
日本では「島根あさひ社会復帰促進センター」で一期生の最初のパピー3頭が盲導犬の訓練に入りました。
NHKBSは残念ながら、我が家は設備が整ってなくて見ることが出来ませんでした。友人が視聴し書いて下さいましたのでご紹介します。(2010/3/7)(LIVING WITH DOGS)
アメリカの更生施設でのドッグプログラム
自ら希望してドッグトレーニングを行う若者の様子を3カ月にわたって追ったドキュメンタリーがNHKのBSで放送された。
アメリカのオレゴン州ポートランド近郊にある更生施設には10代から20代の若者たちが収容されている。以前、刑務所でのドッグプログラムをTVで見たことがあったが、ここにいるのはもっと若い人たち。
ドッグプログラムの試みが始まったのは16年前。そのころはいろいろなことが手探りだったという。
ドラッグ、酒、暴力が日常で我慢することができない、と自らを評するスティーブンは現在23歳で服役して4年め。
ドッグプログラムを希望し、自分がどう変わりたいのかを自ら語る。
捨て犬だった大型犬にハンターと名前を付けて訓練を始める。
小さいころからしつけられていない犬に訓練を入れていくのは難しい。
1週間目にやっとハンターにふせをさせることができた。
たとえできなくても「きっとできるよ」「明日またがんばろうな」と声をかけながらケージのドアを閉めていくスティーブン。刑務所内でトラブルの絶えなかった彼が、初めてふせが出来たハンターに「いい子だ」「大変だったろ?」と声をかけていた。
ハンターはそれから2カ月後に新しい家族に引き取られていく。
「別れるのは辛いけどうれしい気持ちもある。でももう少し一緒にいられたらとも思う。
これまで我慢を身に着けようなんて思ったこともなかった。わかりあうなんてすごいことだな。」
最後にもう一度犬を抱き締めた。
新しい家族はスティーブンにお礼を言って犬を連れていく。
「大丈夫?」とスタッフに尋ねられると「おれも幸せだった」と答えた。
他の受刑者たちも自らがネグレクトや母親の薬物中毒、両親の離婚などの生活環境から道を誤ったり、暴力的になったりして罪を犯し、服役している。
そして各受刑者たちのエピソードがそれぞれ語られる。
どのエピソードにも素晴らしい展開があり、青少年たちの顔がどんどん変わっていくのがわかる。
それと同時に、犬も次第に人間を信頼するようになり懸命にこたえていく。
それが良い循環を生み出し、犬も人も成長していく。
そのことを共有でき、認識が生まれた時、信頼と自信と誇りを持つようになる。
アレックス「最近すごく落ち着いて幸せそう、と言われる。犬の話をしていると笑顔になる。オレオ(彼の担当する犬)もおれも同じ。一度捨てられてまた人を信じようとしている。」
ジェフ「ジギーはやる気をおこさせてくれる。がんばれば先に何かある、と思わせてくれる。」「人生を悪い面だけでなく、良い面からも見られるようになった。」
スティーブン「犬も人間もみんな違う個性で生きているとわかった。今までそんなこと考えたこともなかった。変われたんだ。」
「自分を愛してくれるものがいると初めて知った」
「それまで感情がなかった。ここで彼らからすべてを学んだ」
受刑者たちの表情の美しい変化にひきつけられると同時に、私は犬たちの素晴らしさにも改めてひきつけられていった。
無償の愛で答える犬。受刑者か、資格を持ったプロか、なんて関係ない。
犬はちゃんと見ている。
スティーブンはハンターの次に、ひどい虐待を受けていたメスのオウシーらしき犬の担当になる。異常なまでにおびえた犬であったが、根気強い愛情で3日目に初めてケージの前に出てくるようになり、4日目には後追いをはじめた。
次第にスティーブンをじっと見つめるようになり、散歩のときも片時も目を離さないようになった。スティーブンは思わずレキシー(オウシーにつけた名前)を抱き締める。
こうして他の受刑者たちもまた新たな犬を迎え、躾を入れていく。
1期生のアスキアへのインタビューで彼はこう語った。
「最初は何もかもが手探りだったが、最初の成功が脚光を浴びた。
犬に対する愛情表現はそのまま人に移行できる。
自分が出所して同じ環境に戻った時、正しい道を選べ得るかどうかは、このとき培った精神力によるものだ。」
このプログラム修了者の出所後の再犯率は極めて低いそうだ。
最後にご褒美の場面があった。
新しい家庭にもらわれていった自分が手塩にかけた犬が、その後どう過ごしているか、家族から贈られたヴィディオレターを、受刑者たちに見せるのだ。
これを見ると里親になった家族もまた救われているのがわかる。
「人生が変わった」「いつも守ってくれる」「捨て犬だったこの子を愛してくれてありがとう」「人間を信頼するこの子はスティーブンの贈り物」
「家族の守護神」
など犬に対する愛情と信頼を回復させてくれた受刑者への感謝の気持ちが込められていた。
それを見つめる彼らの顔には、涙、笑顔、そして誇りがみてとれた。
このプロジェクトの創始者であるジョアン・ドルトンさんに敬意を表したいと思います。(2010/3/7)(東京 M.Tさん)