動物孤児院 (3)闘犬種が増えた結果は…

(3) 闘犬種が増えた結果は…

各都市にメインの動物孤児院があります。
私の住む街の動物孤児院は車の多い大通りからちょっと奥に入ったところで、ソープランドのような「宿」の真裏にあり、すぐ横は線路という、住宅に適したところではありません。だからこそ、土地代も安く、犬の吠える声にも文句が出る心配もありません。街から遠すぎても人々の足が遠のくでしょう。ドイツでは、線路際の土地は住みたがる人もいませんから、隣町の動物孤児院も同じく線路際にあります。

個人の動物孤児院は郊外の、広い庭園や農場を改造したところにあるようです。電話をしておいたので、係の青年が出迎えてくれました。彼はフルタイムの職員です。ちょうど、ボランティアの男性が、中型の黒い老犬を散歩に連れ出すところでした。門の中に入ると、いっせいに犬たちが吠え始め、とても会話などできない!
ずらり並んだ檻は、ちょっと見ると監獄みたいです。が、驚くほど広い運動場つき、小屋も清潔で、申し分ない施設です。(小型犬は2階の屋内)そこには大型犬ばかり、1,2頭ずつ入っています。大まかに言うと、闘犬種か、ジャーマンシェパードか、その雑種か、といったところ。暴れ回るピットブルやスタフォードシャーテリアや、牙を見せて私たちを威嚇するシェパードの前に立つと、足がすくみます。

「本当に人間に慣れているの?」という感じなんです。そこにいる闘犬種の犬たちは、実地試験にパスして、攻撃性がないと証明された犬たちなのですが。
「このスタフォードシャーテリアは2度、引き取られたのですが、2度とも返されました。返された理由は犬のせいではなく、里親のほうに問題があったんです」と、係の青年は説明しましたが、犬はその間も吠え続け、はっきり言って怖い!
50キロ以上はありそうな筋肉質の全身、大きな口には真っ白い牙がずらり見えて、おまけに興奮してヨダレをたらしながら上下左右に暴れ回っているのです。
これがドイツでなかったら、とっくの昔に、あの世送りになっていたのではないでしょうか。「犬に悪癖をつけるのは人間。犬は悪くない。」とドイツ人は口をそろえて言います。

実際、闘犬の血統でも、犬によっては、「小犬を怖がる」「人にも犬猫にも、ただただやさしいだけ」の闘犬種もいます。見かけと血統だけでは判断できないのです。
統計的にはジャーマン・シェパードのほうが闘犬種より人に噛み付く事故を起こしているのだそうです。闘犬種を飼っている人はそのことを指摘して、闘犬種を差別するのはもってのほか、と主張します。

毎月の犬税が闘犬種に限って大幅に値上げされ(市によって異なる)、払えなくなった飼い主がどっと動物孤児院に押し寄せたせいで、孤児院によっては、闘犬種がほとんど、或いは、闘犬種だけ、なんていうところさえあるほどです。

(2002/12/07) 

(小野千穂)

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