動物孤児院 (68)子犬10頭 飼い主を募集中。ただし条件付き……

子犬10頭 飼い主を募集中。ただし条件付き……

 土曜日の朝刊には、新しい飼い主を募集している動物が写真付きで紹介される。動物、とあえて書いたのは、それが犬猫とは限らないから。ウサギ、チンチラ、フェレット、ネズミ(ハツカネズミではなく、大きなネズミ!)、たまにはペット用として飼われていた山羊や豚だったりする。もっとも、大部分は飼い主がなかなか見つかりそうにない高齢の犬猫、問題あり(人や犬にかみついたことがあるケースや、仲良しの2頭を一緒に……それも大型犬)の犬、大型犬(圧倒的に多いのがジャーマン・シェパード系)、闘犬の血が入った犬だ。かわいいさかりの子犬なんて、めったにいない。
しかし、今回はその、めったないはずの子犬が、それも10匹も飼い主を募集中だ。子犬たちの母犬も新しいファミリーを探している。ただし、この11頭は、ボクサーとスタフォードシャー・テリアのミックス……。
前の飼い主から、その知人とやらが母犬を譲り受けたときには、母犬はすでに妊娠していたそうで、引き取った人は母犬と生まれた子犬10頭をこの町の「動物ホーム」に連れてきた。普通、「動物ホーム」は引き取る際に、その犬についての情報を訊ねる。犬を手放す人は、犬の名前、年齢、病歴、性格などの情報を提供する。
だが、このボクサー・ミックスの前の飼い主は行方不明で母犬の名前しかわかっていない。興味本位で危険犬種同士を交配してみたが、子犬の引き取り手のめどがつかずに飼い主は行方をくらました、というケースのようだ。放し飼いがありえないドイツでは犬の偶然の妊娠もない。第一、「危険犬種」は避妊去勢が義務なのだ。
 もし闘犬の血が入っていない犬たちであったら、「三ヶ月の子犬」は魅力一杯で、飼い主候補者が「動物ホーム」に行列したことだろう。だが、「危険犬種」の血が入っている犬を飼う条件を知れば、二の足を踏む人がほとんどだろう。

 つまり、この子犬たちを引き取りたい人は、
?15ヶ月に達したら「飼い犬としての適正テスト」を受けなければならない。
?「犬に関する知識テスト」に合格しなければならない。
?「闘犬種を飼う許可」を得なければならない。
?成人で、散歩は1頭ずつ行くこと。

犬税は、「動物ホーム」から引き取った場合の特典として、その年と翌年は免税となる。ドイツは州によって犬税の規則も異なり、闘犬種や、闘犬の血が混じった「危険犬種」は数倍の犬税という州もあるが、私が住むヘッセン州では犬税の額は統一されている。

?の「犬に関する知識テスト」は以前、この欄に書いたことがあるが、質問を2つ翻訳してみた。正解は1つか、複数。

質問:犬との暮らしで問題が起きた場合、相談相手として最適であるのは誰か?
□同犬種のブリーダーか、同犬種を飼っている人
□犬の行動に詳しい獣医師
□自分の犬を上手に扱っていそうな人
□特に犬の問題行動について経験豊富なトレーナー

質問:犬をしつける際、厳しすぎる体罰を頻繁に与えた場合、どういったことが起きると予想されるか?
□その犬は、「いい子」でなければならないと学ぶので、犬はルールを迅速に覚え、しっかり守ることができるようになる。
□その犬は、自分の飼い主を信用することができなくなって、びくびくするようになる。
□何も問題は起きない。そもそも犬たち同士、互いに厳しくあしらうものだ。しつけ訓練を受ける犬が内容を理解すれば、しつけ訓練もその犬にとっては大きな喜びになるだろう。
□その犬は状況によっては訓練に恐怖を感じ、攻撃的になる恐れがある。

「危険犬種」であっても、ただただやさしいという犬も多い。多くの「危険犬種」も、飼い方と教育と愛情次第なのだ(それと飼い主の忍耐も!)。実際に、「レスキュー・ドッグ」として活躍しているピットブルだっている。見かけが恐そうだという理由と、飼うための条件が厳しいという理由でずっと「動物ホーム」で待ち続ける犬もいると思うと本当に胸が痛む。



こんな子だったらすぐに新しいファミリーが見つけられるんですけど……
(テレビの「新しいファミリー募集中」番組)

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