動物孤児院 (6)犬はいつも人と一緒にいたい
(6) 犬はいつも人と一緒にいたい
スペインやポルトガルで、そして日本で、鎖でつながれた犬を見るにつけ、そして、「犬はつないで飼いましょう」という日本の市役所とかのポスターを目にするたびに胸が痛みます。犬は、敬愛するご主人様と一緒にいるのが最高の幸せだということを知らない人がまだたくさんいるようです。多くはないのですが、ドイツにもいます。売る目的で繁殖させられる大型犬(ドイツではジャーマン・シェパードが多い)を畑や庭だけの区域でオリに入れて飼う人、倉庫の番犬として飼う人…。
人間と隔離されている犬たちは、人が通りかかっただけで、ガンガン吠えまくります。普段から人間と接触している犬たちとは目つきから違います。
子供やほかの犬を襲う犬は外で飼われて神経質になっている犬が多いようです。ですから、ドイツでは犬が人を襲う事故があると、「人間が悪い!飼いかたが誤っていたのだ」と飼い主の責任を問います。
私が住む村には大規模な「貸し庭区域」があり、人々は日曜園芸や野菜作りを楽しんでいますが、その中に2箇所、ジャーマン・シェパードを10頭ほど飼っている「庭」があります。人がいないときは暗い小屋に入れられており、「ヒュウン」と寂しげな声が聞こえます。飼い主は毎日来て、散歩に連れ出しているようですが、いつもご主人様と一緒にいて、愛し愛されて暮らす犬たちがいることをこの犬たちが知ったら、何と思うでしょう。周囲のドイツ人たちも、「あれは残酷だ。何とかしないと」と言っています。
里親募集の番組でも、「ずっとオリで飼われていたので人との生活を知らない」犬が紹介されます。人間との生活を知らないから、人間の言葉を理解しないのです。アジリティーだけ満点でも、愛を知らない犬は、里親もたいへんです。ゼロからの出発ですから。司会者は、「オリはだめ! 家の中で、ファミリーの一員として飼ってくれる人を探しています」と、そのつど強調しています。
老犬になって、用無しと見なされた犬が、ようやくオリから解放されて、幸せになる最後のチャンスなのです。
(2003/02/20)
(小野千穂)