犬のフィラリア予防(経口薬に代わり注射新薬登場)

犬のフィラリア予防(経口薬に代わり注射新薬登場)

蚊を媒介に感染し、犬の心臓に寄生する寄生虫「フィラリア」。心臓病や腎臓病など様々な病気を引き起こすため、愛犬家は毎年、予防薬を与えて感染しないよう気を使う。
これまでの予防薬は1ヶ月に1度、経口で与えるものが主流だった。ところが、昨年秋、1回注射すれば6ヶ月は予防できる新薬が発売され、この春から実際に接種が始まった。ただ、こちらは副作用も心配。どちらを選ぶか、迷っている愛犬家も多いが…。

・メリット

新薬「注射用モキシデックSR」は動物薬専門の共立製薬(東京都千代田区)が米国の製薬会社と提携し、輸入販売している。同社によると、注射で投与した薬が皮下にとどまり、半年かけて徐々に成分が放出され、フィラリアの寄生を予防する仕組みだという。同社学術課長の保志昌子さんは「薬を与え忘れるのを防げるのが一番のメリット」と言う。蚊が出る期間は地方によって違うが「月1回だと7回投与が必要なケースが平均的。ところが実際に与える回数は平均3.5回とか、4.1回というデーターもある。
また錠剤では、あげたつもりが、後から犬が吐き出している場合もあり、それも防げる。

・副作用

しかし、新薬というと副作用が心配だ。農水省には4件の死亡例が報告されている。いずれも注射後、ショック症状が出て死亡した。3例は新薬の単独の使用で、1例はメーカー側で禁止していた狂犬病の予防注射と併用していた。
東京都練馬区の光が丘動物病院では、複数の予防薬について説明し、飼い主に選ばせているが、新薬を選ぶケースは少なく、様子見という人が多いそうだ。最近、同院でも接種後むくんだり、熱が出たりという副作用例がでたため、「死亡例があることも含め副作用について説明し、それでも飼い主が強く希望する場合以外は、使用を控えている」と飯塚修院長は話す。
動物用の医薬品の承認を担当する同省衛生課薬事室は、副作用について「新薬の承認時にはこうした副作用例はなく、また他の薬品と比べて副作用が出る確立が際立って高いわけではない」と説明。
しかし、5月半ばに集中して死亡例が報告されたため、原因究明のほか、使用上の注意の徹底や症状が出た場合の適切な対応を医師に呼びかけるよう共立製薬に指示した。

これを受け同社では、獣医師から飼い主へのインフォームド・コンセントを徹底するための説明書を作成中だ。

・飼い主は?

それでは、こうした新薬の利用を、飼い主はどう判断すればいいのだろうか。獣医師で、インターネットのサイト「ペットジャパン」を主宰する津田圭子さんは、まず獣医師に副作用や他の選択肢について、詳しく説明を受けることを勧める。
「説明が分からない時は、分からないと医師にはっきり言う。不安だったり自信のない人は使用しない。100%リスクのない薬などないのだから、これが基本です」。
動物病院を頻繁に変えている人は、過去の病歴や体質などを事前に説明することも重要だ。
体調が悪い時にはショック症状が起こりやすいため、接種の2〜3日前から愛犬の健康状態を注意深く観察する必要もある。津田さんは「日ごろの体温と呼吸、心拍数を知っておけば、異常があるときに判断しやすい」とアドバイスする。(毎日新聞 2002年6/6 朝刊)

サブコンテンツ

カテゴリー

このページの先頭へ