動物孤児院 (75)犬も飼い主も試験を受ける
犬も飼い主も試験を受ける
青空の日曜日、森に向っていたら、村のはずれの道路脇で珍しい一団が目に止まる。熊かライオンの血を引いたような巨大なレオンベルガーだ。精悍な姿のこの超大型犬が20頭以上もいれば迫力満点だ。
ところで、なにごと? レオンベルガー・クラブの集会だろうか? しかし、それにしてはどこか雰囲気が違う。飼い主は真剣なまなざしで、何かを待っているようだ。
「これから性格テストを行うんです」。紙バサミとペンを持った眼鏡の検査官がボソッと言った。
(あれ、レオンベルガーは危険犬種に指定されたの? 「性格テスト」というのは、闘犬種や人を襲った危険な犬をチェックするために定期的に行うテストなのに)
最初の名前が呼び上げられた。
人と犬がまず歩道を50メートルほど歩く。反対側から自転車がやってきて、人と犬の真横を通る。自転車は出発地点まで来ると、方向転換して今度は後方から人と犬に近づく。チリンチリン、ベルを鳴らしながら。
次に道路を横切り、反対側の歩道を歩いて出発地点に戻ってくる。検査官は犬と人をひたすら観察してメモをとっていく。
どの犬もお利口さんだった。すぐ横を走る自転車も、ベルを鳴らして追い越していく自転車も完全に無視して飼い主の横にぴったり寄り添って歩いた。
帰宅してから、ベルリンで獣医師の資格を取って活躍している友人に聞いたら、レオンベルガーがグループで性格テストを受けるのは珍しく、おそらくレオンベルガー・クラブが自主的にやっているのだろう、ということだった。体重20キロ以上、体高40センチ以上の大型犬を飼う場合、飼い主に犬の飼育資格証明(これも試験)を要求している州もあるそうだ。
レオンベルガーは危険犬種ではないので、性格テストは義務ではない。性格は温和で、友人の話では「ボーッとした犬が多い」とのこと。
確かに私が見た感じではボーッとしていたが、その大きさに圧倒された私は「撫でてもいいですか」と言い出せなかった。まあ、試験直前で、そういう雰囲気ではなかったのだが。このレオンベルガー、ドイツでは「子供の相手に適している」という言われるほどやさしい犬種だということになっているが、これは屋内で家族と一緒に暮らすという条件の下で言えることだと思う。
レオンベルガーを庭の犬小屋で飼うなどというのはもってのほかである。(<大型犬だから外飼い>という誤解は日本中にまだ生き続けている。)