【犬と暮らす家(4)】どんな家〜注文建築って? 建築家って?

【犬と暮らす家(4)】どんな家〜注文建築って? 建築家って?

建売住宅が悪いという訳ではありませんが、目的は短足犬のくーとこれから暮らす家です。少なくとも低い階段は注文住宅でしか実現できない事を、いろいろ見てまわって感じていました。

注文住宅といえば、やはり高価であり、CMでよく耳にする大手ハウスメーカーが思い浮かびます。同時に実際はセールス攻勢が凄いという噂も耳にします。いわゆる「見学にいく人」が「見込み客」となる某住宅展示場へ行ってみました。何事も経験と思ったからです。

住宅展示場はハウスメーカーと称される大手が一カ所にモデルハウスを建て、ひとつの町のような敷地の中で、それぞれの企業が宣伝活動をしている場所です。のぼりや客引き、子供向けのオマケを配布しているテーブルなどがどこのモデルハウス前にも並べられていました。

車を駐車スペースに停めるとすぐに客引きが始まりました。こちらにどうぞ、あちらでキャンペーンを開催中です、という感じでまずはモデルハウスに呼び込むための最初の挨拶のようなものです。足を向けて貰わなければ見込み客にもならないのですから当然熱いアプローチになります。妻は結構面白がっているのですが、私はどちらかというとそういう状況が苦手なので、気が乗りません。しかしせっかく見るならばと事前の調査で2メーカーに絞り、思い切ってモデルハウスに入ってみました。

どちらもモデルハウス内の個室では、今まさに家族が何組も打合せをしている最中でした。この不景気な時に、ハウスメーカーで注文建築をという人が結構いる事にまず驚かされました。そしてゆっくり見てまわっていると、当然ですが私達の担当と思わしき営業の人が近づいてきて、自社の優位性を色々とアピールしてきます。この時まだまだ無知だった私達は、とりあえず感心しつつ、素直に色々知識を吸収しようと思っていました。

ハウスメーカーでも工法が色々あり、鉄骨造、RC造、2X4造、そして在来工法という感じで、どれも特徴を表に打ち出してきています。我が家としては、妻が阪神大震災を経験しており、その中でも多くの倒壊した家を見ているため、地震に強い家は必須条件でした。

ではどの工法が地震に強いのか。それは地盤や構造設計によって大きく左右されるものなので、工法だけで当社が一番地震に強いですというセールストークは、後に疑問を抱く事になります。実際木造の在来工法だけが弱いという事でもないですし、木造の建築物が歴史的にも残っているという事実もあり、木の家に憧れのようなものもあったので、できれば在来工法でと考えていました。

壁を組み合わせたり、鉄骨を組んだりするよりも、そして今のマンションのようにRCで躯体を造り、あとは内側にビニールクロスを貼って仕上げられた部屋よりも、大工さんが技術を駆使して組んだ、木に包まれた空間に魅力を感じていたのでした。

それに注文建築を建てる場合にしても、今我が家には土地がありません。土地を探すのが先なので、それをいえば営業は諦めるだろうと思ったのですが、一緒に土地を探すという事を言ってきました。事実土地の情報も一部で掲示されていました。

ハウスメーカーではどこも豪華な装備の家があり、どこもいわゆるそれぞれの威信をかけたフル装備になっています。魅力的な設備が盛りだくさんで、元々敷地の大きさだけを取っても我が家に手がでるようなものではありません。3階建てはもちろん、贅沢な吹き抜け、広いリビングや部屋数の多さなど、とにかく全部入りです。参考になるかといえば、殆ど参考にならないという感想を持ちながら、住宅展示場を離れました。

ローコスト住宅に属する私達の希望する家は、他に何があるのだろうと考えます。工務店に直接頼むという昔ながらの建て方もありますが、どこの工務店が評判よくて、そこの何という棟梁が腕がいい、なんていう情報を得る事は、普通の人には難しい事です。では他にどの方法があるかと考えた時、建築家に設計監理を頼むという方法がありました。

しかし建築家に頼むという事は、ハウスメーカーよりも敷居が高く、ある意味家を建てる方法の中では最も贅沢な方法ではないかとも思っていました。建築家に依頼するなんて、別世界の事だと正直思っていたのです。実際この段階では、建築家の仕事はよく分かっていませんでした。

まず現時点で住みたい場所の近くを拠点に活動されている建築家をネットで探してみました。理由はできるだけ現場にまめに足を運んでほしいと思ったからです。何人かがみつかり、その中でブログで日々の苦労や成功例などを実直に発信し、かつ私とおない歳で海外のアジアや南米など辺境をバックパックを背負い旅した経験がある人に目がとまりました。そして重要なポイントである犬の気持ちがわかる人かどうかという点。するとつい最近パピヨンを飼われ、散歩に私たちのお気に入りの公園を使われているようでした。過去の作品もいい感じのものが多いのも決め手のひとつでした。

特に惹かれたのはバックパッカーで同じ地域を旅しているという点でしたが、旅人の出会いを信じる私には充分だったのかもしれません。根拠も保証もないですが、私は自分と同じスタイルで旅をし、旅で出会った人とは、そこで出会う事が必然だったというのが自論です。その建築家の方にも同じ臭いを感じたかもしれません。

いきなり私から相談のメールを投げました。土地もないし知識もないし、契約するなんていうレベルではないけど、建築家と作る家という事について、色々相談させてもらえないかというような事を書きました。するとすぐに大歓迎との返事をもらえました。

事務所であるマンションの一室に伺い、その扉を叩いたのは2009年5月30日の事でした。

事務所には若いスタッフの方がおり、こじんまりした体制で営んでいるようでした。くーは事務所の中を走り回り、可愛がってもらいご満悦です。くーはクレートに待機させて、まずは雑談から始まりました。

ネパールやタイ、中国は共通で、他にも雲南や南米などをバックパックで旅した時のエピソードでもりあがります。旅した人しかわからない苦労話や旅人の常識などで笑いも絶えず、あっという間に2時間がすぎてしまいました。

あわてて本題である建築家と家を建てるという事について、今土地を探している事、予算はどのぐらい必要なのかという事などを色々相談しました。その中で今建築中である現場への見学を薦められました。これはまさに願ってもいなかった事で、自分が関わっている現場を隠さずオープンにできるという事に、透明さと自信と誠意がストレートに感じられました。

まだ契約どころか土地すら見つかっていない私達に、およそ3時間以上付き合っていただき、この日はお別れしました。その帰り道に早速、過去の作品を見にいきました。車でそれらは2〜30分程度の所にあるので、くーの散歩がてらです。

崖地の家は1Fが既設のRC造ガレージになっており、その上に2階建が建てられています。これはテレビ番組「建もの探訪」で取材されたもので、この建物が建ってから並びの地価が倍以上にふくれあがったとか。裏の擁壁際に、30坪の庭があるようで、菜園になっているそうです。私達ならまさにそこはドッグランにする事でしょう。並びに建っている家たちのように単に延床面積を確保するものとは違い、採光や風の通り道を確保してすっきりとした建物でした。外からもらせん階段が見えています。

もう1軒は黒目川の土手をしばらく歩いた先に見える大きな家で、目の前が調整区域の畑と土手なため、眺めは最高のようでした。ここもまん中に吹き抜けがあり、そこを囲むように子供たちの部屋があります。小型犬も一緒に暮らすモダンな建物でした。中には防音壁で囲まれたスタジオもあるそうです。

これらをみたあと、日を改めてふじみ野市で建設中の現場を見させていただきました。ここで施工されている工務店の現場監督や大工さんと挨拶。皆さんとてもいい方で、楽しそうな現場でした。ここは狭小の3階ですが、驚くほどローコストで建てられており、正直私達の予算でも何とかなるのではと思えました。濃い茶色のガルバリウム横ハゼ葺きのシックな外観もいい感じで、インテリアも工夫されていて住んでいて楽しそうな家でした。

こうして私達は宣伝過多で現実の施工現場で働く作り手が見えにくいハウスメーカーよりも、建築家の方が設計と第三者としての視点から現場監理をし、腕のよい職人さんがいる工務店と共に家を建てるというスタイルが、透明性も趣味性も高い家づくりに思え、ぐっと惹かれていったのでした。

参考 : 風のアトリエ / 米村和夫建築アトリエ http://www.yonemura.jp/

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