動物孤児院 (76)雑種OR純血種? の問題ではなく、「どこで手に入れる?」が重要

雑種OR純血種? の問題ではなく、「どこで手に入れる?」が重要

<ドイツには「犬をただで差し上げます」がない>
以前はドイツでも新しく犬を入手するときは雑種か、純血種のほうか、2つの意見に分かれていたが、今は「どこから入手するべきか」の問題になっている。

日本の新聞広告でよく見る「子犬が生まれました。かわいがってくださるかたに差し上げます」というのはドイツにはありえない。ドイツでも40年前ごろまでは、「雑種はただでどこからかもらってくるもの」だったらしい。しかし、「純血種の犬を買うお金がないから雑種にしよう」の時代は過去のものになった。ホームから引き取るにしても、2万円ほどのお金がかかる。しかも引き取る側に犬を飼えるだけの条件が揃っていなければ引き取ることさえできない。

<純血種の子犬を買うなら、きちんとした繁殖家から>
今、東欧で繁殖された子犬が西欧に数多く入ってきていて問題になっている。東欧では劣悪な環境のもとで、売れる犬種が「産めよ増やせよ」式で繁殖されているというのに、買う人がいるから問題はなくならない。
ドイツのペットショップが子犬を売らなくなって25年ほどたって喜んでいたのに、東欧の繁殖屋から買う人が出てきたのは非常に残念だ。もちろん、血統書などあるはずもなく、あったとしてもインチキだろうし、これほど悪評高くてもそれでも買いに行く人というのはどんな人間なのか私には想像さえつかない。
安易に買う人がいなければ安易に売る人もいなくなる。(これは日本のペットショップの問題も同じだろう。ペットショップでハンドバッグでも選ぶように子犬を買う人がいるかぎり、ペットショップに子犬を供給するパピーミルも劣悪繁殖屋もなくならない。)
ドイツの真面目な繁殖家は特定の犬種を守るための努力を惜しまないものだ。日本にもそのような繁殖家がいるはずだ。買い手をしっかり見極めた上でしか売らないという人もいるだろうし、売った後もコンタクトを続け、そのような繁殖家なら犬に問題があれば相談に乗ってくれるだろう。
犬種の性格や体質をしっかり把握している繁殖家は、犬が精神面と肉体面で健康であるよう努める。たとえば、前回(レオンベルガーの例)に述べたような「性格テスト」を自主的に行い、攻撃的な犬を作らないという努力も怠らない。飼い主たちの真剣さと犬に対する態度から、「その犬種に惚れこんでいる」のが十分感じ取れた。お金儲けのための繁殖、ではあってはならないのだ。

<デザイナー・ドッグ? ナイン!ダンケ!(ノー、サンキュー)>
プードルとマルチーズのミックスをマルティプー? コッカースパニエルとプードルでコッカプー? 
アメリカのいわゆる「デザイナー・ドッグ」のブームはまだ続いているそうだ。そして、高価で取引されたそのような犬たちがボチボチ飽きられて捨てられ始めたそうだ。
ドイツでも純血種同士の雑種の子犬を売る個人は前からいたが、「デザイナー・ドッグ」と称して高価で取引していたというわけではない。たとえば、ヨークシャーテリアとマルチーズの飼い主同士が同意して、交配するというケースはあるが、「デザイナー・ドッグ」などと称して高価で売る商売が始まれば、ドイツ社会ではかなり顰蹙を買うのは目に見えている。
純血種同士を交配させて雑種を作ることがよくないというのではなく、さらに多くの子犬が商品となって出回ることが問題であるという意見が多い。どの動物ホームにも、あらゆるミックス、あらゆる純血種が新しいファミリーの出現を今か今かと待っているのだ。

<ホームから引き取って!>
今日の動物ホームは、ドイツ人が飼育放棄した犬だけでなく、東欧やスペインやギリシャなどのドイツ人が「南国」と呼ぶ国々から殺処分寸前に連れてこられた犬でどのホームも満杯状態だ。
この現状から判断して、「動物ホームから引き取る人こそが本当の意味の愛犬家ではないのか?」と主張する人は多い。「ホームが満杯状態なのにこれ以上犬の数を増やしてどうするのか?」というのが繁殖に対する反対意見だ。
テレビでの「飼い主募集」の番組も、「飼うならホームから引き取ってください!」と視聴者に訴え続けている。

しばしばこの欄で書いているように、日本でもテレビ局や新聞社がスポンサーになってくれて「新しい飼い主募集」の番組や新聞での募集が一般化したら、どれだけ多くの犬猫の命が助かることだろうか。

追記:
その1 
以前から頻繁に書いていることだが、子犬を売らなくともドイツのペットショップは繁盛している事実を知ってほしい。どの町にも大きなペットショップがいくつもある。ペットフード、ペット用品、生体販売は小鳥、モルモット、ウサギ、ネズミ、観賞魚。

その2
ドイツに住む日本人の友人が7歳の娘さんを連れて帰国した。たまたまペットショップを通りかかった際、「お母さん、どうして子犬が箱に入っているの?」と不思議そうに聞いたそうだ。ドイツでは子犬を店で売らないし、家の中でケージに入れることはなく、ケージはあくまでも運搬用である。ペットショップでケージに入れられた子犬が、7歳の子供の目には異様に映ったのだ。

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