【犬と暮らす家(8)】土地探し〜まさかの契約破棄

【犬と暮らす家(8)】土地探し〜まさかの契約破棄

不動産屋のKさんから無事買付証明の1番手となったという連絡を頂き、手付金を100万円用意しました。しかし任意売却物件であるため、リスクをクリアする必要があります。本契約は1週間ほど先になる事から、それまでに不安材料を洗い出し、払拭できる事はしていかねばなりません。

業者に全てをお任せするのではなく、自ら納得できるかを問いつつ自分でも調べました。住宅ローンアドバイザーでもある平山さんからのアドバイスや、ネット上の相談事例、ケース別の情報などを漁ります。不安材料はできるだけ少ない方がよいのは当然です。

その中でわかってきたのは、基本的に費用的なリスクは契約時にしっかり手付金の行き場所の取り決めをした上で接すれば損はしないという事でした。しかしもし契約解消となった場合にはそれまで費やした時間は帰ってこないという事も考えられます。しっかりと取り決めをすべく、契約前に重要事項説明書をKさんに持ってきて頂き、しっかりと内容を読み、変更してほしい点や条文を追加して欲しい点を反映していもらいました。

2009年7月10日。とうとう土地の売買契約を迎えました。不動産屋に出向き、土地の売主と始めて顔をあわせます。売主と買主、そして宅建の免許証を提示しながら取引に立ち会うKさんの上司の社長が読み上げながら重要事項説明書を確認していき、最後は署名捺印をしました。

売主の方は年配のご夫婦で、奥様はとても品がよさそうな方でした。いろいろな事情により、今住まわれている家を任意売却する事になったとの事ですが、今後どうされていくのかは正直私たちにはわかりません。相場から若干安めの金額ではありますが、それでも大きな金額をこれから一生かけて払っていかねばならない事には変わりありません。

無事契約を済ませた帰り道、引越しをしようと考えて約3ヶ月。こんなに早く土地がみつかるとは思わなかったと、妻としみじみ話しました。大きく一歩進んだという気持ちで、少しドキドキしていました。

翌日から今度は私の仕事です。まずは資金融資先の金融機関の審査を期限内に通らなければ、契約自体が破棄されてしまいます。いくら借りるべきか、どう支払っていくかを決めた上で、金融期間に向けて審査依頼をかけなければなりません。大手ハウスメーカーへ家を発注するならば、このような事も全て営業さんがやってくれるようですが、私たちは土地だけをまず購入し、建築家と設計監理契約を結び、その上で工務店との工事契約を結ぶという事を段階的にそれぞれと行なうため、全て自分でやらなければなりません。

Kさんはそんな状況を理解してくださり、素早くそして私たちが不利にならないように動いてくださいました。まずは不動産業者経由で審査・申込みを行なう場合に受けられる住宅ローン優遇制度を利用します。他にも私の勤務先の優遇制度なども利用しようと思いましたが、頼れるKさんに一括してお願いする事にしました。審査依頼を出したのは大手都市銀行3社です。

また今回私たちが建てようとしている方法では、いわゆるつなぎ融資や分割融資という方法を取らなければなりません。特に前者は余分な手数料や手順を踏まなければならず、できれば避けたいと思っていました。

現実的には分割融資が使える銀行を選びました。土地の購入時、工務店との契約時、工事途中、そして竣工時というように、完成済の建売住宅や大手ハウスメーカーの一括支払いではなく、工程の区切り時点で支払っていく昔ながらの建て方になるからです。

また近年、某注文住宅販売会社の前金を多く受け取り、そのまま着工せずに経営破綻するような事件も発生し世間を騒がせた事から、経営体力のある工務店でなければ審査も厳しくなるという現実も、この時実感させられる事となりました。

私は準大手の企業に勤めている関係で、審査上ではまず問題ないだろうとKさんやファイナンシャルプランナーの平山さんに言われていたのですが、金融機関側からは所得証明書を会社員にもかかわらず一昨年の分まで請求させられたり、仮審査すら1週間以上かかったりしていました。同時に仮審査の段階で工務店の工事請負契約書を求めてくる金融機関もありました。

土地が手に入ってから測量や地盤調査を設計を行い、見積もりを出して、どこの工務店に施工を頼むのかを決めなければならないのに、審査の時点で工務店との工事契約をしている訳がありません。このあたりは大手ハウスメーカーや既に完成している建売住宅を買うのとは違うはずなのですが、ありえない要求に不満を感じました。少なくとも建築家に設計監理を頼む建て方としては、銀行の融資審査時点で請求するものがあきらかに前後の矛盾が誰の目にも明白です。

また依頼しようとしている建築家米村さんも登録している「すまいと」というローン製品ができて間もなかったのですが、これだと竣工までに保証がついたり、つなぎ融資に近い制度を使いつつ、つなぎ融資不要という私たちの建て方にぴったりとあてはまる商品でした。

しかし残念ながら重大なポイントである不動産屋や会社の住宅ローン金利優遇制度が使えません。元々安めの金利であり新参ネット系の銀行や、唯一期待していた埼玉りそな銀行は物件が埼玉県内ではないという事で条件を満たしませんでした。

結果、当初の予定通り分割融資をして貰える都市銀行にターゲットを絞る事にしました。残念でしたが仕方ありません。そして3金融機関からの仮審査結果が次々と出てきました。

A行はいきなり落ちました。理由は建物代金が高すぎるというのです。なんと土地以外の建物代を希望の半分しか融資しないといいます。事実上1000万円で上物を建てなければなりません。不足分は自己資金で賄う事になりますが、そんなお金はありません。一体上物の値段をどう思っているのでしょうか。この銀行は私がマンションを購入する際に使った銀行で、延滞なく返済していた分、この対応にはおおいに不満でした。

B銀行はすぐに仮審査を通過しましたが、希望額の500万円ダウン。他にも何やらいろいろと条件が入り、電話で条項を何度も確認させられ、分割融資も可能だが2回までという条件がつき、融通がきかず非常に面倒な感じがしました。できる事なら契約したくない気分になっていました。

最後の頼みの綱であるC銀行。ここはあっさりと満額OK。そして分割融資も問題ないと言ってくれます。他の銀行とは比べものにならない親切な対応から、この時点で本審査へはこの銀行に絞って出す事にしました。

心配材料だった団信審査時の私の持病についても、平山さんにアドバイスを頂いた通りしっかり事前説明し、数日の後に正式に本審査を通ってくれました。これで土地契約上では売主側の抵当権抹消フェイズに入る事ができます。私の責任フェイズでもあったので、無事先に進む事ができ、心の底からほっとさせられました。

融資審査を無事通過した事で、私たちは気持ちも晴々と住宅機器や資材メーカーのショールームまわりを始めました。暑い盛りだったので、くーはお留守番です。サンウェーブ、ヤマハ、INAX、TOTO、タカラ、OZONE、東京ガスを1日でまわったり、パナソニック、TEPCO電機館でIHのデモを体験したりしました。ただしシステムキッチンやシステムバスを使うかはわかりませんでしたが、オール電化を考えていたためその実際や使い勝手を体験したかったのです。

2009年8月14日。正式にC銀行から本審査通過と融資決定通知書が届きました。いよいよ我が家の設計に入る事になり、私たちは間取りの決定に没頭していきました。

しかし契約した土地は今もまだ売主が住んでおり、地盤調査もできません。その上、まともな測量図が存在していない事が問題でした。当然ですがこの状態では設計ができないのです。

そしてとうとう恐れていた事がおこる事に。8月末の期限がきても契約した土地の売主側の抵当権が外れるかどうかが不透明になってきたという事実でした。

理由は複雑ですがこういう事でした。この土地には2つの抵当権者がおり、第1抵当権者は抵当権解除を予定しているが、取り分が少ない第2抵当権保持者が抵当権の解除を拒否したのです。これでは土地の売買取引は成立しません。私たちとKさんは、売主側の不動産屋の対応も疑いはじめました。

土地が引き渡されないどころか、9月に入っても連絡はなく、今だに売主が住まわれているという状況から、米村さんと進めてきた設計も、基本設計の途中でストップせざるを得ない状況に陥ってしまったのです。

その後双方の不動産屋の話し合いの結果、9月末まで引き渡し期限が延長されました。私たちはあまりにショックで、しばらくは何も考えられない状況でしたが、10月に入ろうとしても状況はかわらず、この土地はもうだめなのではないかと真剣に思うようになりました。最悪の結果で、この2ヶ月半は無駄になってしまうだけでなく、米村さんの作業も無駄になり、融資審査の苦労も全て白紙になってしまうという事です。

このプロジェクトの重要なポイントのひとつとして、過去最大といわれる住宅ローン減税の恩恵に預かるという事もありました。少なくともこの時点では2010年内に引き渡しが行なわれるのであれば、今後最大10年間にわたる減税が支払いの支えとなってくれます。それが今、振り出しに戻りまた土地探しをしなければならないという事があまりにショックでした。

既に契約上の期限はとっくに過ぎています。いわゆる売主側の契約不履行なので私の方はお金的な損はないのですが、予算内の土地価格や立地など、一時は買う事を決めた土地です。簡単に諦められないのは当然です。

Kさんも手を尽くしてくれました。何度も我が家にやってきて状況説明をして頂いたり、こちらの要望を伝えてくれたりしたのですが、その成果はありませんでした。

このまま相手方の出方を待つ事もできましたが、ずっとこの土地に振り回される事になります。7月上旬に契約をしたのに3ヶ月を経ても先が見えない土地に固執すべきか、それとも決心をして新しい土地を探すべきか、大きな転機が訪れました。

失意と絶望感とまではいきすぎですが、この3ヶ月の一喜一憂を振り返ると、とにかく落ち込みました。このプロジェクト始まって以来の最大のピンチに見舞われたのでした。

サブコンテンツ

カテゴリー

このページの先頭へ