【犬と暮らす家(9)】土地探し〜新たな土地と2度目の契約

【犬と暮らす家(9)】土地探し〜新たな土地と2度目の契約

ふりだしに戻った私たちの「くーと暮らす家」プロジェクト。この半年でいろいろな事が足早に通り過ぎました。経験や知識は重ねたとはいえ、半年前の状況に逆戻りしたという事に失意を隠せませんでした。あの土地価格であの場所という物件は、今後もきっと出てこないだろうという事が薄々わかっていたのも、ショックを大きくさせていました。

しばらくは何も考えたくないという状況でしたが、少しづつ新たな土地情報を漁り始めた2009年10月17日。これまでチェックしていなかった所に土地として売りに出されている古家有の物件をみつけました。価格はほぼ同じでやや菱形の形の36坪の土地。データをみればみるほど、これはよさそうだと思えてきました。そう思うとじっとしていられない私は、不動産屋のKさんに連絡をして早速物件を見にいきました。

肝心な最優先事項となるくーとの散歩場所であるZ公園からの距離がちょっとありそうなのが気がかりです。車でZ公園までいき、ハンディGPSを持ってくーと散歩しつつ土地までの距離を測った所、およそ20分で1.6kmほどありました。毎日の散歩には厳しいというのが実感です。しかしZ公園とならんで森と大きな芝の広場があるY公園の方が近そうなので、そちらへも歩いてみると、およそ10分ちょっとで到着。これならよいかもしれません。

その土地は北が急斜面で下っており、西と南の2方が前面4m道路と接道、東のみ隣に家が建っています。少し高台に位置し、居住中となっているようでしたが、今は誰も住まわれていない感じです。ビルトインガレージがあり、北の斜面側には中学校、並びに小学校があります。

周辺環境を確認してみます。前面道路が通学路になっていて、壁や道に子供たちのいたずら書きの跡があったり、実際に多くの子供たちが歩いていきます。またグラウンドが道を1本挟んで隣接している事から、日中ひっきりなしにチャイムや放送、奇声が響いて来るようでした。これでは住む人にとってもくーにストレスがかかってしまう可能性があります。

他に気になる点として駐車場の強度が怪しいため、最悪埋めてしまわなければならないという話が出たり、36坪あっても事実上のデッドスペースの存在から、有効に土地が使えそうになさそうでした。条件が良ければ休日と平日の朝晩の環境を比較検討してみようと悩みましたが、結局問題が大きいため却下となりました。住宅ローン減税の恩恵に預かるために来年中に引越しをしたいと思っていた私自身、焦りを隠しきれていませんでした。

その後1ヶ月近くは、見に行きたいと思える土地は出てきませんでした。11月に入りそろそろ流通量が増える時期と思われたのですが、期待を裏切り目的のエリアからの情報は途絶え、私達はどんどんモチベーションが下がって行きましたが、焦ってもどうにもなりません。その上、半ば諦めたと口では言っていた前に契約した土地の動向に期待する自分がいました。それも期待の甲斐なくいっこうに動きをみせてくれていない状態でした。

そんな状況の中、11月下旬のある時、新しく出てきた土地ではなく、これまで何度か目にとまっていた土地が気になりはじめました。

立地が想定外のエリアであり、不便とか資産価値とか色々な先入観からまったく調べる対象から外れていた土地です。前に契約した土地から直線で3km程度なのですが、お気に入りのZ公園からも離れているためとても歩ける距離ではなく、周辺に魅力的な大規模の公園がなかったのがその理由です。

その土地は31坪と首都圏の宅地としては公庫基準でもある標準的な大きさですが、もしもこのエリアならばもう少し広さが欲しいと思い、最初に見た時に却下対象として扱っていました。価格の差は行政区が違うという事だけのような感じでした。

不動産情報データベースの情報は何丁目までは一般公開されていますが、番地以下の詳細情報は掲載されていないものがほとんどです。なので正確な場所は不動産屋に聞かなければわかりません。これまでも調査段階で不動産屋に聞く前に限られた情報の中から探索し、GoogleMapやストリートビューで捜し当てた土地もあります。しかし最初から地域で除外していた所だと、よほどインパクトがないと再チェックするものではありません。

その土地は色々な要素が重なり気になったのでしょう。明らかに価格が安いのに加え、ガレージがプレキャストコンクリートユニットを擁壁部分の土地下に埋め込む形であり、その分土地が有効に使えます。2mほどある擁壁の上が現状更地で、上物の撤去費用もかかりません。他にも接道している道の幅が広く工事車両が停めやすかったり、駐車場完備のスーパーが数件や、内科や歯科、コンビニも徒歩圏内に複数あったりと、生活環境としても評価できる要素が揃っていました。

また私があと15年前後はサラリーマンを続ける事になるため、通勤時の最寄り駅までのアクセスもチェックしました。バスが駅までまめに走っていますが、最短距離でみると別の駅の方が近く、距離はおよそ2kmちょっと。毎日歩くのはしんどいですが、自転車を使えば充分に通勤できる事がわかってきました。

気になってくるともうじっとしていられません。Kさんに連絡をとり、現地に向いました。するとすぐ近くに狭いですがいい感じの雑木林の緑地公園があるのを発見。普段の散歩にはこの場所を使い、ちょっと車を出せば10分ちょっとでZ公園にも行けるし、方向は別ですが駐車場が無料なX運動公園も近そうです。この地区は静かな住宅地で、調べてみると30年以上前に造成された事がわかってきました。

武蔵野台地とよばれる地域の東の端、少し高台にぎりぎり位置するその物件の周辺は、水害の心配もなく、昭和22年の空撮地図でも森の中だった事から地盤は大丈夫そうです。造成区画周辺はほとんどが同じデザインなので当時は建売だったのでしょう。でも何ヶ所は新しめだったり、斜向かいは某大手ハウスメーカーで今まさに建築中で、そのうえ3軒隣も空地で販売中のようでした。ゆっくりですが、住人の世代交代も始まっているようです。

幹線道路から少し入った行き止まりの道沿いにあるその土地は、通過する車も住人だけです。接道しているのは南西側で、北東側にはなぜか飛び地となった細い空き地があり、東側に建っている家との緩衝地帯となっていました。北側、南側両隣にはそれぞれ家が建っており、挟まれています。

明るい日差しに照らされているその土地を眺めていると、隣のおばあさんが出てこられたので挨拶をしました。穏やかそうな方で、ヨーキーを抱いておられます。お話をしていると、家がないのは寂しいので、是非引っ越してきてくださいと言われました。また道を挟んで正面にはマルチーズを変われている方が通りかかられたのでご挨拶。犬がいるだけですぐに会話が弾みます。

ご近所全員とは話をしていませんが、みかけた方は皆さん穏やかそうでした。ただやはり年齢層は高いようで、30年前にこちらに来て今に至るという感じがしました。私たちも決して若くないですが、ここに住んだら若い方に分類されてしまうでしょう。

他にも武蔵野周辺で風物詩と言われる高圧電線が近く通っていると嫌なのですが、少し離れた所を走っているので気になりません。他に細かい事を言えば電柱も道を挟んだ反対側だったり、近所には野菜の無人販売所も数多くあり、空も広く日当たりもとてもよい環境というように、マイナス要因は鉄道の駅がちょっと遠かったり、分煙されていない店が少し多いという感じです。

100点満点の土地なんかありえないというのは実感していますが、少なくともこのエリアの先入観的なマイナスイメージに比べ、この土地はこれまで見てきた中ではダントツに条件がよいように感じられました。

私達はこの土地に高評価を付けて一旦帰り、あらためてKさんと連絡をとり、私は仕事で行けないのですが翌々日に妻に実際電車とバスで現地に調査に行ってもらいました。同時に建築家の米村さんと施工をお願いする可能性が高い工務店の方に現場を見ていただいた結果、大きな問題はなさそうでした。

この土地と出会う前後に、くーが3度目の指の骨折をしたり、私の母親が倒れたりと、ドタバタした中でしたが、そんな中での希望の光でした。

そしてトントン拍子に新たな土地との売買契約書を取り交わす事になります。2009年の12月19日、ちょうど建築家の米村さんのプロジェクト「メダカハウス」の上棟式の日でした。私達は上棟式に途中まで参加し、そこから車で10分ちょっとの不動産屋へ。2度目の土地契約です。

今度の売主は60前後のご夫妻でした。お2人名義で息子さんが住むために購入され、しばらく賃貸に出していたとの事で、どちらも自営業を営まれている感じです。この時売主側の仲介をした大手不動産業者の担当が測量の実施や境界確認の事を承諾し、無事契約を締結。私は翌日から早速再度銀行への2度目の融資審査へとステップを進めました。

今回も同様に都市銀行3行に審査を依頼しました。建築家と家を建てる上では保証面や融資回数の面で最適とも言える「すまいとマネープラン」で進めようとしましたが、審査先の銀行は提携しているにもかかわらず、担当が経験がないのでわからないと言い出す始末でした。

建築家と家を建てる場合、設計監理契約を建築家と結び、設計を行い、工務店へ見積もりを依頼するのですが、土地がなければ設計はできません。融資審査の段階で工務店と金額も含めた建築請負契約を結べる訳がないのに、それを先に出さないと融資審査ができないと言うのです。

すまいとマネープラン

結局「すまいと」と連携している金融機関2行は全滅。使えないとなると今回の家の建て方では、 分割融資をしてもらわないとなりません。残りの1行は本審査結果は年を越えてしまいましたが、分割融資にも寛大で、融資上限を越えなければ何度でもOKと言ってくれました。おまけに3行の中では金利優遇も最大です。

分割融資とは、具体的に建売住宅という完成品を購入する場合以外、土地購入時、工務店との契約時、工事中間(上棟)時、竣工(引き渡し)時と、最低4回程度支払う方法となります。ここで大手ハウスメーカーだと注文住宅でも竣工時一括支払いでもいいというケースがあったりするようです。

現実に見知らぬ工務店との契約をするという事は、不安があります。しかし私の場合はこれまで3軒の米村さんとのコラボプロジェクトの丁寧な工事を、この目で見て来たという事は心強い要素でした。土地探しから始まったここ1年は、苦しんだ期間でもありましたが、ラッキーな面もあったのかもしれません。

融資審査の結果は1勝2敗でしたが、私の方の資金繰りはとりあえずオールクリアとなりました。売主側にはこの土地を測量をかけ、隣地との境界確定とその誓約書や証明書を作成し、瑕疵責任として土地から浄化槽が出てきた場合の対応を特記事項に記載してもらいます。

契約時に売り主側の不動産屋の担当が人間的にひどく、支店長が出てきて謝罪の上、交代するという事件がありましたが、土地自体は前に契約した所と比べものにならないほど健全です。最終的に出してきた資料は完璧で、無事契約が成立し私のものとなりました。それは土地探しを初めてから、およそ8ヶ月目の事でした。

一進一退、問題を乗り越えて、さあいよいよ、「くーと住む家」の設計が始まります。

 

サブコンテンツ

カテゴリー

このページの先頭へ