動物孤児院 (80)コッカースパニエルの長〜い尻尾

動物孤児院 (80)コッカースパニエルの長〜い尻尾

断尾はなぜ違法?

ドイツで出会うコッカースパニエルの尻尾は長い。コーギーにもふさふさした長い尻尾があるし、ロットワイラーにも、ドーベルマン・ピンシャーにも、ボクサーにも普通に尻尾がついている。
私自身、ドイツで初めて断尾しないコッカースパニエルを見たとき、てっきり別の犬種かと思った。このように、アメリカや日本で尻尾のないコッカースパニエルに見慣れている人が長い尻尾(つまり普通の長さの、ということなのだが)を見たら、「なんだか変!」と思うかもしれない。中には、はじめから尻尾が退化している犬種というふうに思っている人もいるだろう。

ドイツで知り合ったインド人のJさん一家はコッカースパニエルが大好きで、インドの実家ではずっとコッカースパニエルを飼っていたそうだ。彼女は断尾について「尻尾があると病気になる」と聞かされていたので、何も疑問に思ったことはないと言った。そして今でもそう思っているようだ。

もともとは狩猟に長い尻尾はじゃまだということで断尾が施されたらしいが、今日コッカースパニエルをハンティングドッグとして飼う人はほとんどいないので断尾も行われなくなった。

ドイツでは1998年には断尾が禁止になっている。例外として、実際にハンティングドッグとして断尾したほうがその犬のためにベターという場合は例外的に許可されているそうだが実際にそうする人は今時いないと思う。完全に使役犬として育てるので断尾する必要があるという場合、生後1〜3日の間に全身麻酔のもとで、という決まりがある。
以前は、「生まれたばかりの子犬は痛みを感じない」と見なされていたので、麻酔なしで断尾されていたが、後に、「生後まもない子犬は成犬よりはるかに痛みを感じる」という医学的に研究された結果が発表されると、断尾は不必要な苦痛を与えるだけの悪習として受け止められるようになった。
そんなわけで、ロットワイラーの尻尾も、ドーベルマンの尻尾も、コーギーの尻尾もドイツでは長〜い、のである。


垂れ耳ドーベルマン

テレビ番組や新聞の「飼い主募集」には断尾、断耳された犬がしばしば登場する。国外で救助されて、ドイツに連れて来られた犬たちだ。ちなみに、ドイツから東欧などの規制のない国に連れて行って断尾や断耳を施すことも処罰の対象になるそうだ。(そして、西ヨーロッパ内にもヤミで断耳、断尾する人間がたまにいる。)

近所のドーベルマンも当然、垂れ耳で長い尻尾だ。散歩のとき(リードなし!)、いつも自分の玩具をくわえ、ずっと後ろから歩いてくる飼い主の女性を振り返りながら歩く。耳が垂れていて、尻尾も長いと、アメリカのアクション映画とかで敵に牙をむいて襲いかかるあのドーベルマンと同じ犬種とは思えないほど、受ける印象が違う。
断耳のほうは1987年以来、禁じられている。

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