フォスターファミリー体験記 – 3本足のJake(1)

3本足のJake(1)

私の所属するフォスター組織Oregon Friends of Shelter Animalsでは2年ほど前から約1000マイル(1600キロ)離れたカリフォルニアのSan Bernardino市のシェルターから定期的に犬を引き取ってきています。このシェルターではなんと毎週500匹もの犬を殺処分(致死注射による)しているのです!
5月30日、買い物途中に何気なく寄ってみたOFOSAのクリニックではカリフォルニアから連れ帰った50匹の犬達の検査、予防注射、登録などでてんてこ舞いでした。その中でシャイな6ヶ月の女の仔を預かって欲しいと言われた私は、乗りかかった船ですから一緒のケージに入れられたもう一匹のパピーも遊び相手にと引き受けることにし、その場で彼らに名前をつけました。

臆病な8ヶ月の女の仔がTina(ティナ)、生後8週間の男の仔がJake(ジェイク)。Tinaは極度の栄養失調のためか後ろ足の筋肉がまるでなく、フラフラ歩いてすぐに座り込みます。Jakeのほうは左後ろ足を骨折しているらしく、びっこをひきながら身体をくねらせて歩きます。後日撮ったレントゲンの結果、Jakeは足と骨盤に6箇所もの骨折が見られました。とにかくこの2匹を家に連れ帰り、まずはウンチまみれの身体をシャンプーすると見違えるほどきれいでかわいくなりました。2匹は大の仲良しでよく遊び、一緒のクレートで寝るので、やはりJakeも一緒に連れてきてよかったと思いました。うちの犬たち3匹はの結束(?)が固く、フォスターの仔達はなかなか仲間に入れてもらえないのです。特に「パピーの相手なんかとんでもない!」というふうに距離をおいて見ています。

TinaとJakeは欠食児童のように沢山食べ、よく遊び、うちの犬や猫や人間達にも馴染んで3週間が経ちました。Tinaの足もずいぶんと力が付き、彼女は6月16日に新しい家族にアダプトされていきました。

残ったJakeは、持ち前の天真爛漫でフレンドリーな性格から、今度は猫ちゃんたちを相手に追いかけっこをしています。そして明日6月20日に、とうとう左後ろ足の切除手術を受けることになりました。
足を切除するかどうかについては医学的な見地から、また不要犬の保護団体としての立場から、更にはJakeのかわいさに魅了されてしまった一般の愛犬家の心情から、賛否両論がありました。
まず一番一般的な意見は、「悪い足を使って歩いたり、走ったりしているのになぜ残しておけないのか!」。
以前フォスターしたAngelが同じく左後ろ足の切除手術を受け、新しい飼い主に引き取られて数ヶ月後にドッグパークで会ったときには3本足とは信じられないほど元気に走り回っていたのを見た私でさえも、できることならJakeのこの変形した足でも残してあげたいと思いました。どうして骨折したのかは不明ですが、この状態でだいぶ時間が経っているらしく現に左右の足の大きさの違いは一目瞭然です。でも痛みはほどんどない様子です。

OFOSAではボランティアの獣医師達が、無料あるいは安価で毎週犬や猫の去勢避妊をしてくれていますが、Jakeのようなケースはやはり専門医とも相談した上で、切除すべきとの結論を出したそうです。その理由としては、まず骨折が一箇所ではなく6箇所もあること。たとえピンやプレートで固定したとしても、今後の成長過程でその足は健常な足よりかなり短くなってしまい、その足を引き摺るようになるとのこと。健康な犬でも普通10-12歳ごろから後ろ足の衰弱が見られますが、Jakeの場合には更に早くからRimadylなどの鎮痛消炎剤を飲み続けなければならなくなることなどが理由だそうです。また人間の場合ならどうにかして悪い足を残そうとするでしょうが、犬の場合、特に後ろ足を失ってもさほど支障なく生活していけるとの前例が沢山あることも大きな要素でしょう。

保護団体の立場としては、やはり治療費の問題もあります。限られた財源でどれだけ多くの犬や猫達を救えるのか。Jakeの足を保存するための手術は10000ドルもかかるそうです。しかも身体の中にピンなどの異物を埋め込むわけですから、成功したかどうかは定期的な検診が必要です。更に里親探しには、皮肉なことに複雑骨折した足を持つ犬より、3本足の犬のほうが貰い手を見つけやすいという点も考慮しなければなりません。一旦引き取った後に足の切除を余儀なくされたり、あるいは長期的な治療費がかさむリスクを持つ犬より、いっそのこと3本足になってもほかは健康な犬のほうが不確実性が少なくて済むということでしょうか。会社でJakeのことを同僚達に話すと、彼の手術の足しにしてと$300が集まりました。

そんなわけで、切除手術はJake自身のためにもベストだということで準備万端整ったわけです。明日の手術に備え、痛みを抑えるためのPain Patchという小さな絆創膏のようなものを肩に貼ってもらいました。それが剥がれるのを防ぐためにタンクトップを着せると、Jakeはまるで小さな重量挙げの選手のようです。明日自分の身に何が起こるかも知らず、無邪気に遊ぶJakeでした。私は彼の4本足の姿を残すために何枚も写真を撮りました。(2011/6/23)

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