【犬と暮らす家(18)】現在建築中〜外壁と内装の施工

【犬と暮らす家(18)】現在建築中〜外壁と内装の施工

外断熱のネオマフォームの上に透湿防水シートが張られ、通気胴縁が施工されたあと、いよいよ外壁材が張られる日が来ました。

外壁は家の顔とも言えます。日本家屋の左官壁も大好きですが、材質や時間の経過により亀裂が入ってしまう事が多く、漆喰などもコストが高い仕上げ方法です。家をよく知らない頃に憧れだったリンダル・シーダー・ホームズのようなレッドシダーの外壁材も、コストや耐久性の面では高温多湿な日本の風土にあっているかどうかは微妙というのが現実でした。

また多くのハウスメーカーや建売住宅が採用するのはサイディングです。その中でも窒業系と呼ばれるセメント質や繊維質原料を成形したものが過半数採用されているように感じます。レンガ調や地中海風などのデザインも自由度があり、家の外見イメージを造りやすいからでしょうか。それに施工方法にもよりますが地震などでの剥離が少なく、素材によっては防火性も保てるとも言われているようですが、先だっての東日本大震災で外壁のサイディングがばらばらと路上に落下した状況も放送されたりしましたから、施工次第なのかもしれません。

試しにサイディング材のサンプルをよくみせてもらうと、固められている内容物は印刷物や木などの細かいものが圧縮されているものに、表面だけデザインや塗装が施されているようで、いわゆるリサイクル製品のような感じのものでした。主に「木繊維補強セメント板系」、パルプや合成繊維を含んだ「繊維補強セメント板系」、「繊維補強セメント・けい酸カルシウム板系」という種類の通り、デザイン性と耐久性を持たせた合板のような加工材である事がわかります。窯業系以外に、モルタル、ALC、金属などの選択枝もありました。

あと私も妻も「なんとか風」というのがどうしても好きではなく、それならば外見は極力シンプルにして、室内は思いっきり木を使ってナチュラルにしたいと思っていました。そんな中で家を建てようと思ってから気になっていた素材が、建築家の米村さんもコストや意匠性を加味した上でよく採用されるガルバリウム鋼板でした。

ガルバリウム鋼板はアルミニウムと亜鉛合金メッキ鋼板の事であり、ブリキは鉄板にすずをメッキしたもの。トタンは鉄板に亜鉛メッキをしたものです。亜鉛は鉄よりも先に錆びやすく、それに対してアルミニウム、亜鉛、シリコンからなるメッキ層を持つ溶融アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板の事を呼ぶようです。

これらは見た目はどれも同じように鉄板なのですが、耐久性はずば抜けて長く、塩害地域で約15年、工業都市や田園地帯で約25年以上と言われます。また外壁材としては圧倒的に軽量な事から、木造住宅には多くの付加価値が生まれ、加工も比較的し易いという素材でもあります。

他に耐食性の高い素材ではステンレス鋼板がありますが、これはコストがとても高く、意匠的にもちょっと特殊になります。ガルバリウム鋼板は塗装されている製品なので、イメージも造り上げ易いと言えます。反面色に限りがあるので、同じような外見になりがちという意味では、米村さんが心から賛成されていない原因のようでした。

メーカーによってはガルバリウム鋼板でもサイディングと同じ扱いで、裏地に発泡断熱素材をラミネートしたものがありますが、米村さんは裏の厚みからどうしても建物の角の処理に使われるレールのような出隅がどうしても好きになれず、スマートに仕上げる事ができる裏地のないシンプルなJFEスチール製が選ばれました。

大量の外壁材がトラックで搬入されます。材料は重ねられてコンパクトにまとまっていました。よくちょっとでも傷がついた所とか、サッシ枠の切断加工部分から錆びるなどという話を聞きましたが、実際にはそう簡単に錆びる事はないとか。コーキング部分についてはある程度メンテナンスが必要になってきます。10年経過した時点でメンテナンスが必要となってくるのは仕方ないですが、外壁は家の顔でもありしっかりと仕上げてもらうために、私もよく現場で仕上げ状況を見るようにしました。

職人さんが途中別の現場で怪我をして、一時中断する事件はありましたが、一部張り直しも含めて無事外壁がぐるっと張られました。サッシの上や水切り部分、そして窓の上の庇の仕上げも美しく仕上げて貰いたくて、機能的には差異はないにしてもいろいろと具体例を挙げてお願いをし、対応していただきました。

板金業は結構腕の差も出る所で、このあたりは基本的に米村さんと工務店の栗原さんにとっても、今後も私たちの家を作品として紹介できるような仕上げにとお願いしました。素人がこういう風に仕上げてほしいというのは簡単ですが、なかなか現実には技術的に難しいようです。ガルバリウム鋼板を選んだ時点でごまかしがきかない部分なのかもしれません。

外壁が張られてもまだ建物を囲っている保護ネットは取り除かれるまで時間がありました。外見があらわになった所で、ご近所からの視線にさらされます。この周辺にはない雰囲気の家なので、浮いてしまうのではと思いましたが、シックにシンプルに仕上げる事で、よくみると目立つという雰囲気を目指しました。ある意味倉庫のような外見ですから、派手で目立つというものでもないはずです。

同時に内装も進んでいきます。サッシがある所は内壁が施工され、最終的にはクロス仕上げとなります。吹き抜けやロフトにはスチールの細めですが強度はしっかりある手すりがつき、天井も一部はダウンライト用の穴が空けられていきました。また造作キッチンの骨組みも着手されました。

サッシがない所の内壁は、ほとんどが構造体の骨組みが丸見えになります。筋交いは1Fの納戸周辺に一部ありますがそれは隠され、露出される内壁のほとんどが構造用合板のノボパンを構造体の一部とし、棚のように間柱を横使いにして筋交いの強度を確保しつつ組まれ、まだ未完成のような雰囲気で仕上げられていきました。これは米村さんのデザインや発想と構造設計の結果からですが、無数の棚が生まれる事や山小屋のようなワイルドな雰囲気になる事から、私たちもとても気に入りました。

回廊階段も同じような内装で、1F〜中間の踊り場までが旅のギャラリー、中間の踊り場から2Fまでがくーのギャラリーにしようと、設計段階で楽しく話をしていました。照明はあえて棚にディスプレイされるものを照らすLEDスポットライトを使うため、レールだけを設置してスイッチには暗くなったらスイッチが入るタイマー式をお願いしました。

この本棚が壁全面にあるような骨組丸見え構造は、とてもナチュラルな雰囲気になります。外は濃いグレーのガルバリウム鋼板でシンプルモダンで無機的なイメージなのですが、ひとたび家の中にはいると無垢の木の空間に包まれるという雰囲気となります。そのため、フローリングや作り付けのテーブル、建具などにはこれまたコストダウンやくーがなめても大丈夫なようにと、ほとんどを蜜ロウや植物性オイルを使ったワックスを塗り込んだ塗装を、施主自ら行います。

米村さんの作品のほとんどは、オープンハウス前後に施主や建築家やスタッフで、ワックスかけ大会を行います。見学に来た人も人手として参加します。それがなんだかちょっと楽しいイベントのように感じていました。

この家の動線は、まず玄関を入ると左手はすぐパウダールーム、右は突き当たりまで土間が貫きます。土間に入り上を見上げると、2Fロフトの裏側や天井までが吹き抜けで望め、右側は1Fから2Fにかけて全面の窓が中庭やその上の空を望む事ができます。

左手には6畳間が縁側のような感じで少し高くなった位置にあり、メインの寝室にするつもりです。一応引き戸で区切る事はできますが、基本的には常時開放。寝室や縁側に座った状態で中庭全体が見られ、上を見上げると吹き抜けというダイナミックな空間となります。

寝室の奥には明かりとり兼換気用に横長のサッシが壁につき、並びに隣接する部屋は3畳のウォークインクローゼットです。

土間は比較的広く確保されており、工事の途中でも雨の日などはここで皆談笑スペースとして活用されました。玄関扉正面に設置される予定の蓄熱暖房機から冬も暖かく、夏は土間効果で涼しく過ごせる空間となればというような考えでした。

土間には黒い石のタイルが全面に張られます。その下にはしっかりネオマフォームによる断熱材が敷きつめられており、冬の地面からの冷え込みを防ぎ、夏はひんやりとした石の感触を味わえるでしょう。その突き当たりから、この家のシンボルでもある低くゆるやかな回廊階段が始まります。

ノボパンと横使いの間柱が半分以上を占める内壁以外は、基本的にクロス仕上げです。ロフトは高さが140cm以下と決まっているため、米村さんの作品の特徴でもある屋根裏なしの垂木表し仕上げも一部が隠されます。サッシが入る内壁部分は張られますが、クロス屋さんは貼る面積でおよそ見積もりを出される分、これほど手間のかかるクロス張りの家もなかったのではないでしょうか。

いつか余裕ができたらこのクロス部分を珪藻土にしたいと思いつつ、それでもきれいに仕上げられる内壁はなかなかいい感じでした。一部ロフトと2Fトイレの壁には、アクセントウォールとして濃い茶色の和紙風のクロスが使われ、それがまたいい感じです。

フローリング以外の床の仕上げは、1Fパウダーとウォークインクローゼット、2Fトイレは汚れてもすぐに拭けばきれいになる長尺塩ビシート。いわゆるクッションフロアーです。色はお任せにしました。そしてロフトの床はPタイルと呼ばれるものが貼られ、冷たい感じですがちょっといい雰囲気に仕上がっていました。

ロフトにあがる階段は取り外しのできる既製品に少し手を入れ、屋根の上にあがれる開閉式のサッシ部分に付け替える事を可能にしていただきました。出入りのために体を保持するための手すりも、回廊階段と同じ素材とデザインでつけられます。ただし残念ながらこの階段だけはくーは昇り降りできません。

ここまで仕上がった段階で、上棟直後から熟練の施工をしてくださった大工の玉川さんの作業が全て終了。通してこの現場に居てくださり、私たちやくーにとって「この人にこの家は造っていただいた」という事が言える存在の大工さんが引き上げます。感謝の気持ちを込めて、お礼を伝え、くーもいっぱいなでていただき、玉川さんは次の現場に去っていきました。

その後は電気や設備、左官、塗装、家具などいろいろな職人さんが入れ代わり入ってラストスパートに入ります。もうゴールは見えてきました。

くーの病気も次の新たな治療段階へと進み、余談は許さない状況でした。この頃から毎週月曜日には病院へ通う事になっていました。

 

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