動物孤児院 (81)あの犬はその後、どうなった?

動物孤児院 (81)あの犬はその後、どうなった?

以前、インターネットで、東欧のルーマニアのブラソフという市で犬を虐殺している事実を知った。ルーマニアのストリート・ドッグの悲惨な状況はドイツでよく知られていて、「ルーマニアの犬を救おう」という団体がいくつもあり、救助された犬が次々とドイツに連れて来られる。近所にもルーマニアのもとストリート・ドッグが2頭いる。

私が見たのは、一枚のあまりにも悲しい写真だった。雨で濡れた道路に、中型の犬が倒れていた。流れた血が雨水で薄まってピンクになっていた。横たわるその犬はもう立ち上がれないに違いなかった。「お願い、殺さないで」と言っているかのように、口を半開きにして頭を上げていた。

別の写真では、鉄の棒を手にした男たちが写っていた。当日、その町では数百頭もの犬が撲殺された。市民は驚いて警察に連絡して止めさせるように頼んだが、警察も次々と犬を殴り殺す男たちを制止することができなかった、というのだ。

そして、その事実はインターネットで各地に伝えられた。目をそむけてはならない、と思うが、こんな写真を見るのは本当に辛い。夜、眠ろうとすると、死を待つだけの犬たちの写真が次々と現れた。いつもこうなのだ。

日本の管理センターで殺処分される直前の、むくむくした子犬たち。
あと1日で殺処分される黒いミックス犬が取材者の手を舐めているところ(CREAという雑誌で見た)。
殺処分トラック(四国)に乗せられて、管理センターに到達する前に死んでしまう運命の犬たちの澄み切った目。
「彼らを焼いた後の灰は、<産業廃棄物>って呼ぶのよ」と、ある公務員の獣医師が言っていた。

グッドニュースはエネルギーの源

先週、ドイツで定期購読している犬の雑誌が届いた。

そして、何と見開きにあの犬の哀れな写真が載っているではないか!私の頭から決して消えてくれなかった一枚……「この写真をまた見なくてはならないのか」と思った瞬間、その写真の下の生きている犬のほうに目が行った。

「え、もしかして??」
そう。「もしかして」が起きていたのだ! 助けられていた!!

雑誌がその写真を掲載した後、「あの瀕死の犬はどうなったのか?」という問い合わせがたくさんあったのだそうだ。誰もが同じことを考えていたというわけだ。つまり、撮影者、もしくは傍にいた人はその写真を撮った後、そのまま瀕死の犬を残して立ち去ったのか?と。

マークスという名をもらったその犬は、今年四月ベルリンで、ストリート・ドッグの虐殺を止めてください」とルーマニア大使館に訴えるデモに参加した。  
みんなから可愛がられてすっかり甘えん坊になったそうだ。

ルーマニアでも、動物愛護の進展はカタツムリより遅い。ブラソフの状況は以後も改善されていないという。それでも、その写真の犬が救われていたという事実は私に大きな喜びとなった

犬たちを見捨てる人がいる。そして救う人もいる。救う人の数が、見捨てる人より多くなる日がいつかルーマニアに、そして日本にも訪れてほしい。





雑誌”DOGS”でこのグッドニュースを知った。

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