動物孤児院 (82)不審に思ったら獣医局に電話を

不審に思ったら獣医局に電話を

      
「あなたの飼い方では動物がかわいそうです」と言う社会

開いた雑誌のグラビアに白とベージュの家具で統一した広い居間の写真があった。骨董品と抽象画のアンバランスもステキだし、ガラス張りの向こうは森と野原の雄大な景色が広がる。「有名人の家?どこ?」と思ったとき小さな鳥かごが目に入る。その瞬間、「あ、ドイツではない」とわかった。
なぜか?両手で抱えられるほどの小さな鳥かごに小鳥を入れていたからである。説明文を読んだら東欧のある国だった。

「小鳥は十分に飛び回ることのできる空間が必要だ」ということを行動で教えてくれたのはドイツ人のGさんである。
Gさんが道を歩いていると、ある家の窓越しに鳥かごが見えた。カナリアが2羽入っている。どう見ても小鳥たちが自由に飛び回ることのできる大きさではない、と思ったGさんは抗議に行ったのだ。飼い主は渋々だったかもしれないが、大きめの鳥かごに買い換えたそうだ。
ちなみに、床に新聞紙を敷き詰めて、1部屋をそのまま小鳥たちが自由に飛びまわることのできるスペースとして使っている人も多い。そうでなくても、1日に何度かは自由に飛び回らせるのが当然、とされている。

また、Cさんは散歩の道で、いつも庭に一人ぼっちでいるテリアミックスが気になっていた。留守がちの家のようで誰かいるようすではない。犬は汚れて毛玉ができている。ある日、家に人がいるようだったので、思い切って呼び鈴を押した。“時間がなくて”あまり世話をしていなかったその飼い主は、Cさんが引き取りたいと申し出たとき、あっさりOKしたそうだ。今、その犬はCさんの友人が飼っている。もちろん今では毛並みもピカピカだ。

以前、近所でもこんなことがあった。ある日、犬を飼っていないはずの老婦人がウェスティーを連れている。「犬を飼い始めたのですね」と声をかけると、「この犬、あの角のアメリカ人家族が飼っている犬なのよ。犬が日中、立て続けに吠えるから変だと思って訪ねたら、家の人たちは仕事に出ていて日中はずっと不在なんですって。だから日に3度犬を外に連れ出してあげますって申し出たらOKしてくれたわ」と嬉しそうだった。
     
 「獣医局が出頭。必要ならば警察も。」

彼女たちが特別敏感とか、過剰反応というわけではない。これはごく普通に聞く話だ。

ドイツにおける正しいペットの飼い方は単純明快。人間と十分に接触する機会が与えられている(ほったらかしにされていない)、檻やケージなどに閉じ込めていない(つないで飼う、なんて言語道断)、散歩に連れていっている(隠れて回数を数えている隣人もいる)。
そういった条件を満たしていなかったら、正しい飼い方をしていないということになる。飼い主が聞き入れてくれない、或いは、虐待の可能性があるが真相はわからないという場合は、獣医局に連絡する。
 
先週の新聞に、「世話されていないと思われるペットを見たら獣医局に報告してください」という見出しを見つけた。(以下はその記事の翻訳)

近所に世話を十分されていない、或いは、餌をろくに与えられていないと思われるペットがいたら獣医局に報告して下さい。ペットに苦痛を与えるという行為は動物愛護法に違反します。これは動物愛護団体VIER PFOTEN からのアドバイスです。
所轄の獣医局にできるだけ詳しい状況を伝えることが重要です。証拠となる写真を添付できたら完璧でしょう。獣医局の係員はその情報をもとに追跡調査をします。場合によっては警察の介入も可能になります。

「私には私の飼い方がある。ほっといてくれ」は、ドイツでは通じない。

 

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