ナバホ・インディアンの犬

ナバホ・インディアンの犬


米国アリゾナ州、ニューメキシコ州、ユタ州の3州にまたがり、2万6千平方マイルもの広大な土地に広がるナバホ(Navajo)・インディアン保護地区では、10年ほど前から犬が増えすぎ大きな問題となっている。
 
推定ではこの居住地区だけで44万匹以上の犬が野放し状態で生息しているとのことで、この数は年々増え続けている。地区内にある8万9千世帯では平均4-5匹の犬を飼っており、それらの犬は放し飼いで去勢避妊はもちろんのこと適切な医療も受けていない。あまりに増えすぎたために、充分な食料もなく、家畜を殺したり、人間を噛んだりするケースも多数報告されている。
 
これらの問題の解決のためアニマルコントロールが保護地区に隣接するニューメキシコ州のギャラップ市において毎週去勢避妊クリニックを催し、またボランティアたちの手によって健康な仔犬や犬を同州アルバカーキ市やコロラド州のシェルターに送り込んだりしているのだが、とにかく野犬の数が多く焼け石に水の状態。
 
8月16日の新聞の記事によると、ギャラップ市の路上で55歳の男性が倒れており、その身体を犬の群れが執拗にむさぼっていたという。救急隊が駆けつけ、追い払ったが、その犬たちは明らかに栄養失調状態でみなあばら骨が見えていたらしい。
 
この事件で、ナバホインディアン居住区のみならず、他のインディアン保護地区における犬の過剰繁殖の問題が改めてクローズアップされた。この地区のアニマルコントロールマネージャーによると、この男性が発見されたサンダンス地区にアニマルコントロールが入り込み、79匹の野犬を保護したが、放浪犬のあまりの数に状況は以前と変わっていない。犬達はガソリンスタンド、商店やレストランの駐車場、ハイウェイなど食糧を見つけられる場所であれば、ありとあらゆるところに出没し、更に車に轢かれて腐敗した犬の死体が道路に転がっている。

アニマルコントロールは昨年10月から今年の4月の間に何回もの野犬狩りを実行し、2332匹の犬を収容した。このうちアダプトされたのがわずか80匹足らず、飼い主に戻された犬も313匹のみ。残りは安楽死の道を辿った。しかもこの野犬狩りは資金不足のため中断せねばならなかった。

ナバホ居住地では平均年間6000匹の犬を安楽死させている。ナバホ民族の居住地に囲まれているマッキンリー郡とギャラップ市では犬、猫、その他の動物あわせて年間4000匹が安楽死されている。

こうした問題の背景には、ほかの多くのアメリカンインディアンがそうであるようにナバホインディアンたちも、犬を昔から人間や家畜をコヨーテなど襲撃から守る人間のコンパニオンとして共に暮らす文化があり、なおかつ犬は精霊に属しているので決して殺してはいけないという信仰も存在する。

資金不足に加えて、文化の違いや不信感がインディア部族とアメリカ市民によるレスキュー団体との間に立ち塞がり、問題解決のための共同作業の妨げとなってしまう。このままいけばナバホ民族は安楽死の高い比率を更新していくしかないだろう。
居住区外のレスキュー団体もあまりの高安楽死率と民族との軋轢に二の足を踏んでしまう。また収容した犬が飼い犬であり、犬を盗んだと言われてしまうケースもあり、治外法権も加わってこの問題は複雑で一朝一夕には解決しないであろう。インディアン居住区に入り込み単に「去勢避妊をすべきだ」と言っても話にならない。まずは地道にインディアン民族の理解と信頼を勝ち取るところから始めなければならないだろう。
(2011/8/28)(アメリカ、Y.Mさん)

注:下記のリンクでナバホインディアン居住区に住む放置犬達およびこの問題に取り組む人々の映像が見られます(30分番組)
http://www.snagfilms.com/films/title/rez_dogs/

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