【犬と暮らす家(22)】くーの家〜引越しの日
【犬と暮らす家(22)】くーの家〜引越しの日
2010年12月3日。いよいよ引越しの日がやってきました。基本的に引越しはできる限り予算を切り詰めたいと思っており、自分でできる部分は自分でやってしまうつもりです。引越業者は複数社検討しました。ネットでの見積もりはほとんど意味はなく、実際は家に来てもらって本見積もりをしてもらわないと性格な値段が出ません。事実仮見積もりを下回るケースはありませんでした。
最終選考に残った3社の中から、大手のアート引越センターに決定。理由はいろいろあって、やはり新築への配慮を最大限に行うという事や、大手としての養生材の豊富さ、要員4名確保と価格のバランス、そして最小限の粗大ゴミ処分サービスや、営業の姿勢や説明の明快さなどで決めました。最安ではありませんでしたが、納得のゆく説明を受けたのでそれが決定要因です。
事前にダンボールが60個届けられ、その後20個を追加する事になりました。またすぐに使う食器は前日に専用の「引越らくらくBOX」という緩衝材が入った折り畳みのケースが届けられるので直前に入れ、衣類や下駄箱の靴類はそのままにしておけば、当日スタッフが専用ケースに入れて運んでくれるとの事でした。これは助かります。
引越にかかわる会社側や役所の手続きも前日までに済ませ、処分コストを考えて2カ月ほどをかけ自治体にベッドや棚などを自分で分解して多数処分。最終的には引越業者に当日まで使う家具調コタツとテレビ台兼HDレコーダーが収容されているローボードだけは引越し時に処分してもらう事にしました。不用品、いわゆる粗大ゴミの処分費用もばかになりません。
13年住んだマンション。新築時から親しくさせて頂いた住人の皆さんに私たちが引越す事を伝えた時、とても驚かれました。いろいろ考えた結果という事と、このマンションもずっと手放さず理事会も今まさに始まった大規模修繕委員会もしっかり参加する事を伝え、引越前日に皆さんにお別れの挨拶をまわった時は、さすがにぐっと来るものがありました。
そして引越当日、未明から夜明けまで豪雨となり、現地にも相当な雨量があったようです。こんな状況で引越が可能なのか不安に思いましたが、作業開始となる予定の朝9時になると不思議と雨もあがり、何もなかったかのように荷物の搬出がはじまりました。
アートのスタッフは段取りよく養生をし、周囲へ気配りをした上でトラックの荷台を前後くっつけるようにエントランス前に横付け。手際よく搬出していきました。狭い階段を納戸もダンボールを抱えて昇り降りし、リレー式にトラックへ積み込んでいきました。
およそ2時間かかって搬出終了。私たちは空室になったマンションを感慨深く眺めました。エアコンやシーリング照明はそのままです。ありがちな話ですが、ちょっと涙がにじみつつ、13年間ありがとうございましたと声に出して言い、窓を施錠しブレーカーを落として外に出ました。
そこでアートのスタッフと「まわる家」現地集合でと話をし、私たちは貴重品や一部の荷物を積み込んだ車に妻とくーと乗り込み、感傷にふけりながらその場を離れました。今度来る時はリフォーム後のチェックになるでしょう。
移動途中にささっと昼食を食べて行くと、休憩すると言っていたはずのアートのスタッフは、まわる家の前で既に待っていました。少々遅れた事をお詫びしながら、ダンボールに記載した記号の置き場所が書かれた指示書を各ポイントに貼り付けていきます。
ダンボールは指示通り、女性でも持ち上げられる重さとして7分目まで入れ、残りは衣類を入れるようにというルールに従いました。そのため80個にふくれあがってしまったのですが、その上に荷物搬出時にスタッフが梱包で使ったダンボールを含めると、100個ぐらいになりました。
荷造りしたダンボールに、1Fには数字で123、2FにはABC、外の納戸に1ヶ所というように記号を記載し、搬入時に迷わないようにしました。そしてすぐ使うもの、割れものやこわれもの、それ以外のものと3色のガムテープで蓋をしてあるので、効率よく運び入れてくれます。
最も多くが搬入されたのが2Fリビング。うずたかく積み上げられ、壁になってしまいました。冷蔵庫や洗濯機、液晶テレビなど大物もあっという間に搬入されていきます。早速クーラーボックスに退避した食料品を冷蔵庫に戻したり、洗濯機の配管などライフラインの準備と確保を先に行います。
およそ2時間で搬入終了。アートのスタッフひとりひとりにお礼の意味も込めて、上棟式で参加者に配った同じものですが引き出物と、缶ビールを2本づつ入れてお渡し、費用をチーフの方に現金で支払いを済ませると、4人の若いスタッフは帰っていきました。引越業者は値段の違いだけで、あとはあたりはずれは運だという話を聞いていましたが、今回の4人のスタッフは礼儀も正しく丁寧に作業をしていただき不満はまったくなく満足でした。
荷物を搬入している最中にK社の光回線業者が開通工事にやってきて、ワークスペースへの引き込み作業をしました。しかしこの時に未明から降った大雨で庭がどろどろになっているにもかかわらず、そのまま敷地に入ったあと電柱の作業をした結果、我が家の玄関から前面道路周辺の広範囲を泥だらけにしてしまったのです。配慮のなさに怒りすら感じました。
これからこの地に住む私たちにとって、いきなり引っ越し初日に近所の方と共同利用する道路を泥だらけにしてしまった事は、考えられない事でした。わざわざ近くのホームセンターに行き、デッキブラシを買って来る事が、私が引っ越して最初にした買い物というのは納得いきませんでした。
まずは自分で何とかしようと、引越しの荷ほどきは後回しにしてブラシでこすってみましたが、粘土質の土の汚れはまったく落ちません。K社の窓口に状況説明をして対応を求めると、カスタマセンターの担当は連絡すら明日になるといいます。作業上のミスに対してそれは引き下がらず、結果作業をした下請会社から電話があったのは夕方でした。その後、日が暮れてから作業された本人がやってきて、2時間ほど清掃作業をし、作業完了と言い帰っていきました。しかし外は暗く濡れているので状態が確認できませんでした。
テレビと最低限のHDレコーダーの配線、そしてパソコン3台のネット接続、固定電話として初めてつかうIP電話の設定と導通確認まで行い、あとは全て後日にしました。何とかこれでネットと電話が使えるようになりました。
一段落ついてから、いわゆる「向こう三軒両隣」にご挨拶。既に土地購入前や地鎮祭前にみなさんとは顔合わせが済んでいますが、あらためてお菓子を持っていきました。
当然くーも連れていきますが、もう撫でてくれる人だとわかると大興奮です。挨拶の時に犬を連れていくと、それだけでほとんどの人が和やかな表情を見せてくださいます。当然犬が苦手な方はくーの方が察しますので、それほど心配はいりません。不思議な事に全員、今もしくは以前に犬を飼われていた人ばかりでした。今後ともよろしくお願いしますと、あらためてご挨拶です。
初日にやるべき事を全て終え、疲れもあったので夕食はすぐ近くのスーパーで弁当を買ってきました。新居で初めての夜、くーもちょっと豪華な缶詰メニューでの食事です。その後操作説明書を見ながらはじめてエコキュートでお風呂にお湯をいれて入ると、時間はもう0時をまわっていました。
まわる家で初めての朝を迎えました。夜は前のマンションでは考えられない位に静かでした。
快適な朝を、と言いたい所ですが、窓の外をみると愕然としました。なんと昨日K社が回線工事をした際に泥だらけにした前面道路がまったくきれいになっていません。唖然としてもう一度K社のカスタマセンターに電話をしようとしましたが、9時まで待たないとなりません。いらいらしつつ待って、すぐに電話をしました。
関係者からの連絡が最も早くて今日の午後、対応は翌日以降というカスタマセンターの担当の回答に対して何でもいいので至急対応するよう抗議した所、作業を行った下請会社から昼前に連絡がありました。そして今日は別な人が対応する事となり、少し若い方がやってきました。
その人はとても真摯に対応してくれて5時間近く清掃をしてくれたのですが、残念ながら完全には落ちませんでした。しかし何とか許されるレベルまで消えてきたので、2日に渡る引越初日のK社が起こした泥だらけ事件はとりあえず完了になりました。
光回線業者は大手2社以外は実質選べません。いろいろと理不尽な制度や関連のセールス電話があまりに多いのに嫌気が差し、No.2のK社に期待をしたのですが、これでは先が思いやられます。事実この後、2度も別のトラブルを起こす事になるとは、この時予想もできませんでした。
このような事件と平行して、午前中にインテリアお任せしているDESIGN Kの新村さんがお昼前に来訪。品物の納品が遅れた事で引越し翌日になってしまったのですが、各窓にバーチカルブラインドやロールスクリーンを取り付ける作業を行ってもらいました。新村さんは米村さんのビジネスパートナーで、自らの作品にあうインテリア用品をコーディネイトしてくださる建築士免許もお持ちのインテリアのプロの方です。
この家の雰囲気に合うカーテンや色を提案して頂いて選んだので、とてもいい感じです。特にまわる家の天井の垂木やフローリングの並びなどのイメージにあうように選んだバーチカルブラインドは、光の調整や外部から目隠ししつつ景色を楽しめる構造です。
その後は早速100個近くあるダンボールの整理を開始しました。まずは食器や鍋やキッチン用品の収納、そして衣類は事前に大きさをあわせて購入しておいた収納ボックスを使い、納戸を少しづつ整理していきます。基本的に家具や収納は全て作り付けなのですが、細かいものは今後棚の大きさにあった収納ボックスを追加購入いこうと思っています。
途中私だけ通勤用自転車を停める駐輪場の契約のため駅前に行き、半年分の契約を済ませました。これからは駅まで雨の日以外は片道およそ10分の自転車通勤になります。帰りにはまた夕食を買って戻りました。
そして夕方には家族全員で裏の緑地公園から住宅地をぐるっと一緒に散歩。これからどんな日々がはじまるのか不安もありますが、こうして散歩してみると都会よりも圧倒的に緑や土が多く、野菜の無人販売所が多数のあるのどかなこの地で、ゆったりと穏やかに暮らせたらいいなと思えるのでした。
食後リビングで家族がくつろげる時間が来ると、あらためていよいよまわる家での生活がはじまったんだという気分になれました。期待と不安が入り交じるというよりも、やっとこの1年半強のプロジェクトが一段落したんだ、と感じられた瞬間でした。