【犬と暮らす家(23)】くーの家〜犬と暮らす家の庭づくり

【犬と暮らす家(23)】くーの家〜犬と暮らす家の庭づくり

2010年12月。秋から冬にかけて、冷え込む日が増えてきました。

部屋の中はまだまだダンボールは消えていませんが、妻の尽力により少しづつ減り、年末には生活空間からは全て消滅しました。最終的には引越業者が全て電話一本で引き取りに来てくれます。でもそれはもう少し落ち着いてからになるでしょう。IHの使い方も、エコキュートや蓄熱暖房機の使い方もいろいろ試行錯誤しつつどのモードが一番快適かわかってきました。

次にとりかかった作業は、庭づくりです。庭は戸建生活をするならばひとつの夢でもあり、広くはなくてもくーが安全に走りまわったり日光浴したりできる芝のスペースと、妻がやりたかった花やハーブを育てる場所を、どう造りあげていくかが課題でした。今回、まわる家の建築請負契約には予算不足で含まれなかった部分です。

まわる家の玄関アプローチは、外階段をあがりきった踊り場から、コンクリート平板の敷石が間隔をおいて並べられていて先にある玄関に至ります。その敷石を境に外庭と中庭に分かれます。外庭は25cmの土の層の下にプレキャストコンクリートのガレージがあり、どちらも粘土質の関東ローム層の土です。

引越当日に回線業者が足を踏み入れ、前面道路をなかなか落ちない泥だらけにした事件にもあったように、まずは春に向けてこの関東ローム層の粘土質で水はけが酷い状態の庭を、いかに土壌改良するかが重要な課題でした。芝を植えるシーズンである4〜5月までには、ある程度目処をつけなければ芝を張れません。またシンボルツリーを植えるのも春頃なので、これから3〜4ヵ月ガーデニングの勉強をして実践するつもりです。時期的にもスコップで土を掘る作業は汗をかくため、冬はよいタイミングでした。

庭ぐらいと軽い気持ちでしたが、ちょっと土を掘ってはふるいにかけると、大小の岩や前の建物を撤去した時の破片などガラが次々と大量に出てきました。やってもやっても直径1cmから拳大の石が限りなく出てきます。それだけでなく小さいガラスや瓦の破片、タイルまでとその種類は多岐に渡っていました。その量、20L袋にざっと40袋分は出てきたのです。

こんなにも出てくるものなのかと、この土地を造成した30数年前の土木工事へ疑問が沸いてくるほどでしたが、ネットで調べてみてもこれは普通の事なようです。そういえば「北の国から」の五郎さんは、畑からどんどん出てくるでっかい石で家を建てていた事を思い出しました。

引越し後の2月に大雪が降り、雪解けで庭にしばらく水たまりができたままになりました。これは外庭の下にある4つのプレキャストコンクリートユニットを連ねたガレージの水漏れを防ぐため、コンクリート上面にアスファルトシートによる防水施工と工事用のシートを敷いてある事から、水の逃げ道は中庭側のみという構造でした。じわじわと雪が水になる過程で土に保水される量が多く、水がうまく地下へ浸透されないのが原因でした。

まずは土壌改良という目的から、園芸用川砂20Lをホームセンターで買い、外庭と中庭それぞれ4袋ずつまぜ混みました。まぜる時は当然スコップである程度掘り起こし。ふるいにかけて石を取り除くという作業を毎週末行います。同時に腐葉土20Lも6袋づつまぜ込んでもいきました。しかしまだまだ砂が足らないという事がわかってきて、追加で4袋を2度にわけて追加していきます。混ぜてはまた追加し様子を見る、というように掘っては埋める試行錯誤作業が続きました。

それまでスコップすら簡単には入らなかった固い粘度質の土が、随分改善されてきたと思ったある日、また大雪が降りました。雪にくーは大喜び。今度は結構な積雪になったので、夜中前面道路で雪あそび。居住者や関係車両しか入ってこないため、ちょっとした夜のお楽しみタイムになりました。

翌日になって、少し改善されたと思っていた土に致命的な問題が発覚してしまいます。足を踏み入れるとずぶずぶと沈み込み、いつまでも水分が抜けず数日間、田んぼ状態になってしまったのです。川砂の効果でもあったのですが、雪が半分溶けた事により土壌自体と構造の排水性能の悪さが明白でした。反面中庭には浸透升が角に3ヶ所にある事や、粘土質とは言え時間をかけて地中に浸透していくので随分ましでした。

水はけなど土壌自体の改良方法について再検討した結果、ベースが既存の粘度質の土な事にはかわりない事から、パーライトやビーナスライトというビーズ型の土壌改良素材が有効ではないかと妻が調べてきました。この2種類は用途が違うものなのですが、これらをネットで50L入のものを10袋ほど大量購入。特にビーナスライトは花壇用に使うつもりでした。これらを土に混ぜ込んでいきます。

先日の雪どけの状態から外庭の対応に行き詰まり、水はけが比較的安定している中庭を先に手に入れる事にしました。基本的に日陰になりがちな所なので、奥に土留めで適度な花壇スペースを区切り、シェードガーデンとしました。何を植えるかは妻任せです。そしてグランドカバーは検討の結果、芝ではありませんが日陰でも育つタマリュウを購入。芝のように広がりにくいので、敷地いっぱいに買う必要がありました。

室内の土間空間から眺められる縁側に植えたいと思っていたシンボルツリーは植木の本場、埼玉県の安行に何度か通い、ちょっと前から考えていたジューンベリーのロビンヒルという品種を探して購入、車の助手席の背もたれを倒し、何とか運んできました。春にピンクの蕾から白い花が咲き、ベリー系の果実が収穫でき、秋には紅葉し落葉するという四季が感じられる木です。購入したのは高さ1m程度の株立ちのもので、育ってくれるように願いを込めて植えました。

また中庭の回廊階段下の納戸への出入口下には、実兄からアマゾンチェリーという固い材を分けてもらい、水はけを考えて下には土壌改良時に出てきた砂利を深めに敷いた上で、泥が納戸に入り込みにくいようにしました。一時は枕木なんかも考えたのですが、防腐剤が使われている事や、手に入れるのも大変だという事から、雰囲気はいいのですが諦めました。

中庭側が一段落した事で、行き詰まっていた駐車場の上の庭の改善に取り組む事にしました。設計上というか構造上、中庭側へ雨水を導くようには考えられているのですが、当然ながら最近のゲリラ豪雨など瞬間雨量が極めて多い時には対応できません。それを前提にいろいろ調査や検討をした結果、建築家の米村さんや和光建設の栗原さんに相談し検討をした結果、オーバーフローした水を外階段側に強制排水しようと考えたのでした。

まず敷石とその下の土を全て一旦取り除き、特に水が多く流れてほしい部分を中心に、大きめの砂利を10cm敷きつめました。その上に土が入り込んで目詰まりしないように水だけを通す網目の細かい浸透シート、次に小さい砂利、そして土をかぶせ、敷石を並べていきました。

同時にガレージ上の土もどかし、庭を囲むように外周に砂利の排水層を作り、また最も雨が降りそそぐ場所には、屋上緑化で使われるという薄い発泡スチロール製のエコロベースという商品を最下層に敷き、その上に排水ルートと同じように浸透シートを敷いた上で、土をかぶせていきました。

これである程度の水分は確保しつつ、一定のレベルを越えた水は全てエコロベースの下を伝い、砂利の排水層を経由して階段もしくは中庭側に流れる構造としたのです。せっかくきれいに作ってもらった階段を一部削り、コンクリートカッターで一部切欠きを入れ、溝の表面をモルタルできれいに仕上げてもらいました。あとはゲリラ豪雨時に雨水が階段へ排水されている事が確認できたら大成功です。

土を戻す際に、花壇をどこに配置するかを決めた上で木製の土留めで区切り、培養土を混ぜ込んだ土を入れていきます。芝を植えるラインよりも少し高めになるように、たっぷりと入れました。これでガレージ上でも花壇では土の厚さが40cm程度になるはずです。

土壌改良の作業の結果、玄関へつながるアプローチの敷石のレベルが高くなってしまいました。その分段差も減りバランスはよくなったのではないかと思います。これは排出された石やガラは排水層として再利用し、土は砂や腐葉土、エコロベースやビーナスライトなどをを混ぜ込んで増えた事によるものです。最初の土とは比べものにならないほど柔らかくなりました。

そこまで仕上げた所で、既に4月を半分過ぎていました。雨が降ったあとに水たまりができてもすぐにひくようになり、階段にあらたに作った排水溝がしっとり濡れていたりと、工事の効果が認められました。やっと結果らしい結果が出てくれてほっとしました。

いよいよ芝を張る事になり、ホームセンターに行って安く最もメジャーな高麗芝を買い込んできました。芝張りのシーズン後半に入っていましたが、在庫はまだ潤沢にありました。それを芝の目土と共に張り詰めていきます。

しかしあまり考えずに買ってきてしまったので、1束少し枯れ気味のものが混じっていました。ちゃんと確認しなかったので後日別のホームセンターに行って買い足す事にします。裏の土のつき具合や、芝の青さを確認すべきだとあらためて思いました。

アプローチに間隔を空けて敷かれている敷石と敷石の5cmほどの間にも、芝を園芸用のはさみで切って植え込んでいきます。敷石はフラットなコンクリート製なので、芝に包まれるようなイメージになれば、くーの足にもよく当初の計画通り、中庭とあわせて庭を広く使う事ができるようになるはずです。

梅雨に入り、芝が少しづつ根付いていく気配がありましたが、反面葉枯病や さび病、くもの巣のようなピシウム菌などいろいろな病気が出ては対処し、という事を繰り返しました。やはり水はけが悪い地盤である事や、日当たりが微妙に弱かったり、くーのおしっこが原因だった枯れなど、この時はネットで調べたり相談できる事に感謝しつつ、一つずつ解決していく事ができました。

ほかにも庭は多くの虫が現れるようになりました。雨の降る前に壁にヤスデが這い上がったり、花壇の花が一夜にしてナメクジに全部食べられてしまったり、青虫のような毛虫が葉っぱを食べまくっていたり。それでもくーのためにも農薬はできるだけ使いたくないので、試行錯誤の日々でした。何かよい対策はと毎週のようにホームセンターに行くたびに花も増えていき、気づくとトマトやナスなど野菜の苗まで植えられていました。

庭作り1年目の初心者にしては、いろいろチャレンジしたと思います。うまく育ってくれる花もあれば、元気があまりないままの品種もあり、また虫がついてしまうものも出てきました。毎晩寝る直前に花壇の害虫チェックのために、キャンプ用のLEDヘッドランプで見回りする日々が続きました。

季節はかわり、じめじめした梅雨もあけ、西日が強くなってきた6月。予想以上に西日がきつく、また震災の影響もあって節電の視点から、中庭に向いている1Fから2Fにかけての全面窓部分に、グリーンカーテンをつくる事にしました。私たちはゴーヤが好きなのですが、それだと生育する密度が足らないのではとの事から、つる性植物ではお馴染みの朝顔も植えられました。

ゴーヤについては生育度を考えると中庭に地植えがよかったのですが、既にタマリュウを敷きつめてしまっているので、深く大きめのプランターを4つ買ってきて並べる事に。ただプランターの見た目が安っぽかったので燻葦簾を巻いて隠すなど工夫もしました。これだけで随分イメージがいい感じになります。

そして壁に立てかけるネットの支柱は普通のプラスティック製では味がないので、姫竹という1.8mほどの細い姫竹を3本針金で繋ぎ、4mちょっとの長さで4本つくりました。2本の支柱の間にネットを張るとタンカのような形になり、それをサッシの雨切りを挟むように立てかけます。姫竹は細く自然に不規則に曲がっていてしなるので難しいのですが、風で手前に倒れてこないように固定しました。

ゴーヤの苗はプランターが4つあるので4つとも種類の違うものを買ってきて植えましたが、買ってくる時期はちょっと早く、しばらく日当たりのよいコーナーに退避させました。枯れこそはしませんでしたが、来年は丁度よい時期に植えようと思います。

季節は初夏。7月に入り、暑さが本格的になってきた頃、芝もある程度の元気を取り戻しました。ちょっと整地が甘かったのかでこぼこなのですが、それはまた来年考えるとして、ずっと日陰だと思っていた中庭のタマリュウやジューンベリーにも陽があたる時間ができるようになり、庭は元気になってきました。

色とりどりの花のほかに、根が奥深くまで張れない場所ではあるのですが、ガレージの上の土が盛ってある花壇スペースの角にオリーブの苗木を植えました。常緑であまり大きくならない品種を選んだので、ある程度成長し、風が吹くと葉がさわさわといい感じにゆらいでくれるといいなと思います。

日当たりのよいガレージ上の隣地境界線際のガーデンには色とりどりの花や向日葵やハーブ、そしてお試しでトマトやナスが並びます。中庭奥のシェードガーデンには、紫陽花やギボウシやアイビー、クリスマスローズなどが植えられました。

一応我が家のシンボルツリーであるジューンベリーロビンヒルはこの春、結局10輪ほど開花してくれました。初年度にしてはこんなものなのかはよくわかりません。

またこれは予想外ですが、トマトやナスがとても立派に育ち、夏に充分収穫できたという事です。トマトに至ってはもう伸びすぎて支柱でも支えられないほど。実も時間差で10個ほどできました。ナスも最初成長は遅かったのですが、お店で買うような大きい立派なものも収穫でき、ゴーヤもあわせてこの夏の食卓を賑わせてくれました。我が家の庭でできた野菜を食べるという事も、初年度に経験できたのです。

来年は連作できない事も考えつつ、何を植えようかと妻は楽しみにしています。たくさん図書館から園芸の本も借りてきては、楽しんでいるようです。

ヒマワリも小さいものと中ぐらいのものを植えました。しかし葉に虫が大量についてしまい、一時期はどうなる事かと思ったのですが無事開花。近所の人に聞いてみると、結構みなさん害虫に悩まされているようでした。どこからともなくやってくるもので、庭に出る蚊もきっとどこかに水たまりがあるからでしょう。オーソドックスな渦巻きの蚊とり線香が活躍しました。

強い陽差しの中、芝はある程度根付いてくれたようで青々とした葉が伸びてきました。今度は芝を刈る必要があります。最初は巨大なはさみのようなものでメンテナンスをしていましたが、さすがに夏場芝がより元気になってくると、暑さによる作業の大変さも伴い、芝刈機を購入する事にしました。

庭用の電源コンセントがあるので、そこを使える電動の芝刈機を選びました。電動工具のマキタ製で、我が家のメイン掃除機メーカーのものでもあります。これは刈った芝がストッカーに入り、処分が楽なのが便利でした。重さは結構ありますが、コンパクトで使い勝手は悪くありません。それでもひとつひとつ庭いじりが楽しいと妻が言うような状態にまでなってくれました。

くーにとって庭は遊んでもらえる場所でもあるのですが、庭の整備途中では妻が手入れに忙しい事から相手にしてもらえず、外が少し眺められる踊り場スペースにいて外をずっと眺めていたり、風のある涼しい日はタマリュウや芝の上でオモチャを噛んでいたりと、リラックスして一人遊びを楽しんでいるようでした。

あの東日本大震災の影響による夏場の電力不足に対して、庭に芝を張り、グリーンカーテンを設置し、散水を毎日した事で、庭はコンクリート面とは違って照り返しも少なく、格段に快適でした。ガルバリウム鋼板の屋根や外壁も、熱こそもちますが予想外にさわれる程度の熱さにしかなっていません。正直これには驚きました。通気胴縁がしっかり機能しているのか、鋼板が遮熱タイプである事も少しはあるのかもしれませんが、きっと周辺の気温がさがるように、緑いっぱいにしたからではないかと思っています。

朝晩の出勤の時、庭の草の匂いがとても気持ちがよいです。キャンプの朝のような、あの青くさい、朝露の匂い。まわる家は庭までできてはじめて「犬と暮らす家」になります。それが少しづつ形になりつつある事を実感でき、喜びを感じられました。

そんなこんなで、今では足にやさしい芝の上で、ちょっとしたレトリーブ遊びをしたりする事もできるようになりました。雨の日でも関係ありません。台風の日でも突風と雷雨の中、庭に出たいというので玄関を開けると嬉しそうにびしょ濡れになりながら尻尾をふりながら走り回ります。雨に濡れたって平気です。狭い狭い庭ではありますが、おわりというまで、ひたすら走りまわっていました。

そしてこの熱い夏、念願の子供用プールでの水遊びもする事ができました。庭で水あそびというのは戸建ての憧れ。安いプールでも笑顔なくーです。

庭づくりはまだまだ課題は残している状態ですが、半年でいろいろな勉強をさせてもらいました。来シーズンに向けて、よりよい庭にしていきたいと思います。家というものは、建物だけではなく、その庭を含めた環境、そして住む人の色でバランスが保てている事が重要だと思っています。そんな家になったらいいなと思うのでした。

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