動物孤児院 (83)大きいティアハイム・小さいティアハイム

大きいティアハイム・小さいティアハイム
      

規模ではドイツ一のベルリン・ティアハイム

ティアハイム(ペット動物の保護施設)は登録されていない分も含めるとドイツ中に約800ある。そのうち登録されている施設は500ほどで、残りは個人の小さな施設だ。
この数年でドイツのティアハイムの存在が日本でも知られるようになった。私もこれまでいろいろな人から「見学したいので紹介してほしい」という連絡を受け、周辺の中規模のティアハイムにコンタクトを取って日本からの見学者に見せてもらえるよう手配した。
最近は、ベルリンのティアハイムがすばらしいということを聞いていたので、どうせ見るのならベストと言われるベルリンのティアハイムに限ると思った私は、そこを見学することを勧めていた。

ベルリンのティアハイムは近代美術館のような外見である。ホームページで航空写真を見れば分かるとおり、広大な敷地は緑がいっぱいで自然公園のようだ。視察に来た日本の人たちが、「すごい」「すばらしい」を連発するのは容易に想像できる。
しかし最近、ベルリン在住の日本人獣医である友人のつぶやきに、私はハッとした。日本からティアハイムを視察に来る人たちは口をそろえてベルリンの施設を見たいって言うそうだ。こないだは日本から団体も見学に来た。確かにベルリンのティアハイムは大規模で近代的ではあるが……。しかし動物たちが必ずしもそこで幸せかというと、そうではないと思う、と。「むしろ田舎のティアハイムのほうが、人間性があって1頭1頭がだいじにされているのでは?」
そして彼女は付け加えた。「本当は大規模なティアハイムなど必要ない社会になってほしいのにね」と。
 
フランクフルトの近郊にある中規模のティアハイムを見学したとき、殺処分はドイツにないとは言え、犬たちが不憫に思えた。整然と並ぶ犬舎は確かによく掃除されており、広さも十分だったし、毎日職員やボランティアが散歩に連れ出してくれるので犬たちは運動不足になっているわけでもなかった。しかし、犬舎の横を通るとき、犬たちが突然吠えるのを止めて、「ぼく、いい子だよ。ぼくをファミリーにして!」と訴えるようにじっとこちらを見るので本当にせつなかった。
そして、以前聞いたベルリン・ティアハイムからのメッセージが蘇ってきた。
「どんなに快適そうなティアハイムであっても、ここはあくまでも仮の宿。家庭で愛される幸せとは比較にならない」。
 幸い、大部分の犬たちに新しい飼い主が見つかるそうだ。しかしながら、同時にもう一度、仮の宿であっても犬にとって本当に幸せな環境とはどういうものなのかをもう一度よく考えてみたい。

数頭だけのティアハイム

犬猫を数頭だけ保護している人たちもいる。小型犬だけ、猟犬だけ、ある種類だけ、スペイン、ポルトガル、ギリシャで殺処分寸前だったのを寸前に救助された犬だけ、東欧から救い出した犬だけ、というティアハイム。スペインの休暇先で拾った犬を連れ帰って、新しく飼い主を探す、というケースもある。
私が訪れた個人規模のティアハイムは、保護施設というより、犬を多頭飼っているだけ、というような普通のお宅だった。その家には毎月、南欧や東南アジアから犬が送られてくる。躾や訓練が必要な犬たちは、さらに別の田舎家に送り込む。中には虐待を受けて人に寄り付かない犬もいるので、そういう犬は時間をかけて人間に対する恐怖をなくすまで待つ。
そのお宅では大小の犬たちが家や庭を自由に行き来していて、台所の片隅にも居間にも犬たちの寝床が作ってあり、おもちゃが散在していた。(犬の住まいに人間が同居しているみたいだった!) 中型から大型まで6頭いたが、吠えもせず、おとなしいので近所から文句が出ることもない。たとえ新しい飼い主が見つからなかったとしても犬たちにとっては不都合なことなど何もない環境だ。
       

至る所にある「飼い主募集」の張り紙

小さなティアハイムや個人で犬猫を預かっている人たちはペットショップや、スーパーマーケットや、動物病院の待合室、商店の入り口などに張り紙をして新しい飼い主を募集することが多い。(ティアハイムの大小に関係なく、テレビ番組で紹介してもらうことも可能だ。)
多くの店が飼い主募集の張り紙に協力的である。ドイツのペットショップは犬猫の販売をしないので、写真入りのポスターは犬猫の飼い主を探している人にとっても、引き取りたい人にとっても本当に好都合だ。近所のタバコ屋の入り口にも10頭ほどの写真が載った張り紙がある。通りすぎるたびに気になって見るのだが、連絡先の電話番号を記した用紙の数が減っていると嬉しくなる。

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