動物孤児院 (86)ドイツのペットショップが仔犬販売(続)

ドイツのペットショップが仔犬販売(続)        
        

仔犬見たさで店に行く人々

23頭の仔犬のうち、1週間で13頭の仔犬が売れたそうだ。
デュースブルクにある、この大型ペットショップ Zoo Zajac(ツォー・ザヤック)のオーナー、ザヤック氏がこれを売れ行き順調とみるのかどうかはわからない。しかし、本人は楽観的な態度を崩していない。少なくとも外から見るかぎりは。
テレビ番組のインタビューで質問者から、「あらゆる動物愛護団体が反対していますが」と言われても、仔犬販売を止めるよう抗議が続いている事実があっても、ザヤック氏は「買う人がいるのだから売るのさ」、「売ることは(法律で)許されているよ」と、涼しい顔だ。

その大型ペットショップはギネスブック世界一の広さを誇り、世界中の珍しい小動物も販売していることから、休日は家族連れが押し寄せるアトラクションと言っていいほどなのだ。入園料タダの屋内動物園というところか……。「ペット動物なら何でも置いている」がザヤック氏の自慢であったが、ずっと欠けていたのが犬だったのだ。仔猫は4年半前から販売を始めていたらしい。(この店で仔猫を買い、苦い経験をした人が、この店から買わないようにインターネットで呼びかけている。買った仔猫に先天性の病気のあることがわかり、店に連絡したが、店の対応や、店専属獣医が下した診断結果に納得いかなかったのだ。)


衝動買いは免れない、店頭販売

仔犬売り場は人だかりがしていて、「わあ、仔犬!」、「かわいい!」の連発。ほとんどが仔犬見たさで来た見物客だが、あるドイツ人獣医は、見に来ただけのはずの人が仔犬を購入する現場に出くわし、その一部始終を述べて嘆いている。

「見て、あの雑種の仔犬、何てかわいいの。ほしいなあ」と会話していたカップルが1時間半後もたたぬうちに仔犬を買ったのだ。
衝動買い。見ているうちに、ほしくなって買ってしまう―――。そもそも、カップルはその犬の種類さえ知らず、雑種だと思っていた。二人は、値段の横に「オーストラリアン・シェパード」と書いてあるのを発見して、「あら、雑種じゃないんですって!」。
オーストラリアン・シェパードの性格も、運動量もそのカップルは知らない。そもそもオーストラリアン・シェパードという種類が存在することさえ知らなかったのである。
店は新しい飼い主となる二人に、今後15年間、家族としてその犬と暮らすための知識、それに経済状態、住の環境を確かめただろうか? 二人はその新しい家族に時間をかけることができるのか? 犬種独特の病気や注意することを説明したのか? そして、犬を飼うということに対する覚悟は? 
「動物ホーム」はもちろんのこと、真面目なブリーダーだったら、そういったことを確認せずに犬を渡すことはないだろう。犬種にこだわる人は、どの犬種が一番自分たちに適しているか考えに考えた末に、その犬種の連盟に連絡をして繁殖家を紹介してもらう。それが当然ではなかったのか?

それに、アフターチェックはどうなるのか? つまり、犬が新しい飼い主のもとで順調に育っているのか、家族の一員になったか、問題は起きていないかのチェックである。ちゃんとした繁殖家は売りっぱなしにしない。

アフターチェックに関して、ザヤック氏は店のパンフレットに「○○愛護協会」と提携しており、共同でアフターチェックをする」と書いていた。あるテレビ局のスタッフがその愛護協会に電話をしたら、「その番号は使われておりません」の音声が聞こえるだけ。記載されていた住所の家に行くと、出てきた女性はパンフレットを見て、「とんでもない。ザヤック氏とは何の関係もないです!」と憤慨した。故人であるご主人が愛護協会を運営していたが、ご主人の死亡と共に協会自体がすでに存在していなかったのである。
テレビ局の人がザヤック氏にその件を追求した。それまではどんな質問にもスラスラ答えていた氏であるが、突然、「あのう、え? あのう、ええ?」……と、初めて、返す言葉に詰まった。そして翌日、店のパンフレットからその愛護協会の欄は忽然と消えていたのである。


ドイツ犬協会が警告

VDH(ドイツ・犬協会)は日本のジャパン・ケンネル・クラブに当たるドイツ最大の団体で、VDHに登録されている各犬種のクラブが血統書の管理をする。そのVDHは2月上旬、「ザヤック氏のペットショップやほかのペット業者に仔犬を販売したメンバーは除名処分」と発表した。

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