ShohtaとRex

ShohtaとRex

私の息子Shohtaが小学校に入学しました。これからのお勉強のことやお友達との出会いや遊びに期待で一杯の入学式でした。32名のクラスに問題児が2人偶然同じクラスになってしまいました。


ShohtaとRexの
ここ掘れワンワン競争

5月に入り、本格的に勉強がはじまりだした頃から、その男の子達は教室であばれるようになり、いたずらを超えた暴力に近い大騒ぎとなったようです。その子達は教室を駆け回り、それを追いかける先生、2人は先生に追いかけられるのがかえって楽しいようでした。「教室が大変になってる」と連絡があり急遽、授業参観をしましたが、そのひどさといったら、まるで動物園状態でした。

きゃ〜〜と奇声を発しながら机をたおし、泣き叫ぶ子、ひとりオルガンの下に隠れている子、つられて徘徊する数人の子供達、下をむいて暗い顔をした子供達。これが希望に満ち溢れ一ヶ月前に入学したばかりの7歳の子供達の顔なのだろうか? とただ、驚くばかりでした。

学校は、その対応策として、同じ7歳の児童にその問題児の「お世話係」にして面倒をみさせるようにしました。しかし、お世話係にされた児童が次々に不登校になってしまったのです。そのうち、ShohtaがA君のお世話係りの番になり、廊下に逃げると追いかけ、教科書を開いてあげたり、休み時間も遊び相手になっていました。机をたおせばなおして、ばらばらになった引出しを元通りになおし、教科書を破けばテープで貼ってなおし、このようなことが毎日続いたのです。

 


そして7月のもうすぐ終業式という日に突然学校から電話があり、「Shohta君の目が見えなくなりましたのでお迎えにきてください」担任の先生の説明は「突然、黒板が見えない」と言い出したので保健室で寝かせましたというだけでした。

眼科での検査は、どこにも問題ありませんでした。お医者様が「Shohta君はその場を逃げたかったんだね」と、Shohtaは「でもね、授業中は歩き回っちゃいけないんだよ」と。咬まれても、殴られても、舐められても、ただひたすら我慢するしかできない状況だったことをこんな症状が出るまで判りませんでした。

夏休みにはいり、主人とShohtaは「嫌なことは嫌だ!」と大声でいう練習を一緒にしました。いつも我慢ばかりしなくても良いんだよって!
 


しつけ教室の合間に
パパと一緒にボール遊び


名栗湖でカヌー

夏休みのキャンプで田貫湖にドライブに行った時のことです。6ヶ月くらいのゴールデンが一生懸命に飼い主の後をついて歩いているのをみかけました。Shohtaはその光景が目に焼き付いてどうしてもゴールデンが欲しいと言い始めたのです。

8月のある日、成田のペットショップをのぞいたら3ヶ月のゴールデンがいました。だいぶ身体も大きくなっていました。犬を迎入れる準備もしていなかったので、その場はあきらめたのです。ところが、一ヵ月後にまた同じペットショップをのぞいたら、なんとまだ売れ残っていたのです。4ヶ月になってました。ガラスケースの向こうから悲しい目で私をみつめています。「ちょっと出してもらってもいいですか?」と言うと、抱かせてくれました。こんなにおとなしくていい子がどうして売れ残っているのだろうか?

そのとき主人が週刊誌(ペットショップの売れ残りの犬達の最後)の記事を私に話してくれたことが頭によぎったのです。今は二酸化炭素で処分するそうで、天をあおぎながら空気を探して口をパクパクさせながら死んでゆく犬達。そんな目にこの子があってしまうかもしれないとふと思いました。
Shohtaはもっと小さい頃から育てたいといいましたが、この子がそうやって殺されちゃったらどうするの? という私の問いに、「この子にして」と言ってくれました。そのまま、フードと食器、リード、ブラシだけを買ってその子を抱いたまま車にのせて連れて帰ってきたのです。それがRexです。

Shohtaが学校で楽しくすごせていたら、Rexはうちの犬にはなっていなかったでしょう。主人が週刊誌の記事を読んでいなかったらそのまま帰ってきたでしょう。そして、Rexが売れ残っていなかったら。そういった偶然がマッチしたのでしょうね。


スキー場でのはじめての雪

Shohtaは、毎日、学校から飛んで帰ってきて散歩に行くのを楽しみにし、放課後お友達とも遊ばないで毎日Rexとすごしていました。そうこうするうちに、Shohtaは元の明るい子に戻って来たのです。特別にRexが何かをしたわけでもありません。でも、ご飯をあげる、散歩に行く、話し掛ける、頭をなでる、犬がそこにいたら当たり前のことを毎日毎日繰り返していただけなのです。
RexはShohtaに良く似ています。おっとり、のんびりしていて、ボール拾いなどもほかの犬がくると譲ってしまいます。とても人間が好き、犬が好き、噛まれてもうならず、噛み返さず、ついこの間のShohtaのようです。

犬を飼うにあたって、主人と私が息子達に繰り返し話したのは、普通ならShohtaやYuuki(次男)より先にRexは死んでしまうのだということです。今は若いから一緒に走れるし散歩にも行ける。だけど、10年たったらもしかしたら歩けなくなるかもしれない。だからこそ一生懸命にお世話をしないといけないのだということ、Rexにも感情があってShohtaやYuukiの気分の良い時だけ相手にするのではRexが寂しい想いをするのだということです。Rexの散歩やRexがいることで自分達の遊ぶ時間が減ることもあるだろうけど、それが犬を飼うということなんだと話しました。

今だから思うのですが、家族みんながRexの世話をすることで、家族が一緒になり、Shohtaの心の傷も少しづつ癒せていけたのではなんて思います。Rexに感謝です。
RexはShohtaとYuukiの素晴らしい相棒になりました。男の子ばかりの我が家はパパがリーダーで、Shohta、Yuuki、Rexの3兄弟のにぎやかな楽しい暮らしになりました。そんな家庭になった我が家を、私は微笑ましく感じています。(2000/05/01,千葉県 F.Tさん)

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