アメリカでリースドッグ
アメリカでリースドッグ
リースというと良く聞くのは車です。またレンタル出来る物って何でしょうは、レンタカーがありますよね。日本はずいぶん前からレンタルドッグを行っているショップがあります。その是非は、以前たくさんのご意見や考察がされました。現在も犬と暮らせない人が「犬に癒やしを求める」レンタルドッグの需要はあるようです。
アメリカ、それも米国内でもっとも動物愛護先進地域のオレゴン州ポートランドに「リースドッグ」のショップがあるそうです。
リースとレンタルの違いは何でしょうか、イメージ的にはレンタルは一時的したがって複数の人が利用、リースは長期間、契約者は一人でしょうかね。(LIVING WITH DOGS)
「リースか、買取か」 車の場合通常その選択肢があるが、なんとペットのリース業がここオレゴン州ポートランド市で2年前にスタートした。人間のネットお見合いさながらの情報力を駆使して「あなたにぴったりあったペットを探し出し、月々のリース料を払うだけでペットとの安心できる暮らしを保障します」と言った謳い文句で、ペットは飼ってみたいけれど、治療費、問題行動、トレーニングなどについて心配だという飼い主たちを惹きつけているらしい。ビジネスは順調に伸び、ポートランド市内のショッピングモールに近々第二店舗をオープンするとのこと。
ペット産業はアメリカでも日本同様毎年目覚しい伸びを更新し、この10年間で80%の成長を記録した。2012年の予想はなんと528.7億ドル(約4兆2,29 6億円)というから驚きである。
2011年の実績額509.6億ドルの内訳をみると、ペット自体の購入費用が4.2%、グルーミングやボーディングが7.4%、市販薬を含むペット用品が23.1%、医療費26.3%、 フード39%と続く。とりわけ医療費は予測不可能なためにこれからペットを迎えようという人にとっては大きな不安要素となる。
リース契約が成立するまでの手続きだが、候補者は次のような点をクリアーし、更に経済状態も考慮される。少なくても年収の2-4% をペットにかけられる余裕がなければならない。また入会金として猫は155ドル、犬の場合は195ドルがかかる。
• ペットとの相性
• 借主のライフスタイル、これには家族構成、家の大きさと間取り、庭の広さなども含まれる
• そのペットと一緒に居られる時間または(時間が少ないときにはデイケアやドッグウォーカーを雇うなどの)そのほかの手立て
• ペットを飼った経験
• アレルギーなどの問題
• 先住ペット
のほか様々な観点からペットとの適性を見極められる。
たしかに上記のようなスクリーニングは私のフォスター犬を譲渡するときにも重要なポイントである。
さて気に入ったペットが見つかり、ふさわしいと判断されると猫は月額39ドル、犬は59ドルのリース料でそのペットをリースできることになる。ある一定期間リースした後は、家族に迎えたければそのまま譲渡ということになるらしい。犬の場合は最高600ドルの譲渡料を支払う。
当然のことながら、このようなビジネスのやり方には賛否両論がある。
まず賛成派は、自分の家庭の生活環境や家族がペットに望むことなどを経験豊かなスタッフと話し合い、自分たちの期待にあうペットを選んでもらえるため、リスクを回避しながらペットとの生活を楽しめる点。ちなみに月々のリース料には、同社の獣医による治療費、薬代、蚤の薬、歯のケア、マイクロチップ、登録料、去勢・避妊手術費、鑑札料、成犬にはCGCテストのトレーニング、パピーには社会化・服従訓練費、同社指定のフード代、グルーミング費などが含まれている。
反対派の意見は、次の2点が主となる。
まず、同社が扱う犬の出どころの問題。多くのシェルターやレスキュー団体はこのビジネスを「動物をモノのように扱っている」という理由からサポートしておらず、結局ブリーダーあるいは個人宅で不注意からできてしまったパピーなどを買ってきてリースしている。とはいえ一箇所だけだが、オレゴン州の片田舎のシェルターがパートナーとなり、貰い手のいない犬をすでに100匹近く同社が引き取ってもらったと公表している。
もう一点は、病気や怪我に必要な治療はすべて同社内の獣医により提供されることになっているため、どの程度の治療を施すのか、採算のつかない治療はもしかしたらしないのではないかという疑問が残ってしまう。私事で申し訳ないが、先日娘が飼っている5歳になるオス猫が尿道結石になり、2回入院、3回目は手術を避けられず2500ドルかかってしまった。もちろん家族の一員として暮らしている猫だから、私たちは必要な治療はできる限りしてあげたいと思う。ところがアメリカでも猫がこのような病気になってしまったときに医療費がかさむために安楽死してしまうケースもあると聞いている。ましてや慈善事業ではないビジネスのこと、どこで線を引かれるのか不安を覚えてしまう。
更に、同社がブリーダーなり個人なり前述のシェルターなりから買い取ってきて、健康診断にパスしなかった動物たちはどうなるのだろう。リースできないペットは不要のはず。またリースされても結局最終的に譲渡されずに年をとってしまった動物たちは?動物を飼うということは、もっと大きな覚悟をそなえて家族として迎え入れることではないのだろうか。いくら最新技術の性格判断で選ばれた犬でも、そこは生き物。新たな環境でどのように変わるか、たとえ問題行動をもった犬でも飼い主の忍耐と愛情で乗り越えていくこともできる。そしてどんな犬でも老犬となり、人間同様心身ともにサポートが必要になってくるのだ。「リースでいいとこ取り」という安易な考えが私はどうしても気に入らない。私のフォスターした仔の中には、足を一本切断した仔もいた。人間不信の仔もいた。皮膚病を患っていた仔、太りすぎの仔、ガリガリの仔、でもみなそれぞれ心優しい人たちのところにもらわれていった。あの仔たちはリース用には決して使われなかっただろう。でも、リースという曖昧な覚悟しかもてない人間に次々試されるよりは幸せだと私は信じている。このリースビジネスが、これから一般化していくのか、ポートランド市民のペットに対する考え方がどのように反映されるのかを見極めたいと思う。(2012/12/5)(アメリカ YMさん)
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