動物孤児院 (95)外国の犬も救いたい!

外国の犬も救いたい!
               
動物愛護に国境はなし

ドイツには始めから犬の殺処分という観念がなかったせいか、「殺される運命にある犬を救おう」という精神が浸透しているようだ。この欄でもしばしば取り上げたように、休暇でスペインやギリシャに行って、短い鎖でつながれた犬や、殺処分される犬の実情を知って、現地に居を構え、「動物ホーム」を始めてしまったドイツ人は少なくない。スペイン、ポルトガル、ギリシャなどの国に行ったら、地元の「動物ホーム」を訪問するのを習慣にしている人も多い。
現地では、地元のボランティアの人たちが一緒に犬たちの世話をしている。はるばるドイツから移住してきてまで野犬や野良猫を捕獲して保護するドイツ人を現地の人たちはじめ胡散臭い目で見ても、地元の協力者が現れ、ボランティアたちが犬猫の世話を始めると、村人の意識も少しずつ変化していく。
保護した犬を地元やその国で新しいファミリーを見つけるのはほぼ不可能なので、ドイツ、スイス、オーストリア、オランダなどの国々にある動物ホームや個人に送り続けなければならない。そのシステムもずいぶんと進化した。ツーリストがボランティアで犬をチェックインしてドイツに運ぶネットワークも確立している。ドイツの動物ホームと直接交渉して、引き受け可能の頭数を電話で確認するや即、殺処分所に向かい、殺される寸前の犬たちを引き取り、ドイツに車で運ぶ、という東欧の活動家もいる。

犬の地獄に一筋の光!

東欧の動物愛護は始まったばかり。特にルーマニアからは、目を覆いたくなるような、耳を塞ぎたくなるようなニュースが次々に届く。インターネットでは残虐行為が流れた。子犬にガソリンをかけて火をつけ、苦痛で暴れる様子をYOUTUBEで流す青年たちは一体どんな教育を受け、どんな家庭で暮らしているのか? 「犬を殺す日」に、路上で棍棒を振り上げ、無抵抗の犬たちを殴り殺す男たちの精神構造は一体どうなっているのか? 
 また、ルーマニアにできた「動物ホーム」の中には、単なるプロパガンダであるものが多いことも暴露された。犬を保護すると言って補助金や寄付金を集め、実際は殺していたのだ。職員たちが犬を次々と棒で殴り殺す様子が隠しカメラで撮影され、ドイツで公開された。避妊去勢してある犬たちも犠牲になった。避妊済みのしるしがある耳は証拠隠しのために引きちぎられていた。

このように、犬にとっては地獄とも見えるルーマニアだが、「救いたい」と思う人たちは、少数だが、いる。彼らは一筋の希望の光だ。
ルーマニア第二の都市ティミソアラでは、ロマルス・サレ氏というルーマニア人が、“本当の”「動物ホーム」を始めた。彼を手伝っているのは大部分がドイツの若者たちである。かつてはゴミを漁り、人々から虐待された500頭の犬たちは、ここでやっと人間的な扱いを受ける。
2万5千平方メートルもある清潔な環境、病気の治療、そして、サレ氏とボランティアの若者たちが注ぐ無償の愛がそこにある。今年は敷地内に獣医の診療室、太陽電池の発電装置、ボランティアたちの宿泊施設も建設の予定だそうで、ゲルマン諸国に寄付を募っているが問題なく集まるだろう。大きなテレビ局がドキュメンタリー番組を作って放映しているし、雑誌も大きく取り上げるので知名度はますます高くなる。
ここの犬たちもドイツ、スイス、オーストリア、オランダに送られる。サレ氏はこのホームがルーマニアのお手本的な存在になることを願っている。

ルーマニアに物資を運ぶトラック女性運転手


「花屋さんで張り紙を見たんだけど、ルーマニアにトラックを運転して物資を運ぶ女性がいるらしいの。私たちもドッグフードを寄付しましょうよ!」と電話がかかった。先週のことだ。ちょうど花を買いたいと思っていたし、とにかくその張り紙を花屋さんまで見に行くことにする。
「この女性が本当にこんな大きなトラックをルーマニアまで運転していくの?」張り紙の写真の中で、ショートカットの素敵な女性が犬を抱いて大型トラックの前で微笑んでいる。タマラ・ラーブさんというドイツ人女性で、職業は大型トラック運転手! 
花屋さんのオーナーの女性たちもこの企画に賛同して、古タオルや毛布、ドッグフード、薬、犬の玩具などを集めて協力しているのだ。花を買った人たちがチップとして店の人にあげる小銭もすべてラーブさんに託すそうだ。花々の後ろに毛布やドッグフードの袋が山積みされていた。

 そして今朝は新聞にラーブさんの記事が。
それによると:1万8千個の物資が集まった。ドッグフードは大型トラックに積める容量を超えた。(超過分も何とかして全部運ぶから心配いらない、とのこと。)野犬をこれ以上増やさないためには避妊去勢しかないのに、ルーマニアでは「増えたら殺せばいい」の考えから一歩も出ていない。こうして物資を運んでも、大部分のルーマニア人から、けんもほろろの扱いを受けること。ガソリン代は運送会社が寄付する。

ラーブさんの二週間にわたる旅はカメラチームが同行して後日ドキュメンタリーとしてドイツで放映されるそうだ。「なるべく多くの人にルーマニアの現状を知ってもらいたい」と彼女は語っている。
マスコミの力は想像以上に大きい。ラーブさんの行いや、サレ氏の「動物ホーム」がルーマニアでも報道されれば、人々が動物虐待に気づくきっかけをもたらすかもしれない。

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