動物孤児院 (97)かわいい子犬が生まれています!格安で分譲を……

かわいい子犬が生まれています!格安で分譲を……


[子犬の大半は途中で死ぬ]

 東ヨーロッパがEUの仲間入りしたことは、犬にとっては災難となった。往来も商売も自由になったこの数年来、動物愛護の世界は深刻な問題を抱えるはめに陥っている。たくさんの子犬が東ヨーロッパで繁殖され、西ヨーロッパに持ち込まれてヤミ取引されるようになったのである。
これでもか、これでもかというくらいインターネットや雑誌やテレビで、ポーランドやルーマニアなどの国々では子犬たちがどのような劣悪環境で増やされているか紹介されている。しかし、トラックにぎゅうぎゅう詰めにされて西ヨーロッパに運ばれる途中の子犬たちが相変わらず発見され続けている。
ドイツのアオトバーン(高速道路)で警察の抜き打ち検査によって発見される子犬たちのニュースはもう珍しいものではなくなった。子犬は幼ければ幼いほど売れ行きがいいので、4〜7週間で母犬から引き離される。段ボールやケージに詰め込まれ、予防接種もなく、病気持ちの犬もいるが、そんなことにはお構いなしだ。水もないので多くは途中で衰弱死してしまう。
ドイツを通過中に発見される子犬たちはまだラッキーだ。すぐに最寄の「動物ホーム」に収容され、治療を受け、一定の検疫期間の後、新しい飼い主を募集することになる。だが、「目的地にたどり着くまでに毎時6頭の子犬が死ぬ」という業者の告白があるそうだ。以前もここで書いたが、100頭の子犬を「動物ホーム」が収容したものの、半数以上がパルボでバタバタ死んだ例もある。

 

 子犬たちの「死の旅」の目的地はオランダである。出生を証明するニセの書類を作るためだ。出生地、種類、予防接種などが記入された健康証明書が、犬を連れて国境を越える場合に必要なのである。その「ドッグパスポート」をオランダで書き換える。当然オランダでも違法行為だが、東欧の子犬マフィアはあらゆる手口を使う。子犬の出生地はオランダということになり、架空の獣医のニセ証明書ができあがる。これはその後の販売が容易になることを意味する。新しい「証明書」を得て、子犬たちは再び、ベルギーやスペインやフランスなどへ「死の旅」を強いられる。
東ヨーロッパの子犬と聞けば「病気持ちだろう」、「ひどい環境で生まれた子犬だろう」というようなマイナスのイメージばかりだから買う人はまずいない。オランダから来た子犬ならば、まあマトモだろうと人は錯覚するのだ。実際、オランダで販売される子犬の3分の2が東ヨーロッパから連れて来られた子犬で、ベルギーでは何と8割にも達するという。


[ガラス箱の子犬:まるで熱帯魚を売るように]

 東ヨーロッパでは子犬は路上でも市場でも自由に買える。ポーランドでは市場での子犬の販売を昨年1月に禁止したが、その法律は無視されているし、取り締まりがあるわけでもない。
ルーマニアで隠しカメラを携帯したドイツ人ジャーナリストが子犬を探しているふりをして言い寄ってきた商売人についていく。男が尋ねる。「どんな種類がいいんだい?」―――選り取り見取り、というわけだ。「こんなのはどうだい?」と、段ボール箱を開けると中には同一犬種の子犬が5、6頭、寄り添ってクンクン鳴いている。ジャーナリストが黙っていると、男はさっさとその箱を閉じ、次の箱を開ける。今度は別の犬種の子犬が……。「いくら?」「10ユーロだよ」という会話の後、ジャーナリストが立ち去ろうとすると、「5ユーロでもいいよ」と声が追いかける。ドイツの真面目なブリーダーから買えば最低800ユーロはする子犬が5ユーロから30ユーロで売られている。
スペインやフランスに運ばれた子犬は市場だけでなく、ペットショップでも販売される。「まるで熱帯魚みたいにガラスのケースに入れられて販売されています」とドイツ人ジャーナリストは表現した。
ドイツに住む日本人女性獣医師である友人が7歳の娘さんを連れて日本に一時帰国した際に、娘さんがペットショップを見て、「おかあさん、犬がガラスの箱に入っている!」と、驚いて叫んだ話を思い出す。子犬がガラスのケースに陳列されているさまは、それを見慣れていない人間にとってはちょっとしたショックである。


[堂々と嘘の広告「趣味で繁殖しています!」]

 運搬中に半数以上が死んでも、残りがある程度の値段で売れれば彼らの利益は十分なのだろう。たとえば1ヶ月の収入が200ユーロというルーマニアのような国なら、ガソリン代を差し引いても数頭売るだけで大もうけということになる。(道中は車の中で寝る)。
今どきドイツでは値段の安い子犬などいない。ドイツの「動物ホーム」から引き取る場合でも約250ユーロは必要経費として支払わなければならないのだ。以前、近所で雑種の子犬を抱いている女性と話をしたが、「500ユーロで買った」と言っていた。日本みたいに、「雑種の子犬、差し上げます」はここドイツではまずない。
日本にもドイツにも同じ問題がある。そしてこの問題は、買う人がいる限り、或いは法律で厳しく規制しない限り、続いていく。
年に何回もお産させるために母犬はホルモン注射を打たれ、不潔なケージの中で一生を過ごす。産めなくなればゴミとして捨てられる。売れない犬は殺処分。
インターネットでの購入はさらに簡単だそうだ。たった2回のクリックで、希望犬種の子犬が、2日後には「指定された最寄の駐車場で」受け取ることができるという。昨年は隣町で、東ヨーロッパからの「注文品」を運搬中の車が見つかった。ドイツナンバーの小型車のバンだったが、車内に子犬が数頭いるのを不審に思った警官が尋問した結果わかったのだ。しかし、そのような子犬の購入は違法ではなく、どの子犬にも予防接種証明書があったので、名乗り出た注文者が犬を引き取ったのだが、ニュースになった。
嘘の広告も多いそうだ。「趣味でチワワを繁殖しています。かわいい子犬が生まれました」的な広告は疑ってかかったほうがいい。新聞や雑誌やスーパーマーケットのメッセージボードなどは要注意だ。
 

[解決策は?]

 動物愛護において世界トップのスイスでは、犬のチップ埋め込み率は99パーセントである。一頭一頭の出生の情報が判れば、警察は犬たちのバックグラウンドをすぐに把握することができるという理由で、スイスではどの警官もチップを読み取るスキャナーを持っているそうだ!
 それではドイツをはじめとする西ヨーロッパで、東ヨーロッパからの子犬の問題をどうすれば解決することができるのだろう?(= In Japan; ペットショップで販売するために繁殖され続ける子犬たちの問題をどうすれば解決することができるのだろう?)

 政治家はなかなか重い腰を上げてくれないし、「動物愛護よりも商売のほうが大事」とする人たちが減らない現実がある。これはドイツと日本、同じらしい。

 答えはただひとつ―――飼い主の知的な決断。
 
 あるドイツ人ジャーナリストの提案はこうだ。
犬を飼おうと決めたら、

?「動物ホーム」で探して、引き取ろう。

もしくは;

?犬種別にある同盟(犬種別)に登録していて、その犬種を守ろうと真剣に取り組んでいるブリーダーから購入しよう。

「お金と時間がかかるのは当然である」と理解しよう。真面目なブリーダーはその犬種を愛していて、金儲けのために繁殖しているのではなく、産ませる頭数も限っているし、管理と世話にお金と時間をかけているから子犬の値段が高いのは当然なのだ。
え?そんなこと言ったって自分にはお金がないって? 
その場合は貯金して希望の犬が買えるようになるまで待とうではないか。ファミリーの一員を迎えようってことだろう? それって人生で大きなことじゃないのか?

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