微笑みの国の路上犬 (19)異国で最愛のワンコを見送る‐タイのペット葬儀事情

微笑みの国の路上犬 (19)異国で最愛のワンコを見送る‐タイのペット葬儀事情

タイのN.Oさんから、久しぶりのお便りがありました。1年半前のタイの洪水「被災犬と年越し」が最後の記事でした。
今回のお便りは、タイで出会った最初の犬、最愛のALEXとの別れのご報告でした。N.Oさんにとって、ALEXとの出会いはNさんがタイで生きる為に共に分かち合った戦友でした。ALEXの息子のダイちゃんが加わり、そして、交通事故で背骨を負傷したハナちゃん。ALEXに出会ったからこそ、徐々に家族が増えて、レスキュー活動もはじめ、リビング・ウィズ・ドッグズにたくさんの記事を書いて頂きました。それはまさしくALEXが気づかせてくれたタイの犬事情でした。ALEXはあまりにも潔く逝ってしまいましたが、ALEXの残した遺志をN.Oさんは大事にしてこれからもダイちゃん、ハナちゃん、ソムちゃんとの暮らしを大切にされることでしょう。ALEXありがとう!安らかに!いつもお空からママを見守ってね!(2013/7/23)(LIVING WITH DOGS )


2013年1月31日最愛のALEXが享年11歳で亡くなりました。

彼女は昨年11月、王室がスポンサーのアニマルホスピタルで、肝臓ガンの手術で肝臓を半分切り取る大手術にも耐え驚異的に回復しました。あと5年、いえ、1年でもいいから長生きしてほしい。そばにいてほしい。ベータグルカンを毎日あげて、手作り食事療法。そんな私の願いに応えるかのように、食欲も回復し、お散歩も楽しめるようになり、クリスマス、New Yearを一緒にすごしました。

傷がきれいにくっついたころ、おなかが5センチほど脂肪こぶのようにでてきたので、まさかこんなに早くガンが転移したのか?とすぐに手術した獣医に連絡。幸い、腹圧で術部の皮膚と脂肪が押しだされるヘルニア症状とのこと。まだ内臓や命に全く危険がないので、早い手術で縫合しなおすほうがよい、とのことでした。  

1月31日、早朝、すこし長めのお散歩のあと、獣医へ。ALEXは手術を覚えていて、ケージに入れると、とても嫌がり吠えました。「大丈夫だからね。落ち着いてね。」と声をかけ部屋を出たのがアレックスとの最期になりました。

危険はないので術後数時間で帰宅可能、夕方までに連絡をしてあげるから迎えにきて、と言われました。午後オペまで1時間以上あったので、魚でおかゆを作ってあげようと一度家にもどることにしました。

車から降り、ドアを開けようと鍵をさすと、携帯が鳴りました。
獣医のドクターからでした。「大至急戻ってきてください。ALEXの心肺が停止しました、まだ麻酔して5分だけれど、異変があり、蘇生処置もしましたが、ダメそうです」
「どうして!そんなのダメです、死なないで!」めちゃくちゃなことをドクターにむかって話していました。しばらくパニックになり、どうすればよいかわからず、とにかく友人に連絡をとりました。

2度目のドクターの電話で「残念ですが、亡くなりました。早く会いにきてあげて。」と言われ、やっと獣医にもどらなくちゃ、とふらふら車を運転してALEXのところへ。

「なぜ今日、手術に連れて行ったんだ。行かなければ死なせずに済んだのに。」運転しながら、頭の中は、後悔、疑問、怒り、悲しみでいっぱいに。

診察室の緑のシート台に寝かされたALEXは、耳がピンと立ち、目を閉じたままでした。あまりのショックにその場で泣くこともできませんでした。獣医には、麻酔中だったので全く苦しまなかったはずだと聞きました。麻酔医にミスがあったのか、という疑問もありましたが、もう亡くなったALEXは戻ってはきません。

ドクターが、「心臓マヒ症状で亡くなった場合、タイではとてもいたみやすいので早く荼毘(だび)に付したしたほうがよいでしょう。」お別れのために、家に戻り、ほかの3匹のワンコに会わせてから葬儀場に向かいました。

はじめてタイで自分の犬のために火葬の手配処理をすることになりました。昔、お泊りで利用したPET施設(PET ANGEL  )にはプールや動物のための霊場と焼却場があり、獣医もそこを案内しましたが、そこは使いたくなかったのです。

その時に突然思い出したのが1週間まえにラジオタイランドで聞いた、2012年にはじまったばかりのペット火葬サービス情報です。早速、そのPET MASTERというビジネスを始めた方に連絡をしました。

PET MASTERは、タイに在住の日本人の方が亡くなった場合も使用する、人間のためのバンコク都心のエカマイの有名なワット(お寺)ワットタートンに、近年準備された動物専用の火葬棟を利用するエージェントです。1匹づつお骨にできるとのことで、その手配をしていただきました。(別の安い火葬場もありますが、合同火葬や順番待ちが長いそうです。)

15年以上前ですが、東京で愛犬が亡くなった際には、移動火葬車で45,000円ほどで1匹だけの火葬をし、お骨も拾いほかほかの骨壷を持ち帰った思い出があります。

今回のタイでのALEXの火葬の費用は(今回手配料も含め4,000バーツ(約10,000円)でした。
自分で選んだ可愛い骨箱が1,000バーツ。タイでも家族同然に愛犬や愛猫の最期を送りたい方が増えたのでしょう。1件、4時間ほどかかるので、当日の夜、19時からなら予約できるとのことでした。
心優しい友人が集まり、ALEXと私の到着を待っていてくれました。ALEXのために一緒に泣き、祈り、お花を手向けてくれたのです。火葬の火入れをして、3時間後にはお骨になり、自宅に戻ると深夜でした。

ALEXの死後1か月ほど、ときどき夜中3時ころ目が覚めてしまい、泣く日々が続きましたが、こんなに愛したワンコですから、きっとまた私と家族のそばに生まれ変わってくれる、と信じて、悲しみに耐えました。
その後半年、悲しみの重さに苦しみましたが、ALEXが可愛がっていたほかの3匹のワンコ(ダイ、ハナ、ソム)のためにも元気にならなくちゃ、と思いました。

今感じるのは、しっかり者のALEXは、自分にたくさんかけてくれる愛情、時間、お金をほかのワンコのためのレスキューに使ってね、と私に伝えたかったのかもしれません。キッパリ使命を終えたかのように逝ってしまいました。

きっと、愛犬を亡くした多くの方が私のようなペットロスを感じ、困難な時期を過ごされると思います。とても強く感じたのは、ワンコたちは何か意味があって自分に出会うのだ、ということ。自分にとって突然のサヨナラであっても、そこには去っていくワンコのメッセージが必ずあるはずです。

2013年7月20日、私はALEXにいつも話していた「日本に必ず連れていくからね」という約束を果たすため、お骨をもって日本へALEXと一時帰国しました。お骨は可愛いポーチサシェに入れ替えて、問題なく飛行機に持ち込め、日本の実家に到着しました。

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