東京都の動物教室

東京都の動物教室

動物教室とは、子供の動物への理解を深め、動物好きを増やす運動、であるとともに犬にも役に立ってもらえる活動です。

今年から東京都の動物愛護管理センターの主催する動物教室のお手伝いをさせて頂いています。

最初の打ち合わせの時に、どうしても足が向かなかった動物愛護センターに行かなくてはならず、気が重かったのですが、しかし行って見て良かったと思いました。

迎えて下さったのはお二人の獣医師の資格を持った方々と職員の方々でした。動物教室でモデル犬をしているわんこ達を1頭ごと、リードをつけて名前と性格を教えて下さいました。
1頭ずつ手間をかけてきちんと紹介してくれたことに先生や職員の皆さんの犬に対する愛情を感じたのでした。1頭1頭が独立した個性ある命として正当に扱われているという印象を受けました。

モデル犬たちはみんな元迷子犬でその日は小さな運動場に出ていました。

収容施設には他に秋田犬が2頭いました。この犬たちは引き取り団体が決まっていて、それまでの飼養とのことでした。

その他には犬はいませんでした。その他という意味は、殺処分を待っているような犬の事です。この愛護センターには犬の殺処分機は無用となっているのでした。
しかし、まったく殺処分していないわけではありません。
飼い主によって持ち込まれた「生まれた直後の仔猫」は、生かすためのお世話は、3時間置きにミルクやりをしなければなりません。人手が足りず、やむを得ず殺処分することになるのです。家庭猫の避妊去勢が絶対に必要ですね。

動物教室のモデル犬になる犬は性格的に穏やかで無ければなりません。子供達に触られたり、一緒にお散歩するのに、ハンドラーである職員と心の通った信頼関係を築きあげてから実働出来ます。迷子犬や持ち込まれた犬で、まだ人を十分に信じられる犬で、飼い主が現れず収容期間が短い犬がモデル犬に登用されます。

このセンターでは、むしろモデル犬スタッフの不足が懸念されています。モデル犬は5歳まで実働して、その後、登録している愛護団体に引き取られ、家庭犬として新たな道を歩みます。それ以上の年齢まで置いてしまうと今度は譲渡しにくくなる為だそうです。

そんな犬不足の状況に、小柄な黒ラブ風のノアちゃんと、可愛いトイプードルが、新たなスタッフとして加わわりました。
ノアちゃんは、まだ実働出来ません。敷物の上でお座りし職員が側に寄り添い、いつもなでて安心させていました。こうやって信頼関係を築いているんですね。

殺処分ゼロを実行することは、もちろん甘い絵空事ばかりではないのは当然です。
迷子犬を元の飼い主にもどす努力、保護犬の新たな飼い主を探す努力、そして登録している33もの愛護団体やボランティアグループがあります。
飼い主が現れないと、登録している団体に連絡し、登録団体で里親さんを募集しています。なので犬の殺処分は東京ではないのです。素晴らしいですね。犬種毎のボランティア・レスキューもうまく機能しているようです。

東京都は動物愛護相談センターで動物愛護精神と適正飼養の普及啓発などの施策に則り、動物教室を無料で開催しています。東京都の様々な小学校が、都に動物教室の開催を要請することが出来ます。

動物教室のチームは、都の職員、動物愛護推進員がボランティアでとして手伝っているのです。私は動物愛護推進員としてお手伝いをしています。
動物教室の会場は、要請された小学校の天候に関係なく開催出来る体育館となります。

動物教室では、動物、主に犬との触れあい方、注意しなければならないこと、犬を触ったら手を洗うこと、などを実際に犬との交流を通して理解してもらえるようにしていきます。動物への認識は、子供の時に培うのが一番であることは立証されています。

子供達はモデル犬が側に来ると、嬉しくて、早く触りたいという行動に出てきます。そこを、触るには、いきなりはダメねなどと、子供に判りやすく教えて行きます。

学校の職員室の側を犬と通ると教員までもが「触っても良いですか?」と聞いてくるのには驚きます。犬に触れたい人達ばかりなのです。

都内には、犬が大好きなのに、犬を飼えない人達がいかに多いかを感じますね。

ふれあいやお散歩コーナーだけが人気なのではありません。犬の心音を聞いた後、自分たちの心音を聞いてみるコーナーやクイズ形式で教わったことを復習できるめくりパネルのコーナーも人気です。

この長い年月をかけて培ってきたノウハウがあります。毎回、終了後の反省会で出た意見も取り入れ、常に分かりやすく、新しく、最適なものに作り替えて行こうとする職員のみなさんの努力の賜でしょう。

ノアちゃんも新人。まだ見学が多いですがすこしずつ慣れてきました。


  
一番新人ですがすでにアイドルの兆しが。



ベテランです。

犬の身体能力や特徴を説明したあと、その能力を生かしたはたらく犬について説明する講師の先生。
この先生もパネルのお手伝いをしている人も、みんな東京都動物愛護推進員です。

こんな車を見たら、中には動物教室で小学校を回っている犬たちが乗っているのかもしれません。

動物に興味を持ち、考えながら答えをみつけていく子供たちを見ていると、動物愛護の未来を託していけるのではないかと希望を持つのです。(2013/11/29)(東京都 M.Tさん)


M・Tさん、ありがとうございました。東京都は限りなく殺処分ゼロに近づいているのを実感できました。ちなみに神奈川県も犬の殺処分はありません。

しかし日本全体を見たら、東京都や神奈川県と同じようになるには、まだまだ高いハードルがあります。

命の大切さを学べる動物教室。このような活動が、全国の小学校で開催されるようになったなら、動物虐待の事件報道や、安易に捨てる飼い主は確実に減っていくことでしょう。

LIVING WITH DOGS を起ち上げた1996年頃には、「どうしたら捨てない飼い主を増やせる」のか、「殺さない動物愛護センターになるにはどうしたら良いのか?」とたくさんの人達と考えました。

そしてたどり着いた案は、急がば回れで地道ではあるけど、未来のために、子供達に「命の大切さ」を少しづつでも教えていく機会が必要と切実に思いました。
やっとですね。日本の動物愛護運動、少しづつですが進化しています。
(2013/12/2)LIVING WITH DOGS

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