動物孤児院 (101)ヨーロッパ中にいるニセ「動物愛護家」

ヨーロッパ中にいるニセ「動物愛護家」

写真を見せて寄付金集め

EU内の送金や動物の輸送が簡単になったせいか、同情を利用して金儲けを企むニセ動物愛護家が増えた。先週の新聞ではそのことを大々的に伝えた。
犬の写真2枚が半ページを占めている。写真の下には「殺処分は時間の問題」とある。
ポルトガルの離島アゾレス諸島にある動物ホームの1頭は茶色の小型犬で、檻に両足をかけ、「私を救って!」と訴えるかのようにこちらを見詰めている。この犬はすでに殺処分されたのかもしれない。「乳頭に腫瘍があるせいで引き取り手を見つけるのは不可能」とあったから。ポルトガルの動物ホームでは引き取り手がなければ注射で殺処分するそうだが、それは安楽死、と呼ばれる種類の注射ではないそうだ。
もう1頭は骨と皮だけのポインター犬である。骨格がはっきりと浮き出ている無残な姿だ。どれほどの間、餌を与えなかったのか? 診察台の上で治療を受けているその犬は支えがないとうまく立っていられない。アゾレス諸島からドイツに飛行機で送られてきたのだ。6頭の子犬と共に。ほかに犬13頭と猫3匹。
犬猫たちがミュンヘンの空港に到着したとき、検疫はこの犬猫たちを没収した。この場合は、“幸い没収してくれた”と表現するのが正しいだろう。空港にいた受け取り人たちには渡さず、動物愛護団体の管理下におくという措置を取ったのだ。空港の外で待機していたドイツ人は動物愛護の人たちで、その後はスイスに動物たちを送り届けることになっていたそうだが、裏に金儲け組織があるという疑惑は持っていなかったらしい。そもそも、「立ち上がることさえ困難であるような衰弱しきった犬を空輸すること自体、本物の動物愛護団体がすることではない」と、ドイツの検疫も「背後に何かがある」とにらんだのだ。ポインター犬は治療中である。健康になったら新しいファミリーを探すプロセスが始まる。

時には第一印象と勘もだいじ

「この人たち、何かが変!」のきっかけはこのやせ細ったポインター犬だったという。ドイツのある動物愛護協会の女性Lさんはフェイスブックでその犬の悲惨な写真を見て変な印象を受け、インターネットで何ヶ月も調査をした。「やせ細ったこの犬を生かせておくのはかえって残酷ではないか。安楽死のためのお金を送りたい」と申し出たドイツ人もいたそうだ。そして、Lさんはその犬を斡旋しているグループの1人が犬の輸入のための書類や予防接種の書類などを偽造し、動物愛護法に違反して処罰の対象になっているという告示を発見するに至る。そのグループは、見るからに同情を呼ぶような犬たちの写真を掲載しては寄付を募るニセ動物愛護家ではないのかという疑問が生まれた。背後にどのようなネットワークがあるのかはまだ判明していないが、寄付金のほかに子犬6頭を売りさばいていたらかなりの儲けになったはずだ。子犬の入手が簡単ではないドイツやスイスで一儲けを試みる人間は後を絶たない。

殺処分が実施されている国々の犬を救いたい、と寄付金を送るドイツ人は多い。犬をドイツに送れば殺処分は逃れられ、病気であれば治療が受けられ、新しいファミリー探しもできる。しかし、善意を利用するニセ動物愛護家とホンモノを見分けるのは至難の業だ。ニセモノの動向を研究している人たちが色々と注意を促してくれてはいるが。注意事項のひとつに、一目で同情を引く写真を使っている場合や、「この犬はあと3日で殺処分センターに送られる運命です」というような文章が続く場合は要注意だそうだ。
もちろんホンモノもいる。たとえばルーマニアのある女性。殺処分まであと1日という犬たちをピックアップして、ドイツの動物ホームに送り込むのだ。ドイツの動物ホームからOKの返事が来れば、待機していた人が即、殺処分所に走る。犬に予防接種をして、書類を作成したらドイツに運ぶ。
つまり、見分けるのは本当に難しい。だからこそ、実際に関与している人たちとコンタクトを取って通信し続けることは必要だ。ホンモノであればどんな小さな質問にも答えてくれ、寄付金の行方や獣医師の領収書なども嫌がらずに見せてくれるはずなのだ。
ドイツ国外の動物愛護団体であれば、パンフレットの類を請求してみる。団体と称しているからには何らかの手引きのようなものぐらいはあるはずだ。そこを運営している人たちと知り合うのも手である。
写真の犬が実際にはどのホームにいるのか尋ねる。犬猫をドイツに送り出す活動をしている場合は、普通、受け取り先であるドイツの動物愛護団体と協力しているはずなので調べ易い。返事を読んだときの「第一印象と勘はかなり当てになる」そうだ。例のポインター犬の写真を見てピンと来たLさんの例があるように。

「犬は動物ホームから!」と新聞も訴える

動物に寛大な国々から集めた寄付金が子犬を売りさばくために使われ、個人の金儲けにされていては元も子もない。そのような事態を防ぐには、法律と、犬を飼う(買う)側のモラルに頼るほかないが、ニセ動物愛護家が何とかして法律の抜け道を探し当てて金儲けを続けることが避けられない現実だとしたら、後は国民の民度の高低が決め手となるだろう。

先日の新聞に掲載されていた警告は次の通り。

子犬を買いたい、と思っている人たちへ:

●動物ホームに行ってください。お目当ての犬が見つからなかったとしてもあきらめずに係員に相談しましょう。
●新聞や雑誌の「売ります」の欄や、インターネットの販売広告では買わないで。特に「流行犬種を格安で販売」のような広告を信じてはなりません。まじめな繁殖家が子犬の安売りなどするはずがないのですから。
●路上で買ってはなりません。
(注:私はドイツの街で犬を売る人を一度も見たことがないし、そのような話を聞いたこともないのだが……。)
●ペットショップで買ってはなりません。(注:以前この欄で書いたように、2012年1月、北ドイツのドゥイスブルク市のある大型ペットショップが「子犬を店頭販売しない」というドイツのタブーを破り、子犬を売り始めて、ドイツ中の動物愛護団体は依然として抗議をしている。不幸中の幸い、マネする店は出現しなかった。)
●犬猫の斡旋において変だと思うことがあったら、警察か獣医局かボン市にあるドイツ動物愛護団体の支部(電話:0228-604960)に通告してください。

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