フォスターファミリー体験記 – Beni(2)

フォスターファミリー体験記 – Beni(2)

OFOSAにBeniを連れてやってきた飼い主Rebeccaは、Beniを返したい理由についてこう答えました。「散歩中にBeniが出会った人に吠えたのでそれを止めようとしてBeniに吠えた先住犬Reilly(60ポンドのラブラドールミックス)に向かってBeniがアタックし、2匹が喧嘩になり、止めようとして自分が噛まれてしまった。この分だとそのうちReillyがBeniを傷つけてしまいそうで怖い。」と。2匹はいつもは仲良く遊んでいるのに、散歩中にBeniが人間や犬を見つけると興奮してAggressiveになってしまい、自分ではコントロールできないということでした。でも返されたあとどうなってしまうのかを考えると不安でなかなか決断ができなかったそうです。私が再びフォスターするから大丈夫と言ってあげると、涙ながらにこうするのは自分の本望ではなく、Beniを手放すのは悲しいけど、よろしくお願いしますと繰り返していました。 Beniは私のことを覚えていて、すぐにそばに寄って来ました。そして私のジーンズの上に大量の水を嘔吐してしまいました。Rebeccaは「ああ、車酔いのせいだわ。ごめんなさい。」と言いましたが、それよりもBeniはOFOSAのオフィス内での皆の注目の中で、耐えられないほどのストレスを感じていたのです。幸いうちの仔たちとはずっと我が家にいたようにすぐにパックに戻ることができました。


Beniが返されてきたのは、私にもこの飼い主さんを見る目がなかったことを否めません。多頭飼いの場合、犬同士のハーモニーを保つことはある部分人間の役目だと思っています。「犬のことは犬同士に任せればいい」という人もたくさんいますが、人間が犬の順位(我が家では大きさ、性別に関係なくうちの犬になった順)をきちんと犬達に伝えることで、後から来た犬が先住犬に一目置くようになります。犬を増やす場合には、先住犬にとってプラスになるものでなくてはならないというのが私の持論です。新しい犬がやってきたことにより、先住犬がストレスを感じるような状況はできるだけ避けなければならないと思っています。

そんなわけで、飼い主と一緒のベッドで寝て、散歩のときにも伸縮自在のリードで好きなように振舞っていたBeniは、飼い主のことも、先住犬のRileyに対しても、リーダーや先輩としての敬意をもたずに甘やかされて帰ってきました。 我が家では、いろいろなルールができあがっており、うちの3匹はフォスター犬に決して付け上がらせるようなことはしないので、Beniもまもなく自分の位置を理解してくれました。猫たちに対しては、半分恐れからか、あるいは嫉妬からか、ときどき挑戦的な態度を取ったので、それは厳しく叱り、ここではそのような行為は絶対に許されていないことを伝えました。そのうち犬4匹猫2匹のハーモニーができあがり、目を離していても安心できるようになりましたが、この時点では、留守中はBeniを洗濯室に隔離せざるを得ない状態でした。その大きな理由は、彼女はまだトイレトレーニングが不完全だったからです。夜の間クレートに入れられるのが大嫌いで、毎朝クレートの中がオシッコだらけでした。そしてクレートのドアを何度も食いちぎられました。洗濯室に閉じ込めて部屋から出ようとすると私のジーンズや、袖口に噛みついて離さないのです。強く噛みすぎて服に穴があいたり、肢や腕に痣ができることが何度もありました。そして洗濯室の上半分開いたドア(上下別々に閉められるようにできている)の前でオシッコし、その中でジャンプを繰り返すため、いつも体中オシッコだらけになっていました。また彼女のオシッコは特別黄色く、ベタベタしていて、普通の尿とは違った匂いもありました。会社から帰って洗濯室を見るたび、毎日私は泣きたくなるような気持ちでした。「クレート内での排泄といい、この仔は自分のオシッコの匂いを身体につけることで安心するのだろうか」と思ってしまうほどでした。正直言ってBeniの異常な行動や、いつでも身体中を硬直させてリラックスできない精神状態は、もしかしたら彼女に先天的な脳の異常があるのではないかとさえ思えました。今までに怖がりのパピーは何匹もフォスターしましたが、ほとんどが単純に社会化が遅れていたことが原因で、その仔のペースで時間をかけることと、うちの仔たちと私達人間との関係を目の当たりにすることで解決できてきました。でもBeniの不安からくるAggressionはコントロールが難しく、すでに飼い主を噛んでしまっているために、「アダプションには向かない危険な犬」というレッテルが貼られてしまっています。 OFOSAでは安楽死も選択肢に入れていました。うちのかかりつけの獣医さんにもBeniを連れて相談にいきましたが、そこでも安楽死を薦められました。私が引き取らないということは、Beniが安楽死に一歩近づいてしまうことです。別の人にもう一度噛み付いたらおそらくそれで決断されてしまうでしょう。私にはそれを許すことができませんでした。たとえ1年かかっても、やるだけのことはやってみようと決心したのです。



 
そんなわけでBeniの大きな課題は、返されてきた理由でもある散歩中のAggression。これは前回うちにいたときから散歩中に人を見かけると吠えることがあったので、そういうときには「Watch me!」と言って、自分のほうに注目させてトリートをあげて、さっさと通り過ぎるようにしてください。とお願いしてあったのですが、以前よりずっと過激に反応するようになってしまっていました。実はそれに気づかされたのは、私の足にBeniが噛み付いてしまってからでした。主人とうちの3匹を連れ近くの森に散歩に行ったとき、向こうからベビーカーと犬を一匹連れたカップルがやってきました。Beniが吠えて興奮することは聞いていたので、私はBeniをなるべく近づけまいとしてリードで私の脇に誘導し、「Watch me!」とコマンドをかけました。ところがBeniは狂ったように、そのグループに向かって飛びかかろうとし、吠えまくり、リードに噛み付き、すぐ横にあった私の脚にも噛み付いてしまったのです。幸いジーンズの上からだったので、小さな噛み傷と痣ですみましたが、素足だったらもちろんひどい出血をしていたことでしょう。そしてBeniはわずか20ポンドの大きさだったので大事にいたりませんでしたが、これが60ポンド以上の大型犬だったらどんなだったかと思うとことの重大さを認識せずにはいられませんでした。もう一つは、車に乗ることに対して、異常なほど不安になることでした。車の振動から来る車酔いからだけではなく、どこに連れて行かれるのか分からない不安、あるいは“車”といった限られた空間に閉じ込められることへの不安。おそらくそれらすべてが彼女を不安に陥れ、乗る前から泡を口角からブクブクと噴出し、運転中は滝のようなヨダレをたらし、目的地について車を降りるや否や嘔吐を繰り返しました。この嘔吐は帰宅してからも数時間、数回にわたって繰り返されるのです。もちろん食欲はゼロ。ですから車に乗せる日には、相当な覚悟が必要でした。不安を緩和するベストを着せてみたり、頭からすっぽりブランケットで包んでみたり、車酔いの薬を事前に飲ませたりしましたが、効果は見られませんでした。




とうとう1月半ば、獣医さんに相談し、Prozacという抗うつ剤を飲ませ始めました。薬の効果が現れるまで数週間かかると言われたので、その間に私のできるトレーニングも合わせてすることにしました。

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