家庭犬としての猟犬


家庭犬としての猟犬

ある猟犬の飼い主さんから、ご相談がありました。
猟犬は犬本来の素晴らしい能力を発揮し、獲物を追いつめとらえ、パートナーと共に共同作業で捕獲します。
しかし、一歩間違ったら、どんな動物も獲物になってしまうことがあります。追っても良い獲物、追ってはならない動物を教えることは、パートナーである人、猟犬の飼い主さんの責任です。
(LIVING WITH DOGS)


(相談者) はじめまして。今猟期もご活躍のことと思いますが、いかがですか?

(LIVING WITH DOGS) 残念ながら、LIVING-WITH-DOGSは猟をしていないんですよ。
しかし、猟における犬のすばらしさは認めざるを得ません。

(相談者) さて、私も大物猟をしておりますが、今回メールさせてもらったのは、先日、父の猟犬2頭をつないでいたリードが解け近所の飼い犬をかみ殺してしまいました。その時、その家の人も近所の人も見ていたらしく、止めようとしても怖くて止められなかったようです。
その飼い主とは、話しは着いたのですが、近所の人からの苦情が相次いでいます。「人を襲うから放すな」「家から出られん」とか・・・
私は、「気を付ける」というしかないのですが、「でもたまたま放れて犬同士ケンカした結果では?」と言うと「犬を飼っていない者は、怖いや!」とか犬を飼っていない人ばかりの苦情です。
これからどうすれば良いでしょうか? 父も反省していますし、苦情を言って来た人には「犬がいなかったらイノシシの駆除できんで」と言うとなにも言いません。感覚のちがいなんでしょうか?
私は、ノーリードの犬を見ても何も思いませんし、犬が吠えても吠えてらとしか思いません。もしかして私の感覚がおかしいのでしょうか?
ご意見をお聞かせください。よろしくお願いします。

(LIVING WITH DOGS) 猟犬と言うだけで、一般の犬嫌いの方々にとっては、やはり恐怖があると思います。猟犬でなくても、オフリードの犬を見るだけで、怖そうにする方もいますので。リード付きでお散歩していても怖がる人もおります。
ただ猟犬は、素晴らしい本能を家庭犬よりも特化させています。お父様の猟犬たちは、家庭犬としてのしつけをされているでしょうか?

(相談者) 一応、家庭犬ですので、しつけはしています。やはり多くの犬とふれあう機会が、少ないのがケンカになる原因でしょうか? 近所で犬を飼っている人達もよその犬のそばを通ったり、一緒に散歩したりするのは、敬遠しているようです。

(LIVING WITH DOGS) 猟犬も家庭犬と同じなんですね。普段は家庭犬としてしつけることも必要なことです。どんな人どんな犬にも接することが出来る。猟犬も可能なんです。
どういう訳か、日本では猟犬は、その本能を重視しようとして、家庭犬と同様のしつけを行わない飼い主さんも多いんですね。
ご相談者の犬たちのしつけのレベルがどれくらいかはお会いしていないので判断できませんが。
犬はしつけや、猟以外の訓練を行っても猟犬として働けるんですね。
猟犬の飼い主さんで、当LIVING-WITH-DOGSに掲載しています「ゴッドマンの戦死」「狩猟について語る(猟の本随)」を書かれたEさんに、ご意見を伺いました。
Eさんは猟犬と家の中で一緒に暮らし、養護ホームへの訪問活動も猟犬を伴って行っています。
またアメリカやヨーロッパの猟犬は、家の中で暮らしています。いざ猟期となると犬たちは、お仕事と張り切ります。

(Eさん) 猟犬を逸走させて、 他人の財産を毀損したという事実は、 絶対的に悪であります。 言いのがれも出来ませんし、そのような行動をとるように犬たちを育ててしまったということは、犬飼いとしては大いに反省しなければならないと考えます。
猟犬だからといって、 人や家畜を襲ったり、 獲物でない犬や猫を咬んだりすることが仕方の無いことだとは思いません。
襲うべき相手と襲ってはいけない相手は教育可能なはずです。
私は自分の犬には必ず牛小屋、豚小屋、鶏小屋でこれは獲物ではないということを教育しますし、 猫もさわってはいけない、他の犬には不用意に近づかないようにということを日頃の生活の中で教えています。
家畜を襲わないようにいって聞かせて、それを守らせても、猪はちゃんと獲れるものです。
私としては、 本当に悪かった、 二度とこのようなことを起こさないようにしようと決意し、ご近所にも犬たちを受け入れてもらおうと思うならば、実際に再発防止の対策を目に見える形で実行し、それを説明、もしくはアピール(あまりどぎつくやると逆効果ですので、スマートにやらなければなりません) していく必要があると思います。
例えば目に見える内容としては犬舎を改善して逃亡逸走を完全に防止できるようにして、犬の運動も完璧にリードをつけておこなうようにするとか、目に見えないけれどももっと大切な内容としては、犬たちの再教育を手前味噌の独り善がりの方法でなく ちゃんと実施するとか が必要でしょう。
特に犬たちの再教育(実現可能かどうかは年齢とか犬たちの種類、キャラクターによって異なりますので判りませんが) は、現実に飼い犬をかみ殺した経験値が今までの記憶に加算されていますので、この犬たちを猟野で放した場合に、里で鳴いた飼い犬を、殺しに降りていくような犬になっている可能性がありますから、絶対に必要なことだと考えられます。猪の生息地は意外と里に近くて人家があるものです。
私の見聞きした範囲でも里の犬をかみ殺す癖が直らなくて処分された猟犬がけっこういます。
それと、 犬を飼っていないからこそいろいろな不安が生じるのです。
また他人の犬だからこそ、その気性に不安を感じるのです。ノーリードの犬を見て不安を感じるのは、 今の日本の現状では、残念ながらあたりまえですし、犬が吠えて、 その理由がわからない、あるいは適当でない場合はやはりよろしくないことだと私は考えます。
他人の心配を思いやる心も人間としては必要だと思います。地域に受け入れられなければ不幸な存在になってしまうのは人だけではありません、犬たちもそうなのです。
犬飼いは、不必要に卑屈になることも無いかもしれませんが、 やはり、犬を飼ってない人が 自分たちをどういう風に見ているのかということを意識して、 自分たちの愛する犬たちがもっと社会に受け入れてもらえるように努力しなければならないと思いますがいかがでしょうか?
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(相談者) ありがとうございました。再度、しつけ等を検討して実行したいと思います。

(LIVING WITH DOGS) お宅の犬たちが社会に受け入れてもらえる様、心からお祈りしています。
犬たちの再教育かなり大変だと思いますが、是非頑張って下さいませ。猟犬が怖いものではないことを周りの方に理解していただくには、猟犬の飼い主さんの努力が必須と思います。

(2001/12/17)(相談者の方より)

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