猟犬を考える(4)
猟犬を考える(4)
■この禁猟の基礎的な部分は何でしょうか?
環境省の報道発表には、狩猟鳥獣の保護繁殖のため必要と認めるときは、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律第1条ノ5第3項の規定に基づき、狩猟鳥獣の種類、区域、期間又は猟法を定めその捕獲を禁止又は制限することができることとされています。
■イノシシの保護の為なのか?
農業従事者はイノシシによる被害を受けています。イノシシが大変な被害をもたらしています。なけなしの畑で育てたジャガイモやサツマイモが、たった一晩で全滅してしまう。農業従事者にとってイノシシは害獣でしかありません。
LIVING-WITH-DOGSの「狩猟について語る(猟の本随)」
この作者の愛犬ゴッドマン二世は、家庭犬としてアニマル・アシステッド・アクテビティー(老人ホーム/幼稚園などへの訪問でのセラピー活動)を行い、かつ、猟犬として、猪猟に伴っています。しっかり訓練された猟犬は、猟場に行けば優秀な狩りの名手となり、普段は決して人や動物を追うようなことはしないのです。
2002年3月29日の訪問、ゴッドマンのセラピー活動。 この犬が猪を咬んだり、命令で襲撃を実行するとは誰も想像だにしていません。 でも、良い犬にはその使い分けができるのです。 | |
2002年5月24日、市内の幼稚園の訪問を行ないました。ゴッドマンは甲高い声の子供たちにも落ち着いて優しく接していました。この体験が子供たちの豊かな人生につながることを願うものです。 | |
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(LIVING WITH DOGS) |
「(1)狩猟鳥獣の捕獲を禁止する猟法を追加すること」に対する意見
http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3376
[該当個所]
犬に咬みつかせて捕獲する方法又は犬に咬みつかせて狩猟鳥獣の動きを止め若しくは鈍らせ、法定猟具を使用する方法以外の方法により捕獲する方法を禁止する。
[意見内容]
犬に動物を咬みつかせて即座にこれを殺して自己の支配下におくとか、あるいは犬に咬みつかせて狩猟鳥獣の動きを止めもしくは鈍らせ、槍やナイフのような法定猟具外の道具によりこれを捕獲する方法を禁止することに反対します。
[理由]
1. この方法は、特に猪猟においてはどんな犬を猟に使っても犬と猪の強さのバランスが、犬のほうが圧倒的に強い方に傾けば必ず生じるものであります。 したがって仮にアメリカン・ピットブルテリアやドゴ・アルヘンティーノ、 スタッフォードシャー・ブルテリアといったいわゆる咬み犬を使わない場合でも、すなわち日本犬やその雑種、ビーグルやプロットハウンド、ブルーティックハウンドやウォーカーハウンドのような犬種を使用する場合でも猪が弱い場合には犬が咬みついて、殺すかその動きを止めてしまい、 銃を使うまでもなく猟刀で刺して獲るということになってしまいます。また私が使用しているドゴ・アルヘンティーノやスタッフォードシャー・ブルテリアはどんな強い猪でもいきなり咬みにはいるかといえばそうではなく、 強い猪に対しては吠えや絡みで上手に逃走を阻み、 私が現場に寄り付いて銃で撃つまで粘ってくれます。
したがって単に使用する犬種を制限しても済む問題ではなく、猟犬に獲物を咬むなといえば犬を使った銃猟が成り立たなくなってしまうのであります。 猟犬はどんな猟犬でもポインターやセターのような鳥猟犬でも、まさに獲物に咬みついてそれを制圧したいがために獲物を追うものであるからです。 仮にポインターやセターのような鳥犬が、ポイント中に主人の来るのを待ちきれずに雉やコジュケイを咥えてしまった場合にでもその主人を法律違反で検挙することが正しいことなのでしょうか?
2. 改正理由にある「近年、犬にイノシシ等を咬ませて、死に至らせるなど直ちに自己の支配内に入れるか、あるいは動きを止め若しくは鈍らせた上で刀剣、槍状の刃物等法定猟具以外の猟具で捕獲する事例が増加している」 という事例の具体的な数は一体何例あるのでしょうか?言わせてもらえれば、このような犬に咬みつかせて猪を獲る方法は非常に非効率的であり、 仮に猪の保存育成に環境省が本気で取り組むつもりならば、最近異常に流行っている檻、もしくは箱罠による捕獲の方が猪の繁殖に甚大な影響を及ぼしているものであります。
すなわち箱罠による捕獲ではまだ小さな子供の猪が大量に一度に捕獲されてしまいます。 1台の箱罠で一年に40頭獲った50頭獲ったという自慢話は、銃砲店のギャラリーでよく聞く話であります。しかも箱罠は簡単にしかも比較的安価に通販で購入できるため、農家など地方に居住する人たちが自己の所有する山林農地にたくさん設置しており、その全部が必ずしも甲種狩猟免許を取得しているわけではないと聞き及ぶにいたっては、あなた方環境省の怠慢は私たちのように「鳥獣保護及び狩猟に関する法律」を守りながら愛犬と共に汗をかきつつ、世間に迷惑をかけないように気を使いながら、山入訓練や実猟にいそしみ、ささやかに自己の楽しみを享受するものにとって許せないものに感じるものであります。
さらに 「こうした捕獲は、法定猟具を使用しないため狩猟免許、狩猟者登録などによる狩猟管理の対象ではなく、自由に捕獲等を行えることから、これをこのまま放置すれば、狩猟鳥獣の保護繁殖上重大な支障が生じるおそれが高く、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の目的達成が著しく困難になると考えられるため。」 という理由については、 たしかに自由猟具を使用する鳥獣の捕獲行為は、単に石つぶてを投げる行為であっても免許の取得対象にならないので一見野放図に見えるかもしれませんが、鳥獣保護及び狩猟に関する法律の解釈に従えば、 狩猟鳥獣の捕獲は、単に素手で捕まえる場合であっても、その時期、捕獲対象、捕獲定数に至るまでこと細かに規制されるべき内容であります。すなわち狩猟管理のまさに対象であります。これは私どもより当該法律の専門家であるあなた方の方がより詳しく御存知のことと心得ていますが、であるならば、そのことをより徹底して一般に周知させることの方が、先ではないのでしょうか?
狩猟期間外に、あるいは狩猟期中であっても鳥獣保護区内で犬を使って猪を咬ませて違法に捕獲する行為が昨年度に何例あって、その取締りにどれだけの人員や経費を要したか? そのために猪の生息にどれだけの影響が出ているのか? 箱罠の影響との比較はどれだけのものか?
具体的に数字によって広く一般に納得できる根拠を示さずして今回のような法の改悪を断行することは私としては到底容認できないものであります。
またこのような犬の本質を無視した禁止事項を作ることによって、順法精神にとんだ善良な狩猟家が結果として罪に問われてしまうことになれば、「鳥獣保護及び狩猟に関する法律」は稀代の悪法となってしまうのではないでしょうか?
[付記]
私は獣医師であり、愛犬家であり、犬の訓練愛好家であり、狩猟家でありますが、従来から猟犬の規制のあまりにも緩やかで野放図なことには深く心を痛めてきたものであります。すなわち、 猟期中のあるいは非猟期中の山野における猟犬による人への咬傷事件、 家畜への傷害殺傷事件、気に入らない猟犬の遺棄事件などあまりにもひどい実態に何とかしなければと考えてきたものです。
このたび環境省が犬による狩猟鳥獣への咬みつき行為に着目されたのは、ある意味では猟犬の使用者の不徳の致すところであり、猟犬使用者全体が深く反省しなければならないことであります。
そこで、私案ながらに提案があります。 すなわち猟犬の育成管理、 使用に対して法の規制をかけるというものであります。
どういうことかと申しますと、 猟犬を猟具のひとつとして認め、 それを山野に放すについては、猟犬の訓練や環境馴致について一定の基準を設けて合格した犬のみを許可するということであります。
具体的には、鳥猟犬、獣猟犬それぞれに使用する人とのペアで基本的服従訓練(招呼、停座、伏臥、脚側行進、待機)を遂行する訓練が入っていること、及び人や家畜などに対する社会化が行なわれていて、対象とする狩猟鳥獣以外にはいたずらに攻撃性を示さずにいることができ、決して事故を起こさないことを担保させるために一定の基準による認定試験を実施して、合格犬には認定証を交付して狩猟家に携帯を義務付けると共に、はたからそれと判別容易な首輪を支給して装着を義務付けさせます。同時に当該犬にマイクロチップの挿入を実施させて、犬の勝手な差し替えを不可能として、これらの要件を満たした犬のみを実際に猟犬として山野に放すことができるようにしたならば、今までに後を絶たなかった猟犬による不祥事や事故は皆無になることでしょう。
また猟犬の飼育管理に関して具体的な施設基準、管理基準を規定して、担当職員による適切な立ち入り調査と取り締まりをできる旨規定することにより、猟銃同様猟犬もその管理について適正化が図れることとなり、不適当な猟犬飼育者を排除でき、猟犬飼育者の近隣における環境の更なる改善が期待され、ひいては猟犬に対する一般国民の理解が向上し、 環境省の仕事に対して国民の理解が得られやすくなるのではないでしょうか?
狩猟を取り締まる警察官あるいは地方自治体職員にマイクロチップの読み取り機(定価3万円と安いものです) を携帯させれば、現場で容易に取締りが可能でありますし、マイクロチップを猟犬に入れることで安易な猟犬の捨て犬は完璧に消失するでしょう。
本当に犬が好きで犬と共に狩猟を楽しむ紳士的な狩猟家ならばこのような規制でもむしろ喜んで受け入れてくれると思います。 逆に犬を扱う能力も無く、順法精神にも欠ける悪質なハンターを締め出すには非常に有効な方法ですし、忙しくて犬の訓練に時間をとれない狩猟家には、その猟犬を訓練してくれるトレーナーが必要になるので、新たなるサービス業を生み出す内需拡大の良い機会になるのではないでしょうか?
猟犬の訓練を職業的に行なっている人たちはすでにそこそこ存在していますし、更なる服従訓練のプロは家庭犬や警察犬の訓練士がそれこそ多数営業しています。認定審査員の育成もそのような人たちを起用すればそう難しくないと思います。
犬は適切に教育を施せば一般に思われているほど馬鹿な生き物ではありません。実際に猟犬として活躍しながら老人ホームや幼稚園へのセラピー活動にも使用でき、基本の服従訓練も完璧にこなすことのできる実例犬は私のホームページを覗いていただきますれば存在することはご理解いただけると思いますし、実際にお見せすることも可能であります。
この機会に御一考をお願いするとともに、国民生活の向上と安全、及び自然環境の保全における環境省の更なるご活躍に期待してこの稿を終えるものであります。
(2002/06/19)( 兵庫県 T.Eさん Working & Hunting Dogs Page )