動物孤児院 (28)殺処分のない日本に生まれてハッピー
「殺処分のない日本に生まれてハッピー」
2099年6月2日
アニマルポリス 牛野幹穂の日記
午前9時
アニマルポリス・ステーションで、犬舎の見回りをしていると、緊急電話が入った。「横田町の○○番地にある一軒屋で、犬が数頭虐待されていると思う」という情報あり。
もとプロレスラーの戸田さんと車でかけつける。(戸田さんはアニマルポリスになって25年の超ベテラン。大きな体で、愛犬はチワワ!)
さて、「虐待なんかしてないです」と、その家の男は主張したが、犬3頭はフンまみれで、日の当たらない小屋につなぎっぱなしのもよう。犬たち、クル病にかかっているみたいだ。こんな例は非常にまれで、私がアニマルポリスとして働き始めてから、2度しかなかった。(しかし、100年前は、しょっちゅうあったそうだ。それでも、行政は何もすることができなかったらしい)
すぐに犬たち(ラブラドルレトリバー)を保護。男に飼い主になる資格はないと判断。本部に連絡した。繁殖して売るためにこっそり飼っていたらしい。繁殖は、許可制だが、手続きをとったとしても、この男の場合、衛生管理とスペースの欠如で、不許可になっていただろうし、本人もその理由で、こっそり飼って金儲けをと思ったようだ。(罰金最低2000万円 8年の服役中は、犬小屋掃除が義務となるだろう)。100年前にドイツでは、憲法で、動物の虐待を禁止したそうだ。日本でも70年前から憲法の条文にある。
さて、犬たちは、獣医の健康診断を受けさせた後、リハビリセンターに送った。半年後には里親探しが開始するだろう。最近は、里親探しも、テレビ局が全面的に協力してくれるおかげで、ほぼ100%で新しい飼い主がみつかる。
すばらしいシステムだ。新聞も協力してくれるし、いい世の中になった!
午後3時
飼い主が交通事故で急死したため、「孤児」になったグレートデンが連れてこられた。(昔の日本だったら、きっと殺処分されていただろうなあ・・・)
ところで、大型犬は、20年前から、許可制になっていて、飼い主になりたい人は、面接とテストを受けなければならない。あまりにも安易に、みかけだけで、このような超大型の犬を飼い、途中で捨てる人が多かったという過去も、これで改善された。
大きな犬を飼うには、とくに、心の準備と覚悟が必要である。経済的に飼えるかどうかも、証明しなければならない。これは、日本のような、高度な自由国家で、人間と動物たちが、平和に暮らしていくための基本的なルールであって、決して個人の自由を脅かすものではなく、これも過去に学んだ結果である。
このグレートデンは、ちょうど同じ種類の犬を亡くして、また新しく飼いたい、と登録していたファミリーがあったので、すぐ電話をした。ファミリーがとんで来た。犬と面接。犬との相性もよさそうだ。めでたし、めでたし。
夜は、日本の動物保護、愛護がどのような過去をたどってきたかの、映画を観た。昔は、動物管理センターという名の、殺処分をする場所が至るところにあったそうで、ショックを受けた。映画を観ていた人はみんな泣いていた。殺処分がない日本に生まれた私は幸せだ。これからも、愛する犬たちを守っていきたい。