動物孤児院 (29)南イタリアで「増やすな」活動をするドイツ人獣医
南イタリアで「増やすな」活動をするドイツ人獣医
バカンスの時期が来て、イタリアや南フランス、ポルトガルやスペインなどへ行く道はすごい渋滞だし、空港も日本の盆正月なみの混雑です。また、欧州のこれら「南国」では、さぞかし犬が捨てられているのだろうと思うと、心が重いです。南欧の人たちは(もちろん全員ではないから誤解しないでほしい。傾向として、という意味だから)、あまり深く考えないみたいなのです。さあ、バカンスに行こう。え、犬? それがどーした? という感じなんだと思う。犬をほったらかしにして自分たちは車にテントやフライパンを積み込んで出発しても、それがどーした? 何か悪いことしてる? の程度。
EUでは基本的に人間のパスポートの検査はもうないけど、犬のパスポート(つまり接種証明)はチェックされることがあるんです。EUとはいっても、各国微妙に接種内容が異なることに注意。そして、そこまで深く考えて準備をしなかった人たちは、「あっ、そうだったのぉ」という感じで(?)、そのへんに犬を放して立ち去ってしまうらしいですが、もちろんそういう人はそれほど多くはないでしょう。でも何万人、何十万人が通過するチェックポイントで、10人が捨てていったら、10頭の犬が宿無しになって放浪することになる・・・。10頭がたむろしていたら、かなり目立ちます。話題にもなって、遠く日本にまで聞こえ、「ヨーロッパ人は、バカンスが始まると、犬を捨てる」というタイトルができあがるってわけでしょうねえ。
世の中には深く考えずに簡単に犬を置きっぱなしにする人が多いから困ります! そこで、彼らより深く考える人たちが、深く考えない人たちの浅はかな行為の後始末をすることになる・・・。
先日テレビの、(舌をかまないでくださいよ)「ティエレ・ズーヘン・アイン・ツーハウゼ(直訳:動物たちが新しい家を探しています)」という番組で、南イタリアでクリニックを開いているドイツ人獣医が紹介されました。ドロテア・フリッツという女性です。ところで、この番組は、新しい飼い主探しの番組で、1時間、次々に犬、猫、モルモット、うさぎ、ちんちらとかが紹介されます。メインは犬猫です。そして、10分おきに、新しい飼い主のもとでハッピーになった犬猫たちが紹介されて、見ている人の心もあったかああくなるという計算。苦しい辛い話ばかり見せたら視聴率が低くなるだろうし、ハッピーになった犬猫たちを見て、「やろうぜ、協力しようぜ、寄付しようぜ」の気持ちがまたまた起こるっていうわけ。もちろん、「ルーマニアではこうです」っていう超暗い話も出てきて、それはそれなりに、「やろうぜ、協力しようぜ、寄付しよう、大金持ちになって、ルーマニアの犬を全部救おう」っていう気持ちになるけど。
ドロテア・フリッツさんのどこがすごくて、わざわざここに紹介するかというと、村々をまわり(イタリア人たちの協力を得て。良心あるイタリア人の名誉を守るために付け加えておきますね!)、無料で避妊去勢手術をしているのです。
イタリアの動物愛護精神は低く、とくに田舎では短い鎖につないで散歩もさせず、水も与えないで「虐待」する人たちが多いそうで、人々はそれを「虐待」と思っていないので、そこが問題なのですよね。
彼女は、そういう人たちにアドバイスしたり、放し飼いや放浪犬を集めては、乗ってきたバンで避妊去勢手術をする。バンには、手術用の器具一式が詰まれています。巡回手術室というわけ。そして、避妊去勢された犬たちを再び放します。すべて無料というのが、すごい。
私の周囲にいる犬好きな人たち(ドイツ人)は、バカンス先で動物孤児院を訪ねて、お金を少し寄付するという人が多いです。「でも、どこにあるかわからないじゃん?」と思われるかたは、通訳の人に聞いてください。調べてもらえばすぐにわかることだから。ほら、あなたがミラノで買った○○○社のハンドバッグの1%でいいんです。「日本人って、なんてすてきな人たちなんだろう! おしゃれで、やさしくて、寛大で!」と、日本人の株を上げましょうよ!!!
興味があったら、www.tieresucheneinzuhause.de をごらんください。飼い主を探しているわんにゃんが見られます。ドイツ語ヴァージョンと英語ヴァージョンがありまして、上が英語。下がドイツ語。英語のほうは、ほとんど情報が入っていないので、下のドイツ語のほうを見てみましょう。