マルコ・ブルーノさん訪問記

マルコ・ブルーノさん訪問記


この東京で捨て犬や、山犬の保護をされているマルコさんにやっとお会いすることが出来ました。マルコさんは来日し35年、作詞作曲のお仕事の傍ら、お住まいとした足立区で放浪する犬達、繋ぎっぱなしの飼い犬、そして捨てられる犬の現状を憂い、保護活動・啓蒙活動を一人で始められました。
本日はマルコさんに、LIVING-WITH-DOGSとしても最も大きな命題「日本の犬達を取り巻く社会」、についてお話を伺ってみました。


LIVING-WITH-DOGS: 日本人の犬に対する考え方は欧米に比べてかなり遅れていると言われていますが、日本の犬に対する日本人の意識を変えるにはどうしたら良いでしょうか?

マルコさん: 日本の教育のあり方が問題でしょう。子供の頃から体験的に動物と暮らすような教育現場がないと言うことです。たとえ、今、教育方法を変えたとしても、その効果は30年後にやっと現れると思われます。それと、多くの日本人の頭の中にある、犬は外、汚い、繋いで飼うという固定観念は、犬は中、人と一緒に家の中で暮らすことを始めない限り変わらないと思います。一緒に暮らして動物を慈しむことを覚え、命の大切さを知るんです。家の中で一緒に暮らすことを親が行なっていれば、子供も家の中で犬と共に暮らす、と言うことがごく自然になるということです。

LIVING-WITH-DOGS: LIVING-WITH-DOGSも家の中で犬と一緒に暮らすことで本当の家族になれると言い続けておりますが、例えば北方犬種の犬など、暑い家の中で暮らすことは犬にとって可哀想ではないでしょうか?
まれにシベリアンハスキーと暮らしている方は、家の中でコートを着て愛犬の適正温度を保っているような飼い主さんもいらっしゃいます。

マルコさん: うちにもハスキーが2頭いました。その子達はこの暖房の効いた家の中で一緒に暮らしていました。犬は慣れるんです。また部屋の中で犬は一番快適な場所を見付けるのがうまいです。だから気にせず家の中で暮らすことです。夏場はうちの犬達はお風呂場のタイルの上で寝てます。

LIVING-WITH-DOGS: マルコさんの「動物愛護支援の会」で里親さん募集の条件は?

マルコさん: 犬を欲しい方の話を聞き、我が家に来て貰います。希望者が以前犬を飼っていた場合その飼い方を聞き、どのように犬の面倒を見ていたかを確認します。
しかしその場では絶対に渡しません。なぜならば、その希望者のお宅に出向き、家族構成、誰が中心となって面倒を見るか、等を実際に拝見してから里親を決定させていただきます。またその条件の中では、家の中で一緒に暮らすことは一番の条件です。
もし、条件に反する里親がいる場合、犬は返して貰います。

LIVING-WITH-DOGS: 捨てられる犬は何故減らないのでしょうか?

マルコさん: 捨てられる犬達が多いということは、犬の流通に大きな問題があります。生体展示販売のペットショップなどで簡単に手にはいるから、簡単に手放してしまうということもあります。繁殖屋・ブリーダーが売れ筋の犬種をどんどん産ませるという点も問題です。
まずは蛇口を閉め、犬が簡単に手に入らなくなるようにしなければならないと思います。ペットショップで生体が販売されなくなれば確実に減って行くでしょう。山梨の犬捨て場に月に何回か行きます。その度に何頭も保護して連れて帰りますが、また行くと頭数が変わらない。その場にいる人にこの犬はいつどうやってきたのか?と聞いても「知らん!」です。とにかくいくら保護しても減っていかないんです。まずは捨てられる犬が減ってくれば、保護と言う名の元にも殺さずに本来の保護が出来るのです。

LIVING-WITH-DOGS: 日本の動物管理法は英国のエリザベス女王が来日するのであわてて作ったという話がマルコさんの著書にありましたが、動物愛護法に改正され施行されています。

マルコさん: この改正した動物愛護法は、動物愛護を目的としているより、人間の都合からのものになっています。未だに日本は、犬は”物”ですが、この条文にやっと「命あるもの」と明文化されました。しかしこの点だけでは、日本はペット後進国のままでしょう。5年後に見直すと言ってますが、5年後に見直すのでは遅すぎます。今から準備しないといけないでしょう。
欧米の動物保護法を見本にし、日本に当てはめてまずは可能な限り、本来の動物を保護する法を作り直さなければ動物の命を尊重した動物愛護先進国にはなれないでしょう。

LIVING-WITH-DOGS: さて近ごろ、ボランティアの活動が良く聞かれますが、マルコさんの著書に日本の動物ボランティア界の中で、まともな人間を探すのは、砂浜に落ちた10円玉を探すより大変とお書きになっています。マルコさんはボランティアについてどのようにお考えでしょうか?

マルコさん: ボランティアというのは社会的な問題があるから、誰かがやらなければならないことなんです。だから当然大変な事なんです。個人に犠牲が伴うのは当たり前のことなのです。
日本人はボランティアとは何であるかを知らない。勘違いしている人が多いです。動物保護のパーティーに毛皮を着ていく人もいるんですから。
・社会に注目されたいためにボランティア活動を行っている目立ちたがり屋の人。
・実行力も知識も金もないのに、自分のすべてを犠牲にした上で、他人に迷惑をかけながらボランティア活動をしている愚かな人。
・ボランティアの傘の下で金儲けをたくらんでいる人。
・ボランティア活動そのものがうまくいかずに破綻する人。
無理して出来ないことに手を出すなです。彼等のせいで、一生懸命まじめにボランティアに打ち込んでいる人まで被害を被っているのです。

LIVING-WITH-DOGS: マルコさんから以前いただいたメールで荒川河川敷にドッグラン構想があると伺いましたが、お話しいただけますか?

マルコさん: ドッグランを作ろうとこの足立区の住民と一緒になって、足立区にお願いしたんです。当時、区長が変わったりと陳情書も「貴重なご意見ありがとうございます」とただの紙切れとしてデスクの引き出しのゴミとなりかねない状況でしたが、役所ってこんな物なんですが、様々な説得を試み6年かかっていよいよ今年実現します。ドッグランを利用できる犬は、狂犬病予防の接種をし、区の登録が必須であること、しかも8種混合ワクチン、フィラリア予防を行った犬でなければ利用出来ないという制限を設ける予定です。公共のドッグランですから「糞を拾おう!」の啓蒙活動も行います。
また犬嫌いの人のためにも犬を通してコミュニケーションが図れる機会を設けられるのでは?と言う期待もあります。要するに犬の飼い主のレベルアップのために構想しました。現在は地域住民の中から代表を立て、実現化をすすめています。管理は地域住民が主だって行いますが、ルールを作り、しっかり管理出来ればと思います。今年、都内で初めての公共のドッグランが完成します。

LIVING-WITH-DOGS: マルコさんは足立区にそれ以外にも何か働きかけていることがありますか?

マルコさん: 実は災害用の避難場所をペット連れも可能な場所をつくって欲しいと足立区にお願いしています。現在、都にはそのような場所はありません。いつ災害がおきてもペットと一緒に避難出来なければ家族が離ればなれになってしまいますから。
三宅島のペット達も家族と離ればなれに暮らしています。家族と一緒に暮らせるような都営住宅があれば良いのですが。また、区で「飼い主へのしつけ教室」を開催したり、保健所の「犬を飼うには?」の小冊子など、飼い主さんの啓蒙に関することを提案しています。

LIVING-WITH-DOGS: よい考えですね。LIVING-WITH-DOGSは災害時に愛犬と共に避難しましょうとは言ってますが、区にペット可の避難所をお願いすると言うことまでは気がつきませんでした。
本日はお忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。
 

マルコさんとのおしゃべりはもう尽きることなく、一気に会話が弾みました。熱血漢で、間違ったことが嫌い。正論をおっしゃるマルコさんの目は輝いてました。マルコさんは「私が他の人間に信用されるか、されないかはどうでも良いことです。犬に信頼される、それだけで結構です。変わりやすい人間の信頼は二の次でいいんです。」という御仁です。
ある意味ではっきり物を言えるマルコさんは、日本が最も苦手とする海外からの”圧力(外圧)”なのではないでしょうか? 私達日本人顔した人間がああだこうだと言っても何も変わらないですが、とっても身近な外圧がここにいらっしゃいました。
マルコさん! これからもどんどん言って下さい。そして日本の犬を取り巻く社会を、後進国から一歩でも動物愛護を考える国へと進歩させましょう。

マルコさんの本 

犬に尊敬される飼い主(ボス)になる方法 (ハート出版)

「ペットはぼくの家族」 日本のペットは幸せなのかな? (ポプラ社)

「女王犬アレックの夢」 マルコさんとハスキー親子の物語 (ハート出版)

「マルコの東方犬聞録」 日本の犬だけには生まれ変わりたくない (ハート出版)

「幸せな捨て犬 ウォリ」日本とぜんぜん違うオーストリアのお話(ハート出版)

 (東京都、マルコ・ブルーノさん Ext_link 動物愛護支援の会)(2001/03/13)

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