1998/09/01 発行者 LIVING-WITH-DOGS.COM
はじめに 犬は、古来より、人のパートナーとして改良されてきました。その性格はまさしく愛すべき存在です。あなたの最良のパートナーとして長い期間共に暮らすことになります。 命ある犬は思ったほど簡単に飼うことは出来ません。食事の世話、お散歩、排泄の世話、 病気、そしてしつけです。台風のさなかでもお散歩で外に行かなければいけないことがあ ります。 飼い主は責任を持って、この出会った犬の生涯を幸せにしてあげる必要があるのです。 そのために、「犬と暮らすこと」について考えいただきたいと思います。 犬を飼おうかなと考えていらっしゃる方にもう一度、犬と暮らすことについてじっくり考えていただきたいと思います。 | [1] 犬との出会いの場 「犬を飼いたいな! さーて! ペットショップに行ってかわいいワンを探そうか!!!」大部分の方が、犬を買うのはペットショップだとお考えのようです。これが普通かと思います。 ペットショップについて、是非知識を深めましょう。
ペットショップでの生体展示販売は、もうこの日本で禁止とするべきでしょう。 なぜならば、そのようなペットショップは、安易に仔犬が手に入る為心構えなしに衝動買いする人が多いからです。そしてそのような飼い主によって簡単に捨てられるような状況になります。また安易に産ませるバックヤードブリーダーの受け皿として、また悪徳ブリーダーの利益を支えているからです。 ペットショップにいる子犬の生まれた所は、 1.子犬製造工場(いわゆるパピーミル) 2.一般の愛犬家の「うちのかわいいワンの子供が見てみたい」という気持ちで交配、余った子犬はペットショップへ 3.自家繁殖のブリーダーで余った犬、又はペットショップからの予約犬 4.ペットショップでの繁殖
と生まれ方は大きく分けて以上のように4通りあります。 ペットショップの子犬はなんでひ弱? ペットショップの子犬はパルボ、ジステンパーの発生率が高いことをご存知ですか? ひ弱な子犬を買わされる消費者が多いのです。実際に、一緒に暮らし始めたらかけがえ のないものとなります。しかし幼く亡くなっていく事例もたくさんあります。 愛くるしい子犬がガラスケースの中に?(40日位から店頭に) 商品価値を高めるためになるべく小さいうちに店頭に並べます。ひどいペットショップ では、育たないようにわざと食事を少なくすることもあります。成長期の一番栄養を摂取しなければならない時期にです。子犬の社会化の時期は母親、兄弟犬と暮らしている時です。生まれて最低でも70日は出来れば母犬から離さないで欲しいと思います。母犬の初乳を十分に摂ることで恐い伝染病から免れ、免疫のある時期に兄弟犬と十分遊んだ犬は、後に起こる問題行動の原因を作らず、未然に解消します。子犬の時期はその犬の大事な性格を育む時期でもあることを是非、知識としてお持ちください。 [2] 純血種の犬に多い遺伝性疾患
いろいろな犬種毎に、必ずと言っていいほど遺伝性の疾患があります。 例えばダルメシアンの難聴、ゴールデンの股関節形成不全、キャバリアの心臓疾患等 です。遺伝性疾患を持つ親犬での繁殖は、生まれる子犬の全員がその疾患を持つ確立が高くなります。子犬製造工場や素人繁殖では、利益重視のため、何も検査もせず繁殖 しているケースが多いです。そして不幸な犬がどんどん増えています。
[3] では、犬はどこで手に入れればいいのでしょう? 犬を求めるのは、シェルターで保護された犬であってほしいです。 しかし、まだペットショップでの生体展示販売が禁止されているわけではありません。 もしもペットショップでしかパートナーを探せない場合は、どのようなペットショップなら良いでしょうか。
良いペットショップでの購入 1. 店内は清潔である。 2. 店頭や店内のガラスケースに子犬を展示していない。 3. お客が簡単に子犬に触れないようにしている。お客が抱いてみたいと言っても抱かせてくれないくらいのペットショップは 病気の感染予防に努力されていると思えます。 4. 生後60日以前の犬を販売していない。 5. 希望犬種の特徴や持っている遺伝性疾患の説明をしてくれる。 6. 日常的な飼い方を丁寧に教えてくれる。 7. 育て方の質問はいつでも受けてくれる。 8. ペットショップに動物病院を併設しているところはトラブルが起こったらペットショップのいいなりになりかねません。 9. このペットショップで購入したことのある人から対応など感想を聞いておくといいでしょう。
ペットショップ以外での購入先
1.保健所、動物愛護・救済の諸団体などでの里親募集 日本には毎年何万頭もの犬が捨てられています。そのような犬を暖かい家庭に迎入れることはとても素敵なことです。
2.犬の雑誌の通信販売広告 残念ながら、通信販売で購入された方で病気の犬など、あまり良い話しを聞きません。出来ればこの手段は選ばれないほうがよろしいかと思います。
3.インターネット販売 新しい流通経路ですので、まだ情報がありません。ブリーダー直送と言って いるそうですが、真偽はわかりません。
4.ブリーダー直購入 おのおのの犬種毎にブリーダーといわれる方が、子犬を繁殖しています。 ブリーダーさん選びは、良心的なペット・ショップを選ぶこと以上に大変難しいです。 是非消費者は知識を持ってたくさんのブリーダーさんに会って、この方の作出した 子犬ならと思えるまでじっくり探しましょう。ポリシーを持って、健康な犬を作出 されているすばらしいブリーダーさんは必ずいらっしゃいます。
このページでの知識を基に、人のパートナーとして共に暮らす犬を求めるためにどこからが一番良いかをお考え下さい。
[4] さて、犬を迎えることに決めました。その前に!
1. 犬は家族の一員です
幼い犬はそれだけでかわいいのです。正しいしつけを入れて、社会の中で共生できる様にするのは家族の協力がなければ出来ません。
2. 出来るだけ、室内で人と一緒に暮らしましょう
狼と同じ祖先を持つ犬は、その生活様式や行動の中に狼と全く同じものを持っています。 また、骨も歯も同じ形であり、数も同じで少しも違いません。つまり、「指導者に 従って整然とした規律のある行動をとる」という狼の中にあるよいところを犬は全て 受け継いでいます。人に対する愛情と飼養主に対する服従という大切な性質を犬は全 て受け継いでいるのです。 群の中で、リーダーと共に生活する」ことは安心感を得られ、人間と共に生活をすることで、犬と人間が相互にたくさんの優しさを教えられます。さらに犬の健康チェックのしやすさという面でも室内での飼養をおすすめします。
3. 十分な世話と愛情を注ぎましょう
パピーの時期やトイレトレーニングをする時期はできるだけお留守番させないようにしましょう。トイレのしつけは、覚えが早い子、遅い子それぞれいます。飼い主さんは、覚えが悪いと言っていらいらするかもしれません。しかし動物だから言葉が通じないと思わないで、心で語りかけてみてください。きっと、応えてくれます。気長に構えてみましょう。バカ な犬はいません。時間をかけて教えれば必ず覚えてくれます。 家族が一緒になって取り組んでください。子供に犬の世話をさせることで、子供の成長過程に責任感・愛情の細やかな表現が養え、子供にとっての動物を慈しむ気持ちを育てるというすばらしいメリットが あります。しかし子供の興味は成長と共に変わっていくこともあるのです。大人が責任を持ち、家族が一緒に犬の世話をすることで、より家族の絆が深まるのではないでしょうか。
4. 経済的な負担は覚悟しましょう
しつけのための訓練費用、犬の病気、予防接種、トリミング、フード、等の費用はかなり 高額になることがあります。
5. 犬種及び大きさの選び方
(1)容姿のみで判断せずに、その犬の作業意欲、特性が、ご自分の家庭 環境、ライフスタイルに合った犬種かを冷静に検討してください。
(2)犬種選びの本では、「陽気で活発な性格」とはあっても、「落ち着きがなく、驚異的な破壊者」とは書いてありません。
(3)この様な犬種による特性は、あくまでも、一つの目安にすぎません。 一頭、一頭、個性があり、違った性格を持っています。その素質、性質を理解し、愛情をかけ、それぞれの良さを伸ばしてあげることが大切です。
(4)しつけられた近所の犬、テレビに出ている賢そうな犬、盲導犬等を見て、 安易に犬種を決めないで下さい。生まれたときから何でも出来る万能犬はいないのです。 盲導犬になる犬だからラブラドールをと考えられる飼い主さんがいらっしゃいます。 確かにラブラドールは賢い犬ですが、盲導犬としてのラインから生まれ、パピーウォーカーの元で愛情豊かに育ち、長い訓練を経ても、すべての候補犬が盲導犬になれるわけではありません。 特に、一般の家庭犬としてのラブラドールレトリバーは、やんちゃで、破壊魔で、しつけをする楽しみこそあれ、何もしなかったら困った犬となることは目に見えています。
(5)流行や、物珍しさ等で選ばないで下さい。その犬が、ご自身のライフスタイルに合うとは限りません。犬は飾りではありません、軽い情報で左右されるのは止めましょう。 例えば、キムタクがゴールデンレトリバーを飼っているから飼いたいというのは安易です。
(6)どうしても「その犬種を欲しい」のであれば、安易に繁殖をされた犬ではなく、また、 ペットショップ等での衝動買いは控えましょう。しっかりその犬種の特徴を調べ、その犬 種の良さを知り、真摯な思いでその犬種の繁殖に臨んでいるブリーダーさんを探しましょ う。 すばらしいと思えるようなブリーダーさんに出会えるまで、何年でも探しつづけるくらい気長に待つ覚悟を持って下さい。 6. 純血種か、雑種か
雑種、純血種どちらも、犬としてはまったく変わりありません。双方とも家族として愛情 をかければ、素晴らしいパートナーとなります。
7. 子犬か、成犬か
子犬の成長過程を見ることは飼い主として楽しみです。しかし成犬は基本的なトイレのし つけ等は既に入っています。「成犬だと慣れにくい」と言われますが、愛情を持って接す れば、あなたに忠誠心をもってくれます。
8. 獣医師の選び方 飼い主は普段の生活の中で健康チェックを行い、早期発見、早期治療に心がけましょう。また獣医さんの診察に支障がないように、日頃から自分の犬をしつけましょう。
(1)犬が好きで共に暮らしたことがある獣医さんであること
(2)犬との接し方が、上手な先生 たとえば、野良犬を保護して病院に連れていっても嫌な顔をするような獣医さんは ほんとに動物を愛しているか疑問です。
(3)患者の話をしっかりと聞いてくれ、ていねいに応対してくれる先生、そして、 いやなこと、聞くのがつらいこともはっきり教えてくれる先生は大事にしたい先生です。
(4)病気や薬のことをきちんと説明してくれる先生
(5)最新の獣医療、情報・知識・臨床事例をお持ちの先生
(6)24時間対応、緊急対応が可能な先生
(7)献血のための生体「輸血犬」を飼っている先生(近頃そのような先生がおります) 専門分野でない場合、適切に他の獣医を紹介してくれる先生
(8)主治医を決めておきましょう 近所のかかりつけの病院は応急処置や軽い疾患の場合に必用です。さらにより専門的 なアドバイスが聞ける施設の整った病院も主治医としておきましょう。獣医さんにも それぞれ得意分野があります。
(9) 犬の治療費には保険制度がありません。また、診療費も獣医さんによってマチマチで す。最近では、治療費、薬代等の明細を下さる病院も増えています。判らないことや 不明なことは、何でも聞き、「適正料金で信頼できる」獣医さんを選びましょう。
(10) ご近所のお散歩友達に、獣医さんの評判を聞きましょう。意外と当たっています。 いつも患者の多い、混んでいる病院は、適正料金であると想像できます。あまり繁盛 していない病院は、やはり避けた方がよろしいでしょう。
9. 揃えるもの
(1)その犬に合ったリードとカラー、子犬の時はハーネス(胴輪)がいいでしょう。 必要に応じて身体に合ったものにしましょう。
(2) 名札 レスキューされた時等、いざという時のために必ずつけましょう。
(3) ケージ(クレート、サークル)
(4) シャンプーグッズ
(5) グルーミンググッズ
(6) 爪切り、やすり、歯ブラシ、足裏の毛を切るハサミ、 イヤークリーナー等
(7) 救急箱 マキロン、ガーゼ、包帯、綿棒、消化剤、整腸剤等。 人間用のもので対応できます。しかしあくまでも応急措置であると言うことを忘れずに、 危険な場合もありますので獣医さんにご相談ください。
10. 飼い主のすべきこと
(1)混合ワクチンの接種と、狂犬病予防のワクチンの接種。
(2)市町村に必ず、届け出ること。
(3)フィラリアの検査を受け、獣医さんからの指定期間中は、予防薬を投薬すること。
(4)ノミ、ダニ等の予防をすること。
(5)年に一度位を目安に検便を行うこと。また、便に異常が見られた時も速やかに 獣医 さんへの診断を仰ぐこと。
(6)月に2度位を目安に、犬を洗い、こまめにブラッシングを行い清潔に保つこと。
(7)全身のチェックを行うこと。
(8)排泄の始末を責任をもって行うこと。
(9)両隣とか近所の方、集合住宅の場合は理事会などへの挨拶をしておきましょう。
(10) 去勢、避妊手術の是非 ・しばしば、問題行動に良い影響をもたらす。 ・犬のストレスを軽減させる。 ・避妊処置により予防出来る病気もある。 ・誤った繁殖を防げる。
等のメリットもあります。メリット、デメリットを信頼のおける獣医さん、訓練士さん 等に相談され、ご家族の総意で判断しましょう。
11. 子犬の社会化とワクチンの時期
子犬の7週から12週はとても重要な時期となります。 子犬の頃に、たくさんの物、人、場所に慣らし、社会化をしている犬は、素晴らしいパートナーになれます。社会化とは、犬が犬として人間社会に溶け込めるようにしていく為の教育、自分が犬であることを知り、人や他のペットたちと犬として付き合って行けるようになる。その大事な教育が社会化の時期です。
8週目は恐れの時期です。 この恐怖の時期はおおよそ8週目に突然訪れます。感性が急に敏感になり、昨日まで平気だったお口のチェックやひっくり返されること、グルーミングテーブルの上などを嫌がることがあります。 そして、この時期に受けた恐怖はとても長い間染み付いてしまいます。恐怖や苦痛などの経験は避けるようにしましょう。
10週目になると もっと変化に適応できるようになります。家族やいろいろな人達から愛情や注意を引かれる様にしたり、 子供達と遊ばせたり、外の世界にさらしたり、トイレトレーニング、基本的なしつけも始められます。この期間に人との関りが大切ですので愛情深く育ててください。この期間を人から離されると、一生、不適応な犬になることがあります。
さて、ここで問題となることは、予防接種の時期と、 社会化の時期が重なってしまうことの矛盾です。「病気の予防」と「社会化」は全く反対の対処を要求されるものです。病気になるリスクと、社会化を行わないことに対するリスク双方を考える必要が出てくるわけです。 なお、子犬の社会化、ワクチンの投与については、地域の事情、犬の種類や、大きさ等により異なります。獣医さんに十分にご相談の上、判断されることをおすすめします。 おわりに – 犬と暮らす素晴らしさ 犬をノーリードで遊ばせることが出来るドッグランや、犬と一緒に入れるレストラン、犬と一緒に行く旅行、が当たり前の世の中に少しづつ近づけていきたいものです。そのために、犬に人間社会の中でのルールを身につけさせ、社会の中で共生できる様にすることは、「飼い主の最低限の義務」だと思います。犬の権利と自由をもっと拡げてあげて、様々な活動に参加できる犬を増やしていくには、飼い主自身が意識を高めて行くことが重要です。
飼い主の管理不足で繁殖し捨てられて野良犬になります。また望まれず生まれた犬は、捨てられるか、保健所に飼い主の手で持ち込まれます。そして多くの幼い命が犬生を全うできず死んでいきます。運良く里親に出会える犬はごくまれです。この様な不幸な犬達は、飼い主が犬を捨てなければ防げるのです。 犬の命は人が握っているのです。
犬は精一杯あなたを愛し、信頼してくれます。そしてあなたを裏切らないでしょう。犬と暮らしはじめて、たくさんの気づきが得られます。犬は人の心を癒してくれ、悲しいとき、楽しい時、犬は人と感情を分かち合います。また、犬を介してたくさんの友人ができ、様々な思い出を作り上げます。その経験は、どのような本や知識よりもたくさんの真実を教えてくれます。そしてあなたはその犬と一緒に暮らし始め、その犬の愛に応え、一緒にたくさんの幸せを築いていかれることでしょう。 犬との素晴らしい暮らし、それは、あなた次第です
2003/03/08 (訂正1) 1998/09/01 (初版) 発行者 LIVING-WITH-DOGS.COM
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