ある素晴らしいラブラドールとの出会い

ある素晴らしいラブラドールとの出会い

近所の犬、メリーさんと出会ったのは2001年12月の師走でした。
メリーは、イエロウ、小振りな犬で、愛らしい眼を持ち、ラブラドールとして最適な性格を持って生まれた犬です。

この子は、迷子犬です。現在の飼い主さんは、この子を拾い、あらゆるところに迷子犬のお知らせを発しました。しかし飼い主さんは見つかりませんでした。およそ4ヶ月令で迷子犬となってしまったのです。(獣医師の判定)

私は、Oさんの元で飼い犬として1年を過ごしたメリーと出会いました。
Oさんとメリーの出会いは、おそらくメリーにとっては嬉しい出会いだったと思います。
Oさんは、飼い主さんが見つからない状況でメリーにしつけをし、服従訓練をしっかり入れ、仔犬から従順な成犬へと成長させました。
毎日、どこに行くにもメリーはOさんと一緒です。Oさんとメリーの絆はどんどん深まって行きました。
Oさんにとってメリーはかけがえのないパートナーとなっていったのです。
犬は人の心をさりげなく暖めてくれ、0さんにとってのメリーは自分の子供以上に愛しい存在になっていました。

0さんは「メリーに一度は子供を産ませてみたい」と言いました。
私は、ラブラドールの遺伝性疾患のあまりにも多い発症例が果たしてメリーにとって幸いなのか疑問に感じました。メリーは特に迷子犬です、血統書もない雌犬から生まれた子供達に果たしてちゃんとした里親がつくかどうか不安でなりません。
メリーはOさんにとっては、天から降ってきた天使なのです。そう言えるくらい素晴らしい犬だと私も認めざるを得ません。

その歩様は安定し、腰つきも軽くリズミカルな動きです。性格は穏やか、運動性は活発、1才で服従訓練はしっかり入ってます。性格的にも運動性能もメリーは素晴らしい母犬となる素質があると私は感じました。
安定した歩様は、股関節形成不全や肘関節形成不全の恐れは少ないと感じましたが、OFAやペンヒップを受けた訳ではありません。
メリーはアジリティーやディスクをさせたら、さぞや素晴らしいスポーティングドッグになると予想出来るくらいの素晴らしい活発な犬です。素晴らしい素養のある犬だと認めざるを得ないメリーさんなのですが、ではメリーがもしも出産した子犬達はどうなるか? がとても不安になるのです。

メリーにとって出産させることが犬として完成されたものと思いこんでいる0さんです。そのOさんに面と向かって「そうではないんです。メリーの子供達のすべての命を全うさせるには、血統書、里親の吟味がどれだけ必要であるか」語り、理解してもらえるか私自身、まったく自信がありませんでした。

雌犬の場合、出産をさせることが、犬の健康に最適とは言いかねません。
子宮蓄膿症、乳腺炎、癌の発症率は圧倒的に出産経験のある雌犬の方が多いのです。
幼いうちに、避妊手術を施し、乳癌や子宮蓄膿症を予防することが可能であることを、メリーさんの飼い主さんに伝えたいと願って止みません。

犬にとっての幸せは何でしょうか? 子孫を残すことでしょうか? リーダーである飼い主さんとの楽しい暮らしでしょうか?
私は、後者の「飼い主さんとの楽しい暮らし」を犬は一番欲っしていると思います。
未去勢の犬は、本能のまま、性的な行動を行います。

人は、人の勝手な論理で犬たちの繁殖機能を阻害させることに宗教的な罪悪を感じる方もいらっしゃいます。
しかし本能に目覚めないうちに去勢することを罪悪と考えることはいかがなものでしょうか。
生まれた仔犬が生を全うできず、殺される羽目になることを望みますか?
私は、「望まれない仔犬をこれ以上増やすべきではない」と申し上げたいのです。

そしてメリーさんのパートナーOさんには、それ以上語ることはいたしませんでしたが、メリーがずっとOさんの元で飼い犬として暮らして行けることを祈らずにいられません。

現在の日本では、メリーで繁殖をすることは良い犬を増やすことにはならないのです。捨てられる可哀想な犬たちを増やすだけなのだと言うことを知っていただきたくてこんな記事を掲載しました。

(2002/01/02)(LIVING WITH DOGS)

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