ペットビジネスにもの申す
ペットビジネスにもの申す
以下のようなパンフレットを入手しました。
「一石二犬」とタイトルにゴールデンリトリバーの絵、「愛くるしい愛犬との生活・無理なく安定収入」今日から貴方もブリーダー・優良繁殖犬オーナー会員募集
パンフレットの内容は、
・繁殖事業:チャンピオン犬との交配、信頼のおける仔犬の生産・販売
・生体販売事業:運営ペットショップ販路拡大、FC展開のためのインフラ整備、犬の共済保険、犬保育所整備
・社会貢献事業:労役犬(盲導犬、聴導犬など)や家庭犬のために、ホスピス事業の社会貢献など、アニマルコンパニオン展開、各種学校の設立
・預金金利0%に近い時代、急成長の犬ビジネス産業で安定収入を!
安心その1: 買い取り保証付き、犬には年2回の出産期があり弊社登録チャンピオン犬と交配させます。小型犬の出産は1回につき3頭、中・大型犬約5頭まで、買い取り金額にて買い取らせていただきます。上記頭数以上出産した場合は、弊社の所有犬として無償にて提供していただきます。
安心その2: ペット保険を*********では準備しておりますので、病気・死亡でも安心。掛け金は月々900円から加入しやすく保障内容も充実し細部については保険加入時に別途飼料をお渡しします。突然ペットが死亡してしまった場合(病気・交通事故)同一犬種を差し上げます。
システム1 | オーナー自身が飼育のケース | |||
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| オーナー投資金 | 1年目の収入 | |
繁殖犬2頭コース | 小型犬: | 50万円 | 24万円 | |
繁殖犬2頭コース | 中大型犬: | 50万円 | 40万円 |
システム2 | 弊社の飼育センターに任せるケース | |||
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| オーナー投資金 | 1年目の収入 | |
繁殖犬2頭コース | 小型犬: | 50万円 | 18万円 | |
繁殖犬2頭コース | 中大型犬: | 50万円 | 17.7万円 |
一石二鳥とは? 一つのことをして、二つの利益を手に入れる効果
かつて昭和40年代の東京畜犬の事象を再現するような内容です。このパンフレットのように繁殖で安定収入なんてあるわけがありません。(参考図書: 黄金の犬たち)
健康な仔犬の誕生を願うのであれば、両親犬の検査費用、医療費、良質な食事、等、健康管理で年間の1頭の犬にかかる費用は、子犬が売れた費用でまかなえるものではないことを知って下さい。
仔犬を25万円で購入した場合の初年度の費用として最低限の費用を算出してみました。
このパンフレットでは2頭となっていますが、1頭25万円で購入した場合の初年度の最低の費用およそ概算です。実際にはこんなに安くないのが実体ですが。
仔犬1頭の最低の費用
品目 | 下限(円) | 普通(円) | |
生体1頭分 | 250,000 | 〜 | 250,000 |
最初のワクチンの費用2〜3回必要 | 30,000 | 〜 | 40,000 |
年一回の狂犬病の費用 | 3,200 | 〜 | 3,200 |
地方自治体への畜犬登録の費用 | 3,000 | 〜 | 3,000 |
フィラリアの検査・フィラリア予防薬の投与7ヶ月分 | 10,000 | 〜 | 15,000 |
フード(8Kg×3) | 18,000 | 〜 | 24,000 |
ケージ・首輪・リード・ペットシーツ・食器・コーム・シャンプーなど | 100,000 | 〜 | 130,000 |
寄生虫検査検便及び駆虫薬の投与 | 5,000 | 〜 | 10,000 |
合計 | 419,200 | 475,200 |
初年度2頭分であれば、800,000〜1,000,000円がかかります。
雌犬の交配は、成犬となるのは2才を過ぎてからとなりますから、1年目は収入はないはずです。最初のヒート(8ヶ月から12ヶ月頃)で交配させることは親犬にとっても仔犬にとっても良い結果を生みません。2回目のヒート(14ヶ月〜18ヶ月頃)。妊娠期間2ヶ月。仔犬の親元を離れる時期は2ヶ月後。ペットショップは40日〜50日で店頭に展示します。
また2年目に繁殖できたとしても、繁殖するためには、OFAやペンヒップの検査心臓の検査が必要です。その費用は個人が負担しこの繁殖屋は負担しないでしょう。毎回のヒート毎に出産させるのは虐待です。1頭の雌犬が健康な状態で出産できるのは生涯で2回くらいが適正でしょう。繁殖は儲かると言うのは全くの嘘です。
このパンフレットで唯一確実な内容は、オーナーが2頭を初期資本投下すると言うことです。
50万円を支払うことで、繁殖相手をあてがい、生まれた仔犬を引き取ると。
オーナーの出資金である50万円を確実に得るためのビジネスであることに気がついて下さい。最初の2頭を買わせるための広告なのです。その後の保証は何も無いでしょう。
犬を愛するなら、このようなビジネスは避けるのが無難でしょう。
(2001/08/06)(LIVING WITH DOGS)