天国からの贈り物
2004年9月10日 [ドッグレスキュー・レビュー]
天国からの贈り物
グッバイ・マイフレンドの「ロクシー」に最愛のロクシーを虹の橋の向こうに見送った切ない日々をしたためて下さったロクシーのママのその後です。 ロクシーは天国から、ママの悲しみをどうしたら癒せるか考えていたようです。 牧場で羊や牛を追っていた女の子は迷子となってシェルターにいました。ロクシーはママにぴったりな子だと思い、天国から遠隔操作で出会えるように導きました。 犬は愛する人をいつも心配しているんですね。今も側にいて「大丈夫ママ?悲しまないで」とママの頬を伝わる涙をなめています。だけど気がついてくれないママ。「私よりはちょっと落ちるけど、でもこの子はママにぴったりだと思うから、可愛がってあげてね。」天国のロクシーはママに「ホリー」という名の可愛い女の子を贈ってくれました。そして、「ホリーならば、大好きなMaxともきっといい友達になれると思うから」と。 ロクシーは、家族にいっぱい愛されてきたから当然ですね。
愛犬を亡くして悲しんでいる方へ、いつか優しい人が迎えに来てくれるのを待っている犬たちがたくさんいます。そしてそのような子を迎えることで、暗いトンネルの先に小さな光りを見つけることが出来るかも知れません。 (LIVING WITH DOGS) ホリーは2004年6月オレゴン州東部の田舎で迷い犬として収容されたそうです。ジェファーソンカウンティーにあるこの収容所でホリーは一ヶ月過ごしましたが、飼い主はとうとう現れず、殺されるところだったのを、ポートランドにある Oregon Humane Society に引き取られました。ところがそこでも、貰い手が見つからないまま更に一ヶ月が過ぎ、とうとう極度のストレスのために小屋にこもったまま出てこなくなり、食事を与える人にも吠えるようになってしまいました。
ホリーはもともととても賢く性格の良い犬だったのでHumane Societyのスタッフが見るに見かねて、一時的に預かってくれるフォスターファミリーを探しました。このままほおっておいて、もし人を噛んだりしたらどんなにいい子でも殺さなければならなくなるからです。収容所では数々のチェック項目や性格気質テストを行い、それぞれの犬が貰い手を探すにふさわしい犬かどうかを見極めます。食事中に誰かがボウルの中に手を入れても噛み付かないことなどをクリアーしなければ安心して里子に出すことができません。凶暴でテストに失格した犬は残念ながら殺されることになるそうです。それらのテストにホリーは問題なく合格しましたが、なかなか貰い手が付かなかった理由の一つとして彼女の犬種のことがあります。彼女はボーダーコリーとブルーヒーラーのMixと思われ、どちらもHerding dogといって家畜の群を集める習性があるため、小さな子供たちを追いまわしたり、軽く噛んでしまったりする可能性があるので、Oregon Humane Society ではこの犬種は12歳以下の子供のいる家には譲らないことにしているのです。もう一つ考えられる理由は、ホリーには尻尾がまるでないことです。Hunting dog やHerding dogは尻尾の怪我を防ぐために、生まれて間もないうちに断尾する習慣があります。それでも普通は2-3インチぐらいは残すのだそうですが、ホリーの場合は本当にすっぱり尻尾を丸ごと切り取られていました。ペットの犬にはやはり尻尾が欲しいものだと思います。喜びや警戒心など尻尾の動きで分かることがいろいろありますから。
そんな訳で長い収容所生活を余儀なくされたホリーですが、幸いにもフォスターファミリーが見つかり、8月17日にホリーはジェニファーという人の家に移りました。二ヶ月にもわたる収容所生活から開放され、ジェニファーの他の2匹のボーダーコリーと一緒に家の中で暮らせるようになり、ホリーはすっかり落ち着きました。でもジェニファーの家は狭く、2匹の犬のほかに猫が一匹、それに2歳になる男の子がいるので、あくまでも貰い手が見つかるまでの期間ということで引き受けてくれたのです。そしてジェニファーはボーダーコリーのレスキューサイトにホリーを載せました。
ところで私は11年半一緒に暮らした愛犬のロクシーを3月になくしてから、五ヶ月が過ぎてロクシーの月命日を初めて後になって気付くようになったころ、インターネット上でホリーを見つけました。その間にも、ネット上で3匹会ってみたい犬に出会いましたが、どの子も貰い手が決まっていました。その都度少しがっかりしましたが、正直なところどこかほっとした気持ちもありました。というのは、マックスがまだうちにはいるけれど、もう一匹若い犬を迎えるということは、ちゃんとその子を死ぬまで面倒みるという大きな責任をまた一つ背負い込むということです。そしてロクシーを亡くした時の悲しみを、マックスのいつか、そして新しい子のいつかと繰り返し味わうことを恐れていたせいもありました。そんな風に私の気持ちはいったりきたりを繰り返していましたが、次第にきっといつかロクシーが、一番ふさわしい犬を一番ふさわしい時に私達に会わせてくれるだろうと信じるようになりました。そして、ホリーに出会ったのです。ホリーは迷い犬だったので正確な年齢はわかりませんが、たぶん一歳から二歳の間の女の子で、体重は35ポンドとのことでした。
うちから車で一時間半ほどのところにいるホリーをインターネットで見つけ、どうせまたダメだろうと思いながら私はE-メールを送りました。2日ほどして、ホリーはまだ貰われていないこと、そして一時的にポートランドのフォスターファミリーのところにいることが判り、まずは申込書に必要事項を書き込むところからスタートしました。里親として合格しないとホリーに会わせてももらえないからです。今まで不幸な道を辿ってきた犬達を里子に出すときには、きちんと最後まで責任をもって一緒に暮らす覚悟と条件が揃った人にしか譲ってくれません。申込書の項目には、持ち家か借家か、庭の大きさ、塀があるか否か、塀の高さ、犬はどこで日中過ごすか、日中留守にする時間がどのくらいあるか、かかりつけの獣医の情報などなどかなり詳しいものでした。
翌日ジェニファーから返信があり、是非ホリーに会って欲しいというのでその晩私は自宅から30分ほどの彼女の家を訪れました。ドアのチャイムを鳴らすと、二匹の犬が吠えながら出迎え、ジェニファーは挨拶もそこそこに私の手にドッグビスケットを三つ載せながら、こう言いました。”ホリーがあなたを警戒しないようにまずこれをあげてちょうだい。“ 痩せて毛の短いほうがホリーで、もう一匹の毛の長いボーダーコリーが、ジェニファーの2匹の飼い犬のうちの一匹、ジャックでした。彼女の居間で、私は前述のような彼女がホリーを引き受けるまでの経緯を聞きながら、ホリーがテニスボールで一人遊びをしているのを見ていました。この家に来てから二週間たったホリーは大分安心してくつろいでいる様子でした。ジェニファーは、ホリーがすでにいくつかのコマンドを覚えていること、室内犬としてのしつけができていること、他の犬や猫とも仲良くできること、おそらく以前に男性に打たれたか何かしたのだと思うが極端に男性に対して警戒心が強く怯えて吠えることなどを教えてくれました。女性には割りと簡単になつくようで、私にも甘えて顔をなめてくれました。こんなにかわいくていい子なら是非うちで引き取りたいと思いましたが、その前に一番大切な条件をジェニファーに理解してもらわなければなりません。それは、マックスがホリーをどう受け入れるかということです。数か月前迄マックスは子供の時から一緒に育ったロクシーと暮らしていました。ロクシーはかなり強い性格で勇敢で多分に攻撃的な女の子でしたが、マックスはおっとりしたやさしい男の子です。臆病で掃除機をかけると逃げ回り、大きな音がすると私の足の間にもぐってきます。ですから、どんな犬とも仲良くできる自信はありましたが、逆に若くて勝気な性格で独占欲の強い子だと、マックスのほうが萎縮してしまうのではないかと心配でした。12歳半のマックスに残された短い時間を他の犬が来たために不幸にするわけにはいきません。もう一匹迎えるのは、まだまだ元気なのに一日中寝てばかりのマックスのためにもいい刺激になると思ったからなので、彼が気に入らないのなら、この話はなかったことにして欲しいと頼みました。ジェニファーは、この条件を快く引き受けてくれました。マックスにもホリーにも幸せになって欲しいからと言って。
翌々日の日曜日、ジェニファー一家がホリーをうちに連れてきてくれました。マックスは短い尻尾を一生懸命振りながら歓迎しましたが、ホリーのほうは、初めての家で知らない人たちに囲まれて怯えていました。前もってジェニファーに言われていたとおり、主人はホリーにすぐにビスケットをあげましたが、やはり先日と違って始めての環境なのでホリーはおどおどしていました。でも庭に放すとまずは端から端まで走り回って探検を始めました。小さな池にも飛び込んでジャブジャブと泥だらけになったので皆で大笑いしました。家の中と違ってホリーはその運動神経の良さを私達に見せ付けてくれました。スロープと階段の多い庭なのですが、まるで稲妻のように左右上下にものすごい速さで飛び回るのです。ジェニファーの家はほとんどデッキしかない小さな庭だったので、うちでは水を得た魚のように久々の運動を楽しんでいるかのようでした。マックスとの相性を見るためにジェニファーはホリーを二三日預からせてくれました。ジェニファー達が帰ってしまうとホリーは不安になって泣きました。主人と私で、マックスとホリーを散歩に連れて行ったり、庭で遊んだりして日中はどうにかホリーの気を紛らわすことができました。池にまた飛び込んでひどく汚れたので、私がお風呂で洗ってあげました。お風呂場でタブの中に入るように言うと、ホリーは自分から中に入り、初めてのシャンプー中もとてもいい子でした。マックスとは、遊ぶわけでもなければ、喧嘩するわけでもなく、二匹とも私の後を付いて廻っていました。夕方になるとホリーは玄関のドアの前に横になり、まるでジェニファーが迎えに来てくれるのを待っているかのようでした。あんなに辛い収容所生活から救い出し自分の家に迎え入れてくれたジェニファーを信頼しきっている様子でした。
日曜、月曜、火曜、と初めの三晩は二匹とも私達の寝室で寝かせました。ジェニファーの代わりに私について廻っているホリーに不安な思いをさせないためでした。でも水曜日の晩、試しに今までマックスとロクシーが寝ていたユティリティールームに毛布を敷き、ホリーに“ここで寝てごらん。”と言ったところ、横になったので、ドアを閉めて、私はシャワーを浴びに行きました。ホリーはしばらくおとなしく寝ていましたが、15分位してやはり泣いたので、また寝室で寝かせました。ですがその翌晩は、なんと朝の4時半までユティリティールームで眠り、とうとう金曜日からはちゃんと朝まで眠るようになりました。マックスとも仲良くやっています。ロクシーがいた時と同じように、食べ終わるとお互いのボウルの中を食べ残しがないかちゃんと点検しあったり、散歩の時には、一緒に同じところを嗅ぎまわったりしています。どうやらマックスはおてんばなホリーを受け入れてくれたようです。
水曜日に正式にホリーをアダプトしました。アダプト料は75ドルでしたが、寄付を添えて100ドルの小切手を置いてきました。契約書には、さまざまな項目に加え、もしもやむを得ない事情でホリーを手放さなければならない場合には、たとえ親戚にあげる場合でも同じレスキューに連絡するか、返すことという項目がありました。
ホリーが家へ来て、昨日で丁度一週間経ちました。家での生活にもすっかり慣れ、あんなに警戒して吠えていた主人にも甘えるようになりました。主人に抱っこしてもらいうっとりとしている顔を見るにつけ、もうこの子に決して辛い思いはさせまいとあらためて思います。
そうそう、ホリーは昨日本当に悪いことをしました。今までにも2回カウンターの上にあったケーキやドーナツを盗み食いしたことがあったのですが、昨夜は久しぶりに帰ってきた息子の朝ごはんのためにカウンターの上においたコーンミールマッシュを食べてしまったのです。前の2回は現行犯ではなかったし、私達に馴れてもらうのが最優先だったのであまり厳しく叱りませんでした。3回目ともなるとしっかり叱らないといけないと思い、声を荒げて怒りました。するとどうでしょう。マックスのところに逃げ込んで、彼の隣で小さくなっているのです。まるで女の子が大きなお兄さんに助けをもとめるかのように。笑いをかみ殺して、ホリーをユティリティールームに連れて行きドアを閉めました。そのまま朝までおいておけば、盗み食いをしてはいけないことがわかるだろうと思いましたが、やっぱり10分くらいでお仕置きから解放してしまいました。ホリーはとっても賢くていい子ですが、盗み食いをすることとソファにすわってしまうことだけが今のところ問題です。これからこの二つをしっかり教えていかなければと思います。
ところでロクシーを亡くしてからここに至るまで、自分の気持ちの中にいろいろな変化がありました。彼女の死を現実として受け入れられる日と、どうしようもなく寂しく空しい日が交互にやってきました。でも次第にわかってきたことがあります。それはロクシーには二度と会えないけれど、彼女は私の心の中にいつもいるということです。だから代わりを探すことはしない。でも可哀想な運命の犬がいたらまた一緒に暮らしてみてもいいなと思うようになったことです。今ホリーと出会って、家族として迎え入れ、また新しい関係を築いていくことは、ロクシーを忘れることでは決してないのだとわかりました。それぞれの犬に個性があり、ホリーはロクシーの代わりとしてではなく、ホリーとして可愛いのです。ロクシーが使っていたボウルでご飯を食べ、ロクシーの布団で寝ています。数ヶ月前までロクシーがいた我が家のスペースに今はホリーがいます。でも私の心の中のロクシーのスペースは誰にも譲ることなくこれからもずっと彼女だけが住み続けていくことでしょう。ロクシーのことを想うたび、思わず微笑みと涙が浮かんでしまう私です。
(2004/09/10)(オレゴン、U.S.A、Y.Mさん) ご参考:Behavior Testing for Shelter Dogs(保護犬の行動テスト)
Food Bowl Testing (ごはんを食べる時のテスト) Level of Confidence with Strangers (知らない人に対しての接し方) テスト#1:手を叩いて、”こら!”というとどうするか。 General Observation(総合所見) Activity Level(活発さ) テスト#2:触った時の反応 テスト#3:前と横の歯を5秒間検査する時の反応 テスト#4:犬の首に腕を回して5秒間しっかり抱きしめたときの反応 テスト#5:首の下から首輪をつかみ、反対の手をおなかに30秒間あてて後ろ足を押さえたときの反応 テスト#6:興奮しやすいかどうか Overview of dogs personality(犬の性格の概略 Canine Health Evaluation(犬の健康状態) つめ、眼、口、歯、歯茎、耳、毛並み、皮膚などの評価 腹部、尻尾、肛門、心臓、などのチェックと予防接種の状況、避妊手術の状況 Traits observed by staff(スタッフが気づいた特性) 最後に総合的に見て”OHSの推薦”という結論が書かれています。ちなみにHollyの場合は、No kids no exceptions! (子供のいる家は不可。例外は認めない。) Holly is very shy at first. Very smart and loving. (ホリーは馴れるまでとてもおどおどしているがとても賢く愛情深い)と書かれていました。 | |
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