報道の責任<NHKの番組から>
報道の責任<NHKの番組から>
NHKで相次いで放送された番組の中で、同じNHKが制作しているのに何故、このような相反する番組となってしまうのか、不思議でした。まあ、NHKもすべての番組を社内スタッフで作れるわけがないので、人的労力の面で無理があるとは思いますが、身近な家族として存在する犬に関しては、認識違いの番組づくりは、社会的にもしてはならないと思います。NHKは視聴者の視聴料で運営されているからです。
まずは、ご紹介したい番組は、
NHK[クローズアップ現代]2005年5月30日(月)に放送された番組です。
<ペット大暴れ、悩む飼い主>
市場規模、実に2兆円。ペットビジネスが空前の規模にまで膨れあがる中で、今、誰かれ構わずかみつく、むやみに吠えるなどの問題行動をとるペットが増えている。その背景には、狭いマンションでの飼育といった問題の他、子供の頃の方が高く売れるため、生後すぐに親から引き離される等、ストレスの多い育て方の悪影響を指摘する人も少なくない。家庭で飼われる犬はおよそ1千万匹。問題行動をとるペットの実態を通して、過熱するブームのもたらした波紋を探っていく。
スタジオゲスト : 矢崎 潤さん(家庭犬インストラクター)
: 山口 千津子さん(日本動物福祉協会調査員)
この番組は、ペットビジネスに潜む問題点を指摘した素晴らしい内容でした。PETブームにより乱繁殖での、社会化を充分にしていない子犬達が問題行動を発する、ペットブームへの警鐘となる内容でした。
次にご紹介するのは、同じ問題行動を扱っていますが、ちょっと違うでしょうと言う内容です。
<難問解決 ご近所の底力>6月23日(木)放送
空前のペットブームの中、5世帯に1世帯が犬を飼う時代です。その一方で、“鳴き声”“かみつき”“散歩中のケンカ”など、犬に関するトラブルも相次いでいます。
そこで、番組では“ご近所でできる愛犬のしつけ”をご紹介。犬の専門家が「しつけの間違い」を徹底分析するほか、「頼りになる無料で的確な先生」「犬同士がしつけしあう離れ業」など、ご近所で犬と楽しく暮らしていくための極意をご紹介します。
この番組での、ちょっと違うんじゃないの?と言う点をLIVING WITH DOGSは指摘させていただきます。
訓練士さんが登場しています。その訓練士さんは以下のように言ってます。どうしても違うのではと思いますので、反論させていただきます。
鳴きやまない犬への対処法
(1) 無視する
犬が鳴く=「飼い主に注目してほしい」
→「無視」をする
→「鳴いても何もしてくれないや」とあきらめ、鳴き止む
※散歩やエサやりなど日常の世話はしながら「目を合わさずしゃべりかけない」
犬が吠えることは、飼い主に注目して欲しいということだけはなく、飼い主に教えたいことがある時に吠えます。その対処法として、無視するとありますが、犬は、無視されることが一番つらい罰なんですね。
犬が吠えるのは理由があって吠えるんです。オシッコをしたい、ご飯はまだ?誰かきたよ!何か外でいつもと違う音がするよ!何か異変が起こるかもしれないよ!(地震や火事等を事前にキャッチする能力もあるんです)
犬に無駄吠えはありません。まずは何故吠えているのかを飼い主さんが愛犬の行動を観察することが必要です。そして原因を知って、もう吠えなくても大丈夫ということを愛犬に伝えてあげることが必要だと思います。
そして、「目を合わさずしゃべりかけない」というのは、愛犬は無視されていると思い、自分は何も理解して貰えないし、この人は自分のリーダーとしてふさわしくないと判断してしまうでしょう。
だから飼い主の言うことは信用できないとなって、問題行動となってしまうのです。これだけはしてはなりません。愛犬とおしゃべりすることは、必要なことです。目を合わせながら、話しかけて下さい。常に話しかけていると犬はかなり言葉を理解できるからです。
鳴きやまない犬への対処法(3) 他の犬に会う前に自分を注目させる
苦手そうな犬がやって来たら…
(1)お座りをさせる
(2)エサを与える=相手より自分のほうを注目させる
(3)相手の犬から遠ざけない=すれ違いざまににおいを覚えさせ警戒心を薄くする
→根気よく繰り返せば、徐々に相手に危害を加えないようになると言います。
この対処方で、ちょっと足りないなと思うことを書かせていただきますね。
苦手な犬が来たら、座らせて、落ち着かせることは必要なことです。その前に、確かに、すれ違うであろう犬が来た場合、飼い主同士が顔を合わせ、困っているか、友好的かを判断するのは飼い主さんですよね。
まずは、飼い主さん同士が、にこやかに挨拶を交わすこと、おだやかに会話をしていたら、リードの先で繋がっている愛犬は、この飼い主さんと犬は敵ではなく、お友達と思うでしょう。性格的に一瞬で判断する犬もいますが、飼い主さんがお友達と承認していることが必要です。飼い主さんの心理状態が愛犬にそのまま写ることを知りましょう。飼い主さんが、誰にでも友好的な場合、余程でない限り愛犬は攻撃的にはなりません。
大型犬と、小型犬がすれ違うときは、大型犬はちょっとと思っている小型犬の飼い主さん。
大型犬は、左に座らせ、飼い主さんが小型犬の飼い主さんにお先にどうぞ!と声をかけることは必要でしょう。それは、お互いに譲り合うこと、大型犬を怖がる飼い主さんもいると言うこと、危害を加えませんよという意思表示、無理に遊ばせたくないという反対の意味での意思表示もあります。
このような段階を踏んで、もしも飼い主同士、犬同士、が問題なく近づけそうであったなら、その時初めて、ワンちゃん同士の挨拶の行動が始まります。お互いの匂いを嗅ぐという行動です。
このお互いのお尻の匂いを嗅ぎあうことは、犬同士の名刺交換という儀式なんですね。そこまでいけば、問題なくお友達になれるでしょう。
飼い主に注目させるとかおやつで注目させるということは、普段のしつけの中では当然のことですが。いつも飼い主さんに注目しているということを自然にしていれば、愛犬と飼い主さんの絆は深いと言えるでしょ
う。
この番組内では、普通の犬をみんな問題犬と決めつけて対応しています。普通の犬の心理状態をまったく無視して問題犬だと烙印をおさないで欲しいのです。
そして違うでしょう、危険では?と思った次の内容に関しては断固として、間違っていると申し上げましょう。
先生100人できるかな 〜北海道・帯広市〜
帯広市では、なんと無料で的確に犬のしつけを教えてくれる先生がいます。
愛犬ロンの鳴きぐせに悩むIさんを的確に指導するKさんは、一体何者?
しつけの先生は「同じ悩みを解決した飼い主」
Kさんの正体は、Iさんと同じ「かつて愛犬の鳴き声に悩み、それを克服した飼い主」。
犬は、100頭いたら100頭の性格、そして飼い主さんも100人いたら100人の性格があります。同じはかりでは測れないのです。それを、自分の犬で成功したしつけ方を、他の飼い主さんに伝えても、この飼い主さんと愛犬のしつけには100×100分の1のアドバイスでしかないのです。
必要なことは、愛犬の行動をまずはよく観察することです。愛犬が何を考え、何故このような行動を取るかを考えることが必要でしょう。お隣の飼い主さんと犬が、お隣の方法で素晴らしい絆が作れたとしても同じ方法で、ご自分と愛犬が絆を作れることはないのです。
あなたと愛犬との行動パターン、思考回路、飼い主さんと愛犬の関係をしっかり分析しないと、お隣から教わったしつけ方が、本当の問題行動を起こしてしまうことになりかねないことを知って下さい。
このようなご近所のにわか訓練士によってダメにしてしまった愛犬はたくさんいるんですね。
ご近所のにわか訓練士は、あちこちにいますが、安易にその方法を愛犬に試さないで下さい。
愛犬と飼い主さんの絆づくりは、飼い主さんが愛犬の行動を観察して理解したら次の方法が見つかるのですが、もしもそこまで観察できない飼い主さんだったら、本当に信頼できる訓練士さん、動物行動学を学んでいるトレーナーのアドバイスを受けて下さい。にわか訓練士のアドバイスは危険です。
そして最後に犬のお巡りさんですが。
犬を仲良くする防犯パトロール
熊谷市では、子供の防犯を目的に“犬のおまわりさん”というパトロール活動を実施。飼い主が「犬のおまわりさん」の文字が入ったバンダナを愛犬に巻き、子供の登下校に合わせて散歩するだけ。その手軽さも手伝い、現在、100人を超す輪に広がっています。
でも、なぜパトロールが「犬のしつけ」に役立つの?
しつけに役立つ(1)〜同じ仲間と分かれば犬同士を遠ざけない 散歩中、見知らぬ人に出会うと犬を遠ざけようとしがち。そこで、同じバンダナをつけ、仲間であることが分かれば、初対面でも、遠慮せず、犬を近づけることができます。
しつけに役立つ(2)〜犬同士でマナーを学ばせる
※相性が悪い犬には慎重に接して下さい
愛犬を他の犬に近づけられたら、あとは犬同士におまかせ。実は、犬には「集団の行動に従う」という習性があるため、例えば、鳴いている犬を大勢の大人しい犬の輪に混ぜると、「自分だけ鳴くのはバカバカしい」
と感じ、鳴き止むと言います。
しつけに役立つ(3)〜飼い主同士が仲よくなれば犬も仲よし
飼い主が互いに警戒を示すと、犬もそれを感じ取ってしまいます。逆に、飼い主同士が仲よくすれば、犬も「相手が危害を加えない」と分かり、友好的になります。
しつけに役立つ(4)〜犬を飼う前にしつけを教わる
スタジオに出演した高橋さんは、娘さんがパトロールの犬に触れ犬好きになったことがきっかけで、犬を飼い始めました。初めて飼う犬でしたが、飼う前に自分の家に合った犬種や、しつけの仕方をパトロールの飼い主さんから教わったため、しつけには困らなかったといいます。
地域の子供達の安全を守るためにも、愛犬とお散歩する時間をパトロールすることを併用出来れば、良いという考え方からワンワンパトロールは始まりました。
地域の子供達を守るために愛犬家も一役というのは必要なことです。
毎日、必ずお散歩で町中を歩いている愛犬家の方々は、町の子供達を守る目となるからです。
しかし、多頭数のパトロールは住民に驚異となります。
ワンワンパトロールで許容できるのではせいぜい5人〜10人くらいのグループで2頭でしょう。
それも大型犬と中型犬とか、組み合わせることが、犬が一緒にパトロールする適度な数だと思います。
それよりも、普段のお散歩中に子供達を見守る意識を持って散歩していれば、なにもパトロール隊という大義名分をつけなくとも貢献できると思うんですけど。どうでしょうか?
パトロールが「犬のしつけ」に役立つと言ってますが、たくさんの人達に囲まれてお散歩することになれるとは思いますが。これがお散歩だとしたら、犬にとっては楽しいはずのお散歩が楽しくないし、飼い主さんとの絆づくりにもならないと思います。
しつけは、飼い主さんと愛犬の1対1の相互のコミュケーションで出来るものだからです。
(2005/7/29)LIVING WITH DOGS