咬傷事故の実例と飼い主の対処

咬傷事故の実例と飼い主の対処

幼い時に、犬に追われ、咬まれた経験のある人は、犬嫌いになる傾向が大きいですね。犬嫌いの方が少しでも少なくなるように、出来れば咬傷事故を未然に防ぐために何が必要か考えてみましょう。咬傷事故は予期せぬ時に起こります。飼い主さんは、愛犬を過信せず、回りを注意深く、危険を事前に察知しなければなりません。
愛犬を守れるのは飼い主さんだけです。ましてや飼い主さんが巻き添えで大けがをする場合がおうおうにしてあります。どのような事情から咬傷事故が起こるかを検証してみましょう。ある医師が患者さんの咬傷事故の例をご提示下さいました。ご参考にして下さい。(LIVING WITH DOGS)


過去にかなりの数の「犬による咬創」を診ています。
「犬咬創」とは、酔っ払って犬をからかったとか、食事中に食器をさわったとか犬同士の喧嘩に割って入ったとか…。理由はいろいろですし、犬種もいろいろですが、ようするに犬が人を噛んだときにできる傷です。犬歯が当たった傷は軽くても穴あきになります。深さが1cm未満の傷ができます。数カ所に噛み傷があるときも、ほとんど犬歯による傷です。人間の指などは細いので、犬歯がきちんとその指の上に当たらなくても、犬歯とそのすぐ奥の小臼歯で噛み切られることがあります。
犬が物を噛んだり、犬同士でじゃれて相手の首筋を噛むときも顔をすこし傾けて、犬歯をつかっているのがわかります。
実際には想像している以上の、事故が起こっており、飼い犬による「咬創」も、重傷になるケースがあります。

[事例1]

女性、60才 | 犬、秋田犬、雌、3歳シーズン中
散歩中に放浪していたMixが近づき、喧嘩になった。リードが女性にからまり、止めさせようと犬の前に回ったところを飼い犬に噛まれた。顔の外傷は上口唇の裂傷、頬に5cmの皮膚欠損、耳朶の欠損、上腕に数カ所の咬創、右第5指欠損。
一瞬のことだったと女性は話してました。犬だけの喧嘩ならそのままなんらかの決着で済んだかもしれませんが、ここまでの重傷を飼い主に負わせてしまって、家族は愛犬の安楽死を選びました。
事故のあった日まで何の問題もなく、この家庭でかわいがられていました。女性は数回の形成手術をしましたが、傷跡はかなり残り、耳朶の形成は断念しました。 

[事例2]

女性、29歳 | 犬、ゴールデン、2歳、雄
河川敷でG.R.をオフリードで遊ばせているときに、リードが外れたハスキーが走ってきた。女性は犬を呼び戻し、それをハスキーが追ってきた。女性の目前で喧嘩になり、女性は自分の犬をかばおうと首に抱きついた。そこを、振り向いたGRに噛まれた。
右上腕の裂傷。ひじから肩にかけて、皮膚と筋肉までめくれ骨が露出。右手指の麻痺あり。右前腕の橈骨神経麻痺。服従訓練済みでトラブルはなかった犬とのこと。

[事例3]

男性、19歳 | 犬、柴Mix
小型犬を連れて散歩中、よその家の前に繋いでいた柴Mixに小型犬が吠え立てた。反応して柴MIXが飛び出したとき繋いであったチェーンがはずれた。喧嘩になり、男性は柴MIXを蹴り、小型犬を抱き上げようとしたときMIXに噛まれた。
後頭部から側頭部にかけての咬創。頭皮剥離。大腿部の咬創。一部皮膚欠損。

まだ、他にもこれに似たケースを見ていますが、中には命にかかわるような事故も起こっています。
犬どうしの喧嘩の仲裁方法をわたしは知りませんが、割って入るのは危険です。なんども上手くやっていたとおっしゃった方も、植皮をしなくてはならないほどの怪我をしてしまいました。万一、首に歯が当たったら致命傷になるかもしれません。

(新潟・K.Hさん)


 

さて以上をお読みになられてどう飼い主は対処すべきかを考えましょう。咄嗟の事故の場合は避けようにも避けられない場合がありますが、普段は良い子で可愛がられて育っている犬に飼い主さんが咬まれてしまうケースが多いのです。その犬は飼い主さんを咬もうとして咬んだ訳ではないにしても、安楽死を決断された犬もおりました。愛犬の命を奪わなければならないほど追いつめられた飼い主さんの心の痛みはどれほどでしょうか。

仕掛けられた喧嘩の場合

1. もしも咄嗟にオフリードの犬に喧嘩を仕掛けられたら、犬同士の喧嘩の仲裁に入ることは危険でしょう。

事故を未然に防ぐために

咄嗟ではなく、飼い主の注意次第で咬傷事故を避けられる場合もあります。事故を未然に防ぐため以下をご注意下さい。

1. 飼い主さんは絶対に自分の犬から目を離してはいけません。危険を前もって察知しましょう。

2. 犬同士を近づける場合、まずは飼い主さん同士が挨拶し、お互いが安全であるという行為を示しましょう。その後犬同士を近づけましょう。犬同士威嚇するつもりではなくとも、個々の犬の性格によって異なります。誰にでも愛想の良いワン、臆病なワン、シャイなワン、積極的なワン等々です。
愛想の良いワンは、みんなお友達と、どんなワンにも近づいて行ってしまうことがあります。臆病なワンはただそれだけでびっくりする事もあるのです。咬むつもりではなくとも傷つけてしまうこともあります

オフリードの犬が近寄って犬同士の喧嘩に発展

さて、上記のケースの場合からも判断が出来ることですが、オフリードの犬が近寄って犬同士の喧嘩に発展していくケースが間々あります。

公共の公園で愛犬をオフリードにされている方へ

公園に入っていきなりオフリードにすることはやめましょう。オフリードは、いくら信頼している愛犬でも、とっさに何があるか判らないのです。咬傷事故はあなたのような飼い主さんによって引き起こるケースが多いことをお考え下さい。飼い主としての責任をもう一度考え直しましょう。
(LIVING WITH DOGS)


[読者の方からのコメント]


私の経験や見聞した範囲でも最近このような事故(未遂)が多くなりましたが、ほとんどは飼い主の不注意又は、知識不足の結果のように思えて残念です。犬同士の喧嘩は避けられなくても、人への咬傷は知識があれば避けられます。事は人や犬の生死(安楽死処分も含めて)にも関わりますので、最低限飼い主の方に知っておいてほしいことがあります。

 

咬傷事故を防ぐために….

1. あなたは自分の愛犬を制止できますか?

自分の愛犬を良く知って下さい。吠えつく犬なのか、そうでないのか?
すぐ喧嘩するのか? 襲われたら逃げる犬か?
相性の悪い犬種はあるのか?等

又、愛犬が全力で引っ張った場合でも制止できますか?
女性が大型犬を連れている場合などで制止できないようであれば危険です。

2. リ-ドと首輪は確実ですか?

散歩中に相手犬のリードが切れた(糸の縫い目がほどけた)
例を1件、相手犬の首輪抜きに至っては数知れず経験しています。
「きつくしてはかわいそう」との理由で首輪をゆるめにする飼い主がいますが非常に危険です。(首輪を抜いて交通事故にあった例もあります。)
リ-ドと首輪はあなたの愛犬を制止させる最後の手段なのですから状態を常にチェックして絶対に抜けないようにして下さい。

もし犬同士の喧嘩になったら….

 

1. オンリード犬同士の場合

 

絶対にリードを離さず、満身の力で犬を反対方向に引っ張る。万一リードを離すと相手犬及び相手飼い主が非常に危険な状態となるので、絶対に離してはいけません。

2. オフリード犬同士の場合

 

どうしようもできないことを自覚して下さい。どんなことがあっても絶対に割って入ってはいけません。あなたの愛犬も相手犬も頭に血が昇っているので、近づいた者にはすべて咬みつきます。このことを知らずに(又は愛犬を制止できると過信して)大怪我をした例は山とあります。バケツと水があれば”ぶっかける”のがベストですが…

3. あなたの愛犬がオンリードで、相手犬がオフリードの場合

 

公園のオフリード犬や散歩犬が首輪を抜いて襲ってきた場合などですが、犬のサイズで対応が分かれます。
1) オフリード犬が愛犬に対して十分小さい場合
たとえば、コーギーがシェパードに挑んだような場合ですが、このような時は逆にコーギーが咬まれる危険性大です。あなたがリードでシェパードを制止しつつコーギーを牽制して下さい。
2)オフリード犬が愛犬と同等又は愛犬より大きい場合
危険です。すぐにリードを離して愛犬を自由にさせて下さい。リードを握ったままだと体にリードが巻き付き、咬まれる恐れがあります。又、愛犬の行動が制限されて、相手犬により咬みつかれやすくなります。

4. あなたの愛犬がオフリードで、オンリードの相手犬を襲った場合

 

これこそ、あってはいけないことです。公園などではいつ散歩犬が現われるかわからないので、オフリードには十分な注意が必要です。3.の2)の逆状況となった場合は、すぐに相手飼い主に「リードを離して下さい!」と叫んでリードを離させないと、犬だけでなく人をも巻き込んだ大事故になる可能性があります。もし、相手犬を怪我させてしまった場合は十分な償いをしなければなりません。くれぐれもオフリードにする場合は十分に注意して下さい。

喧嘩が終わったら十分に注意して犬の体をチェックして下さい。重傷ならもちろんですが、外傷がなくても行動がおかしかったらすぐに獣医の診察を受けて下さい。愛犬は肉体的な傷に加えて精神的な傷も受けるので、回復には長期のケアが必要となります。 

最後に繰り返しますが、犬の喧嘩には絶対に割って入らないで下さい。犬同士の喧嘩ならたとえ傷つけても賠償で済みますが、(犬を救おうと)割って入ったがために人が受傷した場合は必ず殺処分の話となります。犬は防衛本能で見境なく噛んだだけであり罪はありません。飼い主が「絶対に割って入ってはいけない」ということを知らなかったために自ら受傷し、さらに死なずに済んだ愛犬を殺すことになるのです。(2000/08/13)

(神奈川県・H.Wさん) 


 

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