旅先での咬傷事故
旅先での咬傷事故
楽しい旅先で、ふとしたことから、愛犬が咬傷事故に巻き込まれてしまった飼い主さんからご相談がありました。楽しいはずの旅行も気分は一気に不愉快になってしまったことでしょう。
愛犬を守るれるのは飼い主だけです。充分に注意をはらっても払いすぎると言うことはありません。
(LIVING WITH DOGS)
(相談者) 昨年の夏、長年欲しかった子犬(バーニーズ・マウンテン・ドッグ♀)を迎えました。昨年末12月15日に同胎の兄弟姉妹を飼っている飼主さんファミリーと山梨県清里のペンションで集まりを持つため、主人と私、愛犬で東京から清里に車で向かいました。
清里に到着したのがペンションのチェックイン時間より1時間ほど早かったため、清泉寮に立ち寄って、ソフトクリームなど食べ、愛犬を散歩させました。
そろそろペンションに向かおうと駐車場に行くと、もう一台の車が入ってきました。閑散期なので、他に駐車してあった車は2台程度でした。車の中から犬が吠える声がしたので、どんな犬が乗っているのだろうとそちらを見ていると、いきなり飼主より先にゴールデン・リトリバーが車から飛び出して来て、私がリードを手にしていた愛犬に飛び掛りました。後から犬の飼主(女性)が車から降りて来て、犬を抑えましたが、詫びるより先に、「オスですか? メスですか? うちの犬はメスには噛み付かないんですが。」と言いました。そのG.リトリバーはオスで、赤いバンダナを付け、飛び出してきたときにはリードも付けていませんでした。
我が愛犬を見ると、鼻に噛まれた傷ができていたので指摘すると、もう一人の飼主(男性)が車から降りてきて、きたない軍手のような手袋をはめた手で、傷を触ろうとします。うちの主人が思わず「何をするんだ!」と叫ぶと、男性は「すいません」と言い、傷薬の軟膏を差し出しました。念のため男性に電話番号を尋ね、当方の電話番号もメモして渡しました。
帰京してからかかりつけの獣医さんに診ていただき、抗生物質の内服薬を処方していただきました。傷は治ってきましたが、跡はまだくっきりと残っています。
もらった電話番号はデタラメかもしれないと思いましたが、電話してみると、N市A区に開業する医師でした。「獣医さんに診ていただき、抗生物質を処方していただきました。こういう場合、治療費は噛んだ犬の飼主が負担するのが妥当と聞きましたので」と\\3,360の治療費を請求すると、「うちの犬が噛んだという証拠はだせるのか。噛まれた傷だと証明できるのか。」と言うので、「どうぞ獣医さんにお問い合わせください。」と獣医さんの電話番号を伝えました。保険を使うというので、診療の領収書を送りましたが、三週間以上たっても何も言ってきません。
無責任な飼主にでくわした災難とあきらめるしかないのでしょうか?
こんな飼主って、多いんでしょうか?
(LIVING WITH DOGS) 残念な出来事に遭ってしまいましたね。
Iさんの愛犬の傷が一日も早くきれいに治ることをお祈りしています。この事故では、GRの飼い主さんは、たくさんの間違いをしています。
1. 車から降ろすときに待てのコマンドが効かないこと |
これは犬の飼い主としてマナー以前の問題でしょう。どんな事情であれ、相手の犬を咬んでしまったのは加害者側の責任です。こんな情けない飼い主さんばかりではないです。おそらくこの飼い主さんは愛犬のしつけを間違ってしまった上に、ご本人のマナーも不足しているんでしょう。
では咬んだGRはどんな状態だったか分析してみましょう。
おそらく、この犬は興奮する性格の持ち主でしょう。はじめて場所に興奮、はじめて見た犬に興奮、嬉しい、怖い、どうしたら良いか制御出来ない状況だったのでしょう。このGRの飼い主さんは、自分の犬の性格を知っていたことと思います。その上で、オフリードでいきなり車から降ろすことは、無謀ですね。訴訟に持っていくことは可能でしょうが、しかし、その現場で第3者が目撃しているかが必要です。また、そこまでするかどうかです。
(相談者) 残念ながら、噛み付きを目撃していた第三者はいませんでした。そのため、加害者はこのような態度をとっているのだと思います。訴訟は難しいかもしれませんね。また、確かにそこまでするかという問題もあります。しかし、このような人間が、「医師」を名乗り、どのような「医療」を行っているか考えると、腹が立ちます。私は大学院で公衆衛生を学びましたが、電話での会話から察すると、感染症に関する知識はかなり低いようでした。自分の愛犬が何の予防接種を受けているかも、「家内に任せているから」と言って、答えることができませんでした。
(LIVING WITH DOGS) きっと、加害者の方も、医師とは言え、専門分野が異なるのかも知れませんね。お腹立ちは充分に理解できますよ。このような咬傷事故は、加害者側がどれだけ誠意を見せるかに尽きると思いますが、残念ながら、GRの飼い主さんはそんな気配が全くないようですね。
肝心なことは、加害者側、被害者側も、愛犬を過信しすぎてはイケナイと言うことです。
いつ、何が起こるか判りません。未然に事故を防ぐためには、犬同士の付き合い方、周りの観察、飼い主は常に愛犬の安全のために注意していなければならないのです。
GRの飼い主さんは、その注意を怠っていました。
では被害者である、Iさんはどうでしょうか?
不意をつかれてしまったということはありますが、どんな犬が乗っているのか見ていたとありますね。
Iさんの愛犬が近寄っていった訳ではないとは判りますが、Iさんにはどんな犬だろうと言う興味があったということでしょう。
友好的な犬だと期待をしていませんでしたか?
もしもこの時に危険だと判ったら、その場にはいず、車に待避する事は可能だったと思います。
どんなにしつけが完璧に入っている犬でもはじめての場所、はじめての犬に出会うことは、一応気をつけなければなりません。それを忘れていませんでしたか?
Iさんの愛犬は夏に迎えたばかりと言うことですから、まだ1才未満ですね。どんな犬にでも遊んでと近寄っていったりする年齢です。
これからは、はじめて出会う犬は、まずは飼い主同士が言葉を交わし安心を愛犬に伝え、お互いに危険ではないことを確認してから近寄るよう、是非お勧めします。
(相談者) 私の愛犬は事故当時生後7ヵ月、現在8ヶ月です。おっしゃる通りどの犬とも遊びたがる盛りです。残念ながら、私には車から人間より先に犬が飛び出してくるというのは、予測できませんでした。いろいろな飼主がいて、それに応じて様々な事態がありうることを予測しながら対処していかなければならないのですね。
(LIVING WITH DOGS) その通りです。どんなに安全と思われる場所でも何があるか判らないですから。また、1才未満の愛犬が、今回の事故が元でGR恐怖症になってしまった可能性がありますので、今後のリハビリには充分注意された方がよろしいですね。ご近所に友好的なGRがいたら少しづつお友達になるようにしてみて下さい。その時は、飼い主さんであるIさんが怖がらず接することが大切です。「この子なら大丈夫だよ」と安心感を持たせた上で一緒に遊べるよう、そんな機会をつくってあげて下さい。
(相談者) 今回のことで、他の犬を恐がるようになることが一番心配でしたが、幸い今のところ大丈夫のようです。近所に仲のよいGRもいます。しかし、公園などに散歩に出掛けますと、改めて注意しなければならない飼主が多いことを痛感させられます。小型犬・中型犬だからと、放し飼い禁止の公園で平気でノーリードで遊ばせています。飼主は「うちの子は噛み付かない」とか言いながら、犬は吠えながらこちらに向かってくることもよくあります。確かに非常識な飼主を見たら、その場を立ち去るのが唯一の防衛手段なのでしょう。
(LIVING WITH DOGS) まずは防衛手段です。そして、無軌道な飼い主さんには危険ですよと、声をかけて下さい。逆切れされる場合もありますので充分に見定めてからの方が良いと思いますが。
残念ながら、咬傷事故はこのような飼い主さんによって起きているんですね。どんな地域にも必ず、自分の犬を過信して無軌道に振る舞う飼い主さんがいます。
日本は、公園や公共の場所でのオフリードは禁止されています。しかし、早朝の誰もいない公園や、広場では、訓練のためオフリードにすることもあるでしょう。これは飼い主の責任で行うべきでしょう。
咬傷事故となった場合は、加害者側は被害者に対して誠意を示すこと、愛犬のしつけを見直し矯正する事、被害者側は自己の不注意を反省すること。双方が歩み寄らなければ解決しません。
一番の被害者は、双方の犬たちなのです。加害者側の犬は飼い主からちゃんと教えられていなかったことが原因です。いつ、Iさんも加害者側となるかも知れません。それを充分に考慮して愛犬を守れるのは飼い主だけであることを改めて確認して下さい。
(2002/01/08)(東京都、S.Iさん、LIVING-WITH-DOGS)