飼い主の権利と義務
飼い主の権利と義務
LIVING-WITH-DOGSでは、これまで敢えて避妊去勢について考え方を掲載しておりませんでした。それは、避妊去勢を施したからと言って飼い主さんが、しつけなければ何も解消しないからです。また雄犬の去勢の時期、雌犬の避妊の時期にもよって様々な要素が出てきます。
しかし本音としては、日本はそれでなくても犬が多すぎますから。バックヤードブリーダーを減らす為には家庭犬はすべて避妊去勢を施して欲しいと思います。
以下に、ある飼い主さんと避妊去勢について、また捨てられる犬たちへの思いをメールで話し合いました。皆さんはどうお考えになるでしょうか? ご参考にしていただければ幸いです。(LIVING WITH DOGS)
(Mさん) はじめまして、いつも拝読させて頂いています。様々な視点から、考えてくださっているLIVING-WITH-DOGSさんのご意見をお聞きしたく、メール致します。
雄犬と、雌犬の飼い主の考え方の違いについてです。我が家の雌犬(大型犬ミックス・避妊済み5才、4才)に、初対面の雄犬が異常に執着してくることがよくあります。挨拶程度であればまったく問題がないのですが、あんまりしつこくニオイを嗅がれたり、なめられたりると、「ガゥッ! 」と、一喝してします(噛む事はありません)。それで、逆ギレする子は今までいままでいませんでしたし、しつこくするのを止めてくれるので、私はウチの犬が怒る事をいつも放っておいている状態です。しかし、本当に良いのかな? って、考えてしまったんです。
犬同士の関係上では、問題は起きていない様に見えます。しかし、飼い主さんは色々な人がいます。”大切に”飼われている方にとっては、腹立たしい思いをしていらっしゃるかもしれません。…でも、本当は我慢させるのも、叱る事もしたくないんです。私が、ウチの犬の行動を“正しい”と認識してしまっているので。どう考えるべきでしょうか?
(LIVING WITH DOGS) Mさんの愛犬にとって、初対面の雄犬に対して「NO」という態度をとることは犬として当然のことです。
我が家の犬、9才避妊済みも同様にします。どんなにおとなしい犬でも、まず初対面の時は、遠くから観察し、飼い主同士が挨拶を交わし、危険がないと判断してから近づくものです。
特に年上の雌犬は、若い相手の犬、雌雄に関わらずですが、犬同士の付き合い方を考えて近づきます。その順序を踏まず、相手の男の子の飼い主さんがもしも知らないで近寄らせたら、私は、ちょっと待って下さいと言います。
特に若い雄犬の場合には、「うちの犬は、いやだと怒りますけどいいですか?」と飼い主さんに申し上げます。
そうすると「すみません! 」とはじめて気づかれるんですね。
飼い主さんにそのような知識がなく、犬が来たらすべてお友達と近づけてくるような飼い主さんには、我が家も、誰にでも近づけては危険ですよ。とお話をします。我が家の犬は決して咬んだりはしませんが。嫌だという意思をはっきり示しますので。
そして次回からは、その飼い主さんはむやみに近づかないようになります。
(Mさん) また、発情期の雌犬について色々ご意見を聞きます。私は、発情期の雌犬は基本的に外出禁止(にしても、寄ってきますが…)だと、思っています。
(LIVING WITH DOGS) 未避妊の雌犬は、お散歩の時間帯を変えたり、たくさんワンが来るような公園には連れていかないというのは当然のことですね。また受胎可能日と言われる数日間は、極力表には出さない事で、間違って妊娠してしまうことも避けられるでしょう。これは雌犬の飼い主さんは当然のことと受け入れていますよね。
(Mさん) しかし、こういう場合に発言していらっしゃる”去勢していない雄犬”の飼い主さんのご意見には「?」って、思ってしまうんです。
(LIVING WITH DOGS) まさしくその通りだと思いますよ。雄犬の飼い主さんは、去勢手術を受けさせることを真剣に考える飼い主さんは雌犬の飼い主さんに比べて少ないと言えるでしょう。
(Mさん) なんだか、全部人のせいにしているような気がして。去勢せずに、飼うということは、それなりにしっかり犬を把握すべきだと思うんです。
(LIVING WITH DOGS) 未去勢の雄犬でもしっかり管理できる雄犬は確かにいます。それは飼い主さんが真剣にしつけているからですが。実際には、そこまでのしつけを出来る飼い主さんはまだまだ少ないと思います。
思春期を越えてしまった雄犬が去勢手術をしても、同じようなマーキングやマウントをします。これは一度覚えてしまったら終生忘れないからなんですね。思春期を迎える前から、犬同士の付き合い方、雄犬なら雌犬に対しての付き合い方を飼い主さんがしっかり教えなければならないと思います。と言うよりは、年長の犬から教えて貰う方が早いかもしれません。
(Mさん) 雌犬のニオイにつられて脱走”なんてのは論外ですけど、道で会った時にでも、我を忘れないような子にしておく。というのは発情期の雌犬を外に出さない事と、同じくらいのレベルのマナーではないでしょうか? それが出来ないなら、去勢すべきだと思います。実際問題、雄より、雌の不妊手術の方が費用もリスクも高いのですから。
(LIVING WITH DOGS) その通りです。雌犬と見たら、避妊していようがしていまいが、がむしゃらに来るような雄犬は、飼い主のマナーが全くないと言っても過言ではありません。雌犬でも同じように誰でもお友達としつこくする子もいます。これも同様です。幼児期に、犬同士の付き合い方を年長犬から教えて貰ったことがある犬はそのような行動はとらないんですね。
我が家の犬は、幼児期に2才年上の雌犬に犬同士の付き合い方を教えて貰いました。その教えは、とうてい私達が教えることの出来なかった事です。
ペットショップで40日〜50日くらいに売り出しますから、そのような社会性を学べる機会が少ないんですね。そこが大きな問題の一つでもあると思います。
(Mさん) 私は、雄犬の飼育経験がありませんし、ヒトの男性は去勢に対して生理的な嫌悪感を抱かれる方がいるようなので、考えや、思いを計り兼ねています。どうか、ご意見をお聞かせ下さい。
(LIVING WITH DOGS) 雄犬が大好きという方は、飼い主に従順である。(雌犬に比べより従順)とよく言われますが。雄犬を飼い始める方は、ヒートがないことも理由の一つとするのではないでしょうか?
昔は、間違って出来ちゃって困ったという雌犬の飼い主さんがいましたから。私は子供の頃からたくさんの犬と暮らしましたが、その間違って出来ちゃった出産を何回か見ています。里親を捜すのにとても苦労し、雌犬は子供心に大変と思ったことがありました。
雄犬の飼い主さんって、特に男性の飼い主さんは、去勢を施すことを自分に置き換えて考える方が結構いるんですね。(笑)
日本の宗教観から、避妊去勢を施すことを自然ではない、健康な身体に傷を付けてまでなぜ? と言うような考え方をする方がまだまだ多いのが現実です。そんな宗教観から雄犬ならば、去勢しなくてもと考えるんでしょうね。
だったら、「マナーを入れましょう」なんですね。そこに気がつく飼い主さんがまだまだ少ないのが現状なんです。
(Mさん) 今回アドバイス頂けて、より良き犬飼いになれるように努力していきたいと思っています。”権利と義務”と、よく聞きますが、権利ばかりを主張しすぎていることに気付けないことって、よく感じます。犬の大嫌いな人が、たくさん居られる事を認識しなければ、本当に犬飼いにとって、住み良い暮らしはできないと、私も思います。
(LIVING WITH DOGS) 特にドッグラン要望する方々は、充分に愛犬にしつけを入れられなくて、呼びが効かないけど、安心して遊ばせたいという飼い主さんが多いんですね。
日本は、どんな場所でも法律的にはオフリードは禁止されています。
地域にドッグランが出来ることは望ましいことではあるのですがその前に、ちゃんとしつけて、マナーある飼い主でなければ、その出来たドッグランは無法地帯になりかねないのです。また、ドッグランが出来たら、犬はドッグランで遊べと、公園から閉め出されてしまう危惧もあります。
犬と人の暮らしがクローズアップされてきてから、犬飼いの権利を主張する方々はほんとに増えてきました。権利と義務は表裏一体であること思い出していただきたいですね。
義務を全うできない飼い主さんがまだまだ多い中で、その権利の主張は、犬嫌いの方から見たら、とうてい許せないことでしょう。
(Mさん) 避妊手術について、様々意見がある事は知っています。これも、“権利と義務”だと思います。それでもなお、私は「すべきである」と考えます。義務を果たさないで、権利ばかり主張する人の方がずっとずっと多いからです。(特に田舎では”あたりまえ”の状況です)
他のこまかい事は譲れても、素人繁殖家や、雑種の子犬の里親募集を見るたびに、保健所で殺処分される犬の現実を知るたびに、義務を果たす犬飼いの人が、どれほど悲しい辛い思いをしているか。権利ばかり主張して、犬を虐待している事に気付かない人をも、許容してしまう事にもなりかねない意見には、賛成する事ができません。
自治体も、どれほどの税金が、犬猫を殺処分するのに使われているか、どうんなふうに、何頭殺しているのか公表してみれば、納税者も身近に考える事ができるのではと考えてみたりします。
(LIVING WITH DOGS) このような現実は、インターネットの普及から、少しづつではありますが、事実を知る機会が増えてきています。しかしインターネットに出会えないような人もまだまだ多いのです。真実をより知らしめていくために、日本中の犬の飼い主さん、犬と暮らしていないけど動物が好きな方、そして犬が嫌いという方々に見て欲しいと思うのが、「どうぶつたちへのレクイエム」です。
児玉さんの「どうぶつたちへのレクイエム」写真展が全国あらゆるところで開催され、事実を広めることが必要でしょう。 写真展「どうぶつたちへのレクイエム」
また、今、日本で異常に増えている「テーマパーク」の問題があります。テーマパークに行こうと思っている方々に、一言、「テーマパークって何?」と問いかけていただければと思います。
(Mさん) ドッグランは、少し前までは、なんて楽しい施設でしょう! とか、思っていたんですが。
しつけの事、マナーの事、様々な伝染病の事が話題になり、ちゃんと真剣に考えさせられてからは、たぶんもう行かないだろうと思います。それに関東方面まで行かなければ、ないですし。(笑)
テーマパークや、”ワンワン動物園”の類、ビジネスマン向け雑誌には、「これからの急成長ビジネス!」とかいって、載っていました。(同じ雑誌で、山梨の元イベント犬のレスキューの特集もしてるんだから 呆れるというか…、言葉を失ってしまいました)
実は、去年のGWに行きました。あそこに、もう一度、行ってみたい。と、思う人がいたら私は是非お話を伺ってみたいくらい、あのテーマパークのシステムすべてが、犬好きの神経を、逆なでするように出来ていると感じました。
それ以来、ファームパーク系を巡廻する”わんわん動物園”にも、腹立たしく、悲しい思いでいっぱいになります。
「どうぶつたちへのレクイエム」地元で開催された時に、見に行きました。もう殺されてしまった子達の、視線は忘れられません。どんなに訴えても、戻っては来ない子たち。
彼らには、どんな落ち度もないのに…。
どうか、あの子達の訴える眼差しが、捨てられる命を、1頭でも救う事ができますように。
たくさんの人に、あの子達に会って欲しいと思います。
(2001/08/19)(島根県、M.Yさん & LIVING-WITH-DOGS)