第一回 LWDセミナー「日本の犬の未来を考える」 レビュー

第一回 LWDセミナー「日本の犬の未来を考える」 レビュー


1部 「動物愛護の現場から日本の犬たちの状況、山梨犬捨て山を通して語る」 (マルコ・ブルーノ氏)

欧州の犬と日本の犬の暮らしの比較をスライドで紹介。山梨の犬たちの現状等を通して日本の犬の飼い方、虐待の実態を説明下さり、基本的な犬との暮らし方、しつけ方。「良い飼い方をしていたら、犬は良い表情をしている。」もしも虐待だと思うような飼い方をしていたら、保健所や、警察に勇気を持って告発していこう。
 


2部 「繁殖、流通、ペットビジネスの現状」 (坂本徹也氏)

環境省の規制強化の話。ペットショップ・クレーム調査。動物取扱主任者の話。具体的な劣悪なペットショップの実態。繁殖生産の数のマジック。ペット流通の仕組みと経路。生体展示を行わないこれからのペットショップとは。虐待の定義。


3部 パネルディスカッション「日本の犬の未来を考える」

参加 : マルコ・ブルーノ氏坂本徹也氏JAHD 友納由美氏WAN WAN PARK 木下紗也珂氏シンビオシス実行委員会 田中真澄氏、司会 LWD牛島

日本動物遺伝病ネットワーク(JAHD)を冒頭にて紹介し、ディスカッションに入る。山梨の犬たちの今後、シェルターについて、レスキュー活動、インスペクターを日本に作るには?の話題から、今、私たちにできることについて語った。 


■主催者から

今回のセミナーにご参加いただき誠にありがとうございました。
反省点としては、講演時間・質疑応答時間がもう少し欲しかったということ、パネルディスカッションでは、十分な話題の展開や議論が交わされなかったことが残念でした。次回はこれらの点を踏まえてより、講師と参加者の間のやりとりがうまくいくよう、改善していきたいと思います。
また参加者の皆様からアンケートにあたたかい励ましのコメントをいただき感謝しております。
なお、今回のセミナー開催に際しまして、講師であるマルコ・ブルーノさん、坂本徹也さん、サポートいただいた ALL ABOUT JAPAN (犬ガイド) 坂本光里さん、WAN WAN PARK 木下さん、秋田さん、JAHD 友納さん、シンビオシス 田中さん、どうもありがとうございました。

(2004/06/29)(LIVING WITH DOGS)


■エッセンス

マルコ・ブルーノさんのお話から

LIVING WITH DOGS から、講演内容の中で特に注目した部分をエッセンスとしてご紹介いたしましょう。
セミナーの内容は、
オールアバウト・ジャパンの記事をご参照下さい。

マルコさんからのお話の中で、欧米の犬たちの暮らしと日本の犬の現状 比較は、雲泥の差です。悲しいかな、日本の犬たちの暮らしはマルコさんが撮った写真のようなケースがまだまだ多いと思います。

マルコさんが長年にわたって1頭づつレスキューし、飼育環境の改善を 行っている「山梨の犬捨て」は、当初、飼い主と言われる不動産屋の 男性が、どんどん犬を増やしたことに原因していますが、商売の為に犬 を利用した。とマルコさんからの説明がありました。

そこで参加者のお一人が「不動産屋がメリットになる、どういうメリットですか?」と、質問して下さいました。

 回答 : 「日本経済のバブル期、山梨の山の土地も別荘開発の対象となった が、田舎の昔からの土地の境界線は曖昧なため、自分の土地であるという既得 権を得るために、犬をその場所において主張したこと。地元の噂によると、近隣の別名義の 土地を得るために犬をその場所に置いて吠える、臭いと言う状況にして土地が売れないようにし、土地の値段が下がった時に、安く買い取りしようとした。土地の買い占めのために犬を利用した。」

当初、この土地に置いた犬たちは、この不動産屋が自分で連れてきた犬たちでした。もちろん避妊・去勢なぞせずに野放しの状態でしたから、その場で繁殖し増えていきました。

しかし、その後は、あちこちからこの土地にわざわざ捨てに来る飼い主が増 えていったのです。中にはマラミュート、ハスキー、ゴールデン、ラブラドールと言うような純血種も多くいました。

また飼い主が、この不動産屋に金を払って犬を引き取ってもらうようなこともあったそうです。だから一番多いときは400頭以上になっていたんですね。

現在は地元の動物愛護団体の協力で避妊去勢手術も進み、新しく生まれる子犬はほとんどいません。完全に増えないと言い切れないのは、森の中へ逃げ出し、野生化している犬たちの去勢しきれないと言うことがあると思うからですが。一時よりは生まれる命はかなり少なくなったと言うことでしょう。

 たくさんの犬たちが、新しい里親さんの元へ行き、幸せな生活を送っていますが、まだ200頭ほどの犬たちが、この犬捨て山で暮らしています。中には、飼い主に裏切られ、絶望的な人間不信の犬もいます。おそらくすべての犬にあたたかい家庭は無理なことでしょう。

もし、この土地の所有権に関して異変が生じた場合、マルコさんは、この土地を買い取り、最後に残った犬たちのサンクチュアリーとしたいとお考えのようです。ほんとに頭の下がる活動です。

(2004/7/16)(LIVING WITH DOGS) 

坂本徹也さんのお話から

LIVING WITH DOGS では、講演内容の中で特に注目した部分をご紹介いたしましょう。
セミナーの内容は、
オールアバウト・ジャパンの記事をご参照下さい。

繁殖生産の数のマジックとして、環境省発表の「ペット動物流通販売実態調査報告書」(2002)のデーターをもちいてお話をされました。アンケートで回答のあった業者からの数字では、2002年に日本のペット繁殖業者は現在約1300軒、推定15万頭が「生産」されたことになっているとのことでした。

このうち流通に乗るのはわずかに9万7800頭(65.2%)、消費者(飼い主)にとどくのは7万7000頭(51.3%)という数字です。半数が虐待に等しい環境や無理な搬送などで、病気か何らかの理由で命を落としていると言うことを坂本さんはお話くださいました。

LIVING WITH DOGS としての注目した事柄は、ここでの環境省の数字はあくまでもアンケートに回答した一部の繁殖業者が流通に乗せた子犬の数字だけであると言うことです。

そこでJKCの登録頭数はと疑問に思い調べてみますと、JKCの2002年の登録頭数は147犬種、523,530頭です。JKCに登録するのはブリーダー、または自家繁殖のペットショップ、うちの子の赤ちゃんを見てみたいというバックヤードブリーダーが登録します。JKCの登録は、実はこのバックヤードブリーダーが繁殖した犬たちが多いことが実状です。

環境省の数字は確かに流通の状況を数字で表してはいますが、しかし、その5倍以上の子犬が本当は生産され流通していると言うことでしょう。

ペットショップがバックヤードブリーダーの受け皿となっていることは確かなことですが、ある大手のペットショップでは「プチブリーダーになりませんか?」と飼い主さんに繁殖を勧めています。
バックヤードブリーダーが生産した子犬は、ペットショップで売られ、売れない場合は逆に競り市にかけられます。近ごろでは、店舗の必要のない、インターネット通販を通して子犬をさばいているのが現状でしょう。

数字では表せないバックヤードブリーダー生産の子犬達のどれだけが、幼い命を落としているかは想像も出来ませんが、計り知れない恐ろしさを感じるのは私だけではないでしょう。    

(2004/07/17)(LIVING WITH DOGS) 

JAHDのご紹介から 

ラブラドールの股関節形成不全について

特別ゲストであった日本動物遺伝病ネットワーク(JAHD)の説明の中で、ラブラドールの股関節形成不全のデータを示して説明がありましたが、その中でLIVING WITH DOGS が最も注目したことがありました。

99年にLIVING WITH DOGSは日本盲動犬協会の公開セミナーに参加したことがありました。質疑応答で、私は思いきって質問しました。「盲導犬として、主にラブラドールの活躍がめざましいのですが、盲導犬として適正のある犬種に多い遺伝性疾患、股関節形成不全がありますが、盲導犬協会としてどのようにお考えですか?」
日盲の代表は「確かに、盲導犬として繁殖した犬たちの中で股関節形成不全の犬たちがおります。この状況を是正したいと現在鋭意対策を行っております」と回答されました。

なぜ、私がそのような質問を行ったかですが、我が家の犬が幼いときに、お散歩友だちであったラブラドールの出所元がある盲導犬協会でした。いわゆる、盲導犬のラインで生まれたが盲導犬にはなれなかったリジェクト犬でした。

その犬は大柄な雄犬です。我が家の犬と、早朝の公園や、お散歩中にあえば、ご挨拶からはじまり、クンクン、そして、一緒にはしりました。
犬がたくさん集まる公園で、犬同士のプロレスごっこは若い犬たちにとっては楽しい遊び方の一つでした。しかし、この犬は、ある時プロレスごっこをした後で、後ろ足に異変が起こりました。突然痛がって歩かなくなったのです。

飼い主さんは、この犬を心から愛し、また出身の盲導犬協会には、この子が今どうしているかの報告を欠かさずお知らせするような飼い主さんでした。

飼い主さんは、もちろん獣医さんに診てもらいましたが、その診断は股関節がしっかりしていないと言うことでした。当時93年頃、OFAやペンヒップという知識も一般的ではありませんでした。
飼い主さんは、この子の為に、家の中はすべて絨毯を敷き詰めました。毎日、何時間もこの子の足の運動の為に軽いお散歩で筋肉を強化しようと努力していました。

しかし、徐々にこの子は歩くことを嫌がってきました。それでも飼い主さんは30Kg以上の愛犬を抱いて、おぶってお散歩を続けていました。

その姿から私は、盲導犬候補生だったこの子が、股関節形成不全であるという事実を見て、実働犬の中で、このような症状がきっと出ているのでは?と不安に思い敢えて質問をしたのでした。
大変前置きが長くなって申し訳ありませんが、ワーキングドッグがこのような遺伝性疾患をもって生まれてしまうことに愕然とし、悲しみと同時に何故? という疑問を持ったからでした。

その頃、ラブラドールの股関節形成不全の発症率が80%? とも70%? とも言われていました。
今回のセミナーで、JAHDが進めた活動の成果の一つとして、盲導犬の股関節形成不全率が大幅に改善したという発表が行われました。

この事実に私はびっくりすると共に嬉しい内容でした。JAHDの代表である陰山先生にあらためて敬意を表したい、感謝の気持ちをお伝えしたいと思いました。
その後で確認したことですが、盲導犬協会の犬たちの検査は無償で行ったそうです。
家庭犬の場合、飼い主さん達の要望がなければ検査できません。

しかし、検査をしなければ日本のラブラドールやゴールデンリトリバー、他の犬種もですが、遺伝性である股関節形成不全は減っていかないのです。
股関節形成不全の因子を持つ純血種の飼い主さんにお願いです。是非、進んで検査・登録をしていただきたいと言うことです。日本の犬たちの幸せのために。

Ext_link日本動物遺伝病ネットワーク(JAHD)

(2004/07/18)(LIVING WITH DOGS)

 

 

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