泳げないゴールデンレトリーバー


泳げないゴールデンレトリーバー


94年、6年前のことです。我が家は犬を迎えることが出来ました。憧れのゴールデンレトリーバー、名前はハイジです。彼女は飼い主さんの都合により訓練所に預けられ、飼い続けることができない環境にいた犬でした。私は、これからハイジとどのように生活していこうか? どこに遊びに行こうかと期待と喜びで夜も眠れないくらい興奮したことを思い出します。

彼女が来るまでにゴールデンレトリーバーに関する本を読み、知識だけは豊富にありました。「レトリバーだからとりあえず海にでも行って泳がせてみようか…」と気楽に海に行ったのです。場所は九十九里。沖から波がせり上がって迫ってきます。その光景を見て恐れおののいたハイジは、波に向かって吠え岸辺にも近づこうともしません。どうやら私はハイジに水への恐怖感を植え付けてしまったようです。
犬は泳げるものだと思いこんでいた私もびっくりです。実際子供の頃に飼っていた犬達は誰が教えたわけでもなく自然に泳いでいました。それ以降も海へのお散歩を継続し続けました。すぐに波打ち際で遊ぶようになりましたが、泳ごうとはしません。どうやら足が水中で地面から離れるのが嫌な様子です。

そのころ友人がラブラドールを飼いはじめました。ゆきの場合は、川に連れて行ったらいきなり泳いだそうです。「よし! 川だ!!」と思った私はゆきが泳いでいる川にハイジを連れて行きました。 川ではゆきが嬉々として泳いでいます。ところがハイジはゆきがレトリーブしてきたものを岸辺で待ち構え、奪い取り私の所へ持ってくるありさまです。やはり泳ぐ気配はありませんでした。
ハイジは生後3ヶ月で訓練所に入り、5ヶ月の時に我が家の犬になりました。成長過程の幼い大事な時期を訓練所で過ごしたことが、この子のおどおどした態度として現れているのではと思われるのです。
特に金属音には異常に反応します。私は、なんとかしてハイジに自信と誇りを取り戻してあげたい、なんとしても苦手な泳ぎを克服してほしいと願いました。

そんなある日、埼玉県の名栗村にあるカヌー工房へ偶然立ち寄りました。カヌー工房では、犬連れのカヌーイストのためにカヌー犬教室を開いていて、泳げない犬も指導してくれるという掲示板の張り紙を見たのです。これだと思いました。
以前からカヌーに興味がありましたし、ハイジも一緒に楽しめるかも、ひょっとしてハイジが泳げるようになるかもしれない、と思い意を決してしばらく通うことにしました。

そしてとうとうカヌー初日。危険防止の為、人も犬もライフベストを着用します。そこで私は湖に入り、水中から岸にいるハイジを呼んで誘導してみようと思いつきました。それでも、ハイジの心の中にある最後の壁がどうしても越えられないのです。
半日がすぎもう諦めかけたその時、急に水に入りわたしに向かって泳いで来ました! 今にも溺れそうな泳ぎでしたが初めて自分の意思で泳いだのです!

その場にいた人達みんなが拍手でハイジを称えてくれました。私自身は涙で滲んでハイジの姿がおぼろげなのに、ハイジの顔はとてもうれしそうで誇らしい表情をしていることを感じたのです。

その後1年間、私はカヌーの練習、ハイジは泳ぎの練習を続け、私はマイカヌーの製作にはまり、ハイジは水難救助犬の訓練を始めました。消防署とカヌー工房との合同による水難救助の訓練の時には私を助けるのではなく、他の人をレスキューするまでになりました。ハイジは自信と誇り、そして勇気。限りない私への信頼と愛情を表現してくれるようになりました。ハイジと共に悩み、考え行動していたら、すっかりOut Door Lifeが身についたようです。これからまた新しい何かをハイジと挑戦したいと考えるのが今の新しい悩みです。(笑)
みなさんも愛犬と一緒に、何かやってみませんか? もっと絆が深まることでしょう。(千葉県・M.Yさん )

 

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