あるバックヤード・ブリーダーの実態
あるバックヤード・ブリーダーの実態
ある飼い主さんからの投稿が元で、その犬の出所を何度かメールのやりとりをしながら伺いました。バックヤード・ブリーダーの実態を明らかにするべく、この飼い主さんのご協力を得てここに顛末を記します。このような繁殖は許されるものではありません。しかし、このような安易な繁殖はあちこちの掲示板で大手を振ってまかり通っています。
これをやめさせるには世論を高めて行くしかないでしょう。実際にあった、またどこにでもあり得る話ですが、経緯を追って見て下さい。そしてこのような繁殖者からは絶対に購入しない知識を持ちましょう。そしてこれを読まれた貴方がこのような安易な繁殖を行わないためにも。(LIVING WITH DOGS)
[経緯]
序 章
はじめまして、こちらのサイトにはよくお邪魔させていただいています。2003年2月生まれの我が家の2匹目のダックスは生まれつき前足が奇形です。
でもそんなことはおかまいなしでとっても元気に暮らしております。2匹目Aのお里は無知な安易な繁殖によりAを生み出してしまったとしか思えません。そして、奇形児が2匹も生まれたことに対して、まったく自分を責める事なく、あっけらかんとしていて、本当に犬が好きなのか、よくわからない人です。Aがなぜ奇形で生まれてきたのかはっきり判りません。写真でしか両親犬を見ていませんし、遺伝学も詳しくないからです。
そもそもAはネットの里親掲示板に足が曲がった犬であると出ていた犬です。
私がAの里親にと名乗りを上げると、帰ってきたメールに「ワンちゃんはYさんにお譲りすることに決めました。おめでとうございます!」と書いてありました。
Aは一般家庭のいわゆるつがいで飼われていたスムースダックスの子供です。母犬はこれで3度目のお産になるそうです。(後日、母犬は3度目のお産の時点でまだ１歳10ヶ月であったことが判明)
その人は、自分ではブリーダーだと言っていましたが、どう考えても素人の自家繁殖家としか思えません。ダックスの繁殖にはカラーの問題など、いろいろな知識が必要ですが、彼女はそういう事はいっさい知りませんでした。Aの父犬も母犬も、ともに片親にロングがいるそうです。異毛種の交配です。Aは５匹兄弟ですが4匹がスムース、1匹がロングで生まれてきました。
そして、5匹兄弟のうち2匹が足の奇形です。ブリーダーは奇形が出てきたことに関して「ダックスは足の改良を重ねた犬なので、足に奇形が出てもおかしくない」と言い切りました。Aに子供を産ませるときのために血統証をどうしますか?と聞かれました。
将来我が家の先住犬Xと仲良くなって結婚ってこともあるでしょ？などと。今生まれたばかりの奇形児のAに子供を産ませることまで考えている人です。私は、将来遺伝の事を考えると、Aに子供を産ませる気はさらさらありませんでしたので、血統証はお断りしました。
先に奇形児2匹の引き取り先が決まり、その後健常犬3匹は、ネットで売られていました。
ブラックタンが8万で、レッドが10万でした。ワクチン、血統証代込みと書いてあり、最後には「早い者勝ちですよ!」と書いてありました。私はすぐさま 「兄弟に奇形児がいることを伝えたうえで、交配不可として売ってください」と強く訴えました。すると、「そんなことわかっています。相手にはちゃんと伝えています。でも売った先で、繁殖がされるかどうかは私の知ったところではない」と返事をもらいました。
でも、実際は奇形児の事は隠して売っていたのです。後になって健常犬を買った人と話す機会がありましたが、ブリーダーは、2匹の奇形児はよそから預かってきて一緒に育てていたんだと見え透いた嘘をついたそうです。健常犬を買った人は、最初から繁殖目的で買いたいとブリーダーに伝えていたそうで、今でもその子に子供を産ませたいと言っていました。でも私はそれは危険だと伝えましたがあまり聞いてくれませんでした。
引き取り前のワクチン接種について、私の場合は無償で譲り受けるので、費用のことが気になり聞いてみました。すると、「この子は母乳を飲んでいるので免疫がある。だからそちらに行って、一ヵ月後にそちらで受けてください」といわれました。
お金で売る子にはワクチンを打って引渡し、無償の子にはワクチンを打たずに引き渡す。
ブリーダーはHPを持っていましたが、今思えばなんとも薄っぺらな、気持ちが伝わらないHPでした。親犬と最低限の子犬の写真が貼られ、売れるまでは週一回のペースで子犬の写真が更新されていました。でも、奇形児の足の部分はうまく隠したように写してありました。
引渡しの当日、奇形児２匹と健常犬１匹は4月12日に引き渡され、残りの健常犬２匹は４月13日に引き渡されたと思います。それで、12日の引渡し後すぐに健常犬を購入した人から、そのHPの掲示板に「とっても可愛い子を譲ってくださりありがとうございます。早くこの子の子供がみたいです」と書き込みがありました。
それで私が「やっぱり交配不可として売っていないじゃん!」と思い、すぐあとに私も書き込みしました。
内容は「今日私はワンちゃんを譲り受けた者です。すぐに獣医さんに診てもらいましたが、確実に奇形だということです。他にも奇形児がいるのですから、他の兄弟の交配はやめたほうがいいですよね」と書き込みました。
そのことで、お金を出して購入した人が驚いて、相手に問い合わせてごたごたになったようです。その数日後、HPは閉鎖されました。
私のしつこいほどの抗議に、相手は『またこのような子犬が生まれてくるのは悲しいですからもう子犬を生ませません。悲しいことは今回で終わりです。』と、メールで返事が来ました。
譲 渡
奇形児AとBは無償で譲り受けています。運搬の交通費はすべて私が負担しました。
最初空輸をお願いしていたのですが、結局私が電車に乗って途中駅まで迎えに行きました。
そして、その人の家がある地域から途中駅までの高速代、往復で3,000円を請求されました。私はその時点で、”手切れ金”くらいの気持ちになっていたので、3,000円とそれまで育ててくれたことへの気持ちでささやかな菓子折りを渡して、すぐに帰路に着きました。私も、今になって血統証をもらっておけばよかったと思っています。でも、その時に健常犬を購入した人Cさんは、血統証をもらったと聞いています。
引渡しの当日はブリーダーである女性のご主人が途中駅に来ていました。なぜなら、ブリーダーは、他の2匹を空輸のために空港へ行っていましたので。その時のご主人はあまり犬のことに詳しくないような感じで、私の質問に答えていましたが、あまりしっかりとした答ではありませんでした。
その時、聞いたところによると、雄犬が先にきて3年くらいになる。雌犬が後から来てたぶん2年くらいかなぁ。という回答でした。ご主人は「うちは田舎だから、いつも外で飼ってるんです。いつも同じひもでつないであるんだよ」と言っていました。
| ブリーダーからのメール |
そして2003年9月
またもや、同じ繁殖者で子犬が生まれましたとサイトが再開されていました。そして数カ所の掲示板に以下のように書き込みがあります。
■A掲示板の書き込み
| 9月30日の書き込み Nさん |
■B掲示板の書き込み
| 9月30日の書き込みのＮさん |
[総括]
今回は4匹の子犬が売りに出されていました。奇形児がいたかは判りません。前回のことがあるので、奇形児は淘汰したのかも知れませんが。
すでにこの母犬は2003年2月、1才10ヶ月の時に3度目の出産を、そして同年の9月に出産させたと言うことは最初のヒートから連続４回も出産させています。まるで子犬製造工場のパピーミルのような状況です。
本来シリアスブリーダーであれば連続で出産させるようなことはしません。最初のヒートは避け、2回目のヒートで最初の出産、次は明ける、そして終生3回までの出産が母体にも無理のない繁殖と言われています。
母犬の健康状態も非常に心配ですが、このような連続繁殖は虐待であるとしか言えません。
また、兄弟犬の血統書から、好ましくないカラー同士の掛け合わせ、スムース×ロングの毛種違いの交配も見受けられたそうです。繁殖に適さない犬同士での繁殖を行っています。
明らかにこのブリーダーはバックヤードブリーダーでしかないでしょう。
このブリーダーは生まれた障害のある子犬を、暖かい家庭に送りました。繁殖者が自ら言ってますが無知であるからこそ障害犬に里親を探したのでしょう。
ダックスの繁殖はプロのブリーダーでも難しいのです。また親犬の遺伝性疾患の検査、交配しても良いカラー同士であること、毛種。良い子犬を出産させるためには多くの勉強が必要です。シリアスブリーダーと言われる方でさえも、その危険性を持っているのです。
さて、このような自称ブリーダーが今やこの日本にはたくさんいます、そして貴方がその自称ブリーダーになるかも知れないのです。自家繁殖の怖さを知りましょう。
愛犬との暮らしを大切にする本当の愛犬家は、繁殖なぞいたしません。愛犬に去勢を施し、一緒に旅をし、一緒にスポーツし、愛犬との暮らしを心から楽しみます。
(2003/11/01)(Yさん&LIVING WITH DOGS)
