シェルターから犬を迎えるって?
シェルターから犬を迎えるって?
日本は、野良犬、迷子犬、不要犬(飼い主が不用として持ち込む)が動物管理事務所に収容されます。不要犬は即時処分されていました。近ごろは子犬や純血種の場合は愛護団体に連絡が入るようになりました。
ただ成犬の野良さんや、迷子犬で飼い主さんがあらわれない犬、持ち込まれた犬は、生き延びられる可能性は低いのです。
東京都2003年度、動物管理事務所の犬の収容数は3544頭、飼い主さんに返還されたのが2263頭、譲渡は513頭、殺処分された犬は768頭です。まだ5分の1の犬が命を全うできずに灰となります。かつての数字からみたらかなり生存率は高まっています。
根本的には捨てない飼い主さんが増えていけばとは思いますが、残念ながら、まだまだそこまで行きません。しかし、徐々にではありますが生き残れる犬たちが増えてきていることは確かでしょう。
飼い主が犬を捨てる理由は一体なんでしょうか?
1. 飼い主の経済状態が破綻し犬に食べさせることが出来ないから
2. 飼い主のしつけ方が間違ってしまい問題犬となってまったから
3. 避妊手術をしてなくて誤って生まれてしまったから
4.家族の病気や、飼い主側の様々な事情で犬を飼えない状態になったから
5.犬が病気や老犬となり介護が出来ないから
6. あきたから
7. 他の犬を飼いたいから
そしてそのようにして捨てられた犬には、
A. 虐待を受けている
B. なにがしかのトラウマを持っている
C. 病気を持っている
等と言うようなケースが多くみられます。
A.虐待を受けたり、B.トラウマを持っているような犬のリトレーニングはとても難しく時間がかかります。なので絶対数が多すぎるのですべての犬を生かすことは無理かも知れません。
2.問題犬、4.病気や老犬の場合は、救われる可能性は0に近いでしょう。
そこで救われる可能性のある犬はというと、性格が良い、子犬、純血種で病気持ちではない、となっているのでしょう。
さて里子に出る場合、収容所から直接里親さんの元に行くよりも、一時預かりの家庭で家の中での暮らし方をトレーニングしながら里親探しを開始し、最終的な里親さんに迎い入れられることが犬にとっても無理のない方法でしょう。この一時預かりのシステムは日本の愛護団体の中で確実に広まってきています。まれに一時預かりの犬がそのまま家族となるケースも多くありますが。
例えば、マルコ・ブルーノさんの愛犬は大部分が一時預かりのまま家族になっています。
その子達は、フィラリアに罹患している、てんかん持ち、目の不自由な犬と何らかの健康上の問題を持っているからです。
アメリカや英国では、里子に出せる犬の基準を厳しくしています。
食事中に食器を触っても怒らない、威嚇しない、子供に優しい等、里子に出せる一番重要なことは、危害を及ぼさない犬であることです。もしもこの基準にあわない犬は殺処分されているんですね。
ですからアメリカや英国でもシェルターから生きて外に出られる数は限られているのが現状でしょう。とは言っても、日本の殺処分数に比べれば圧倒的に少ないんですけどね。
マルコさんの生まれ故郷オーストリアでは町で年間に捨てられ、収容される犬は80頭だそうです。その80頭全頭が生き延びているそうです。
しかし、中には人に慣れない、他の犬ともうまくやれない犬もいます。
オーストリアでは、そんな問題犬をケージに入れっぱなしにはせずに、広いグランドに何頭か共存させて世話をしています。最初は攻撃的だった犬も他の犬と暮らせるようになり、世話をする人にも徐々に慣れてきます。そうなったらトレーニングを開始できるそうです。年間80頭だから出来るシェルターワークだとは思います。
日本の保健所では保護犬のリトレーニングは行っていません。すべての県ではありませんが、東京やいくつかの進んだ県は、性格のよい犬、子犬、純血種は愛護団体に譲渡し、愛護団体は一時預かりボランティアに託しリトレーニングをしています。そして同時に里親探しを行っています。これが保健所でもリトレーニング出来るようになれば良いのですが。
保健所主催で譲渡会を開催している行政もありますが、愛護団体が保健所から委任されてリトレーニング、里親募集を実施しているところが多いでしょう。
動物管理事務所が殺処分の場ではなく、リトレーニングと譲渡を実際に行えれば、本当の保護シェルターと言えるんですけどね。それには人も費用もかかります。でも、この話はまた別の機会に語りましょう。
日本もそろそろ、ペットショップから犬を迎えるのではなく、このようなシェルターの犬たちを家族として迎えることが当たり前になっていけば良いのですが。きっと読者の皆さんもそう思ってらっしゃることでしょう。
(2004/9/9)(LIVING WITH DOGS)