てんかん予知犬によりQuality of Life
明けましておめでとうございます。
昨年は良い話題よりも、暗い話題が多かったように思います。押し迫ってからはイヌの福袋や、仔犬を景品にするなどの最悪の話題がありました。
今年は戌年、世界の犬たちが幸福に暮らせる様になれば良いですね。特に日本の犬たちに取って一歩も二歩も進んで欲しいと思います。
読者の皆様と愛犬にとって、幸福な1年となりますようLIVING WITH DOGSは願っております。
新年最初の話題は、オレゴンのMAX&HOLLYママからの、心あたたまる「てんかん予知犬」と飼い主さんの話題です。(2006/1/2)
さて、12月30日(金)のThe Oregonian(新聞)に癲癇患者を助ける犬の話が出ていたのでかいつまんでお知らせします。
ポートランド近郊に住むHarry Kiick氏(47歳)は先天性の癲癇患者でほぼ一日に一度は発作に襲われていた。彼の発作の種類には4つあり、そのうちあるものは自分でその兆候が分かる。しかしもっとも重度の発作は前触れなしに突然やってくる。1979年オレゴン州立大学就学中に襲われた発作によってKiick氏は二階から地下一階までに転落し、その後遺症で年々悪化を辿る脳障害が残った。更に1995年には車を運転中に発作を起こし、瀕死の重傷をおった。1998年までは小売店で働いていたが、ついに長時間の勤務に耐えられなくなり失業。その後保険関係のコードの勉強をし、現在はコンピューターを使い在宅勤務をしている。
1996年に彼はOregon Health & Science University において迷走神経を刺激する装置の試用実験に参加。このポケットサイズのペースメーカーを胸部に埋め込んだ患者のほぼ30%は発作の頻度を半分以下に抑えることができている。Kiick氏はこの装置のおかげで月に30回あった重度の発作を7-8回の中度の発作に抑えることができ満足していた。
そして彼は3年半前、ある癲癇関係のミーティングで癲癇対応犬を飼育しているElisha Burton氏に出会った。Burton氏はシェルターからレスキューした犬達に様々な障害や病気を持つ患者達を助けるための訓練を施しており、年間平均5匹の癲癇対応犬を育てている。訓練によって癲癇発作が起こるのを感知させることはできないが、5匹に一匹は生まれながらにその能力を備えているらしい。癲癇対応犬は飼い主が癲癇発作を起こした際にボタンを押して救急車を呼ぶよう訓練されている。このミーティングにBurton氏は二匹の犬を連れてきていた。そのうちの一匹、ジャーマンシェパードとアメリカンスタフォードシャイヤーテリアのミックスのほうが、Kiick氏を見てくんくん鳴き、どんなコマンドをしても無視して彼のそばから離れなかったという。Kiick氏は二週間後にこの犬Sashaを手に入れ、今ではSasha無しの人生は考えられない、本当に自分は恵まれていたと感謝している。Sashaはこれまでに何度もKiick氏を救っている。どういうメカニズムかは完全に理解されていないが、SashaはKiick氏の発作が始まりそうになると、本人は気づかなくてもそれをいち早く感知し、立っている場合にはソファーに座らせ、座っている時には自分の身体で足を押さえて動かないようにする。そして発作が一旦始まると救急車が到着してKiick氏が口が効けるようになるまで彼を守ってくれるという。救急隊員のユニフォームが分かるそうだ。
3年半前までKiick氏は自分が犬を飼うことなど考えてもいなかった。友達もいたし、ペースメーカーの効果も出ており、Kiick氏は一人暮らしをそれなりにこなしていた。だがSashaと出会い、本当の意味のQuality of Lifeが分かったという。Kiick氏はSashaに癲癇発作を感知してもらい、虐待を受けシェルター暮らしだったSashaは優しい飼い主との生活を手に入れた。そして何よりもお互いの絆は二人をより幸せにしてくれているという。
(2005/12/30)(The Oregonian新聞記事より)