動物孤児院 (30)クレアの犬特集、見ましたか
クレアの犬特集、見ましたか
こないだの「クレア」という雑誌の、犬特集をごらんになりましたか。
私はその雑誌を空の上で見ました。チャイナエアラインです。何と思いがけなくビジネスクラスにアップグレードされたのです。機内食は和食を頼んで、上機嫌でした。そのときマガジンラックに「クレア」という雑誌が見えたのです。しかも、「気絶するほど犬が好き」と題した犬特集。抱きしめたくなるようなゴールデンレトリバーの小犬が見えました。
雑誌を開けようとして、目に入ったのが、「いぬのうんめい」という記事の紹介です。ガーン!そうです、保健所に入れられた犬が7日目にどうなるか、「うんめいの日」までも毎日カメラにおさめて、ルポした記事だったのです。
これで食欲はゼロになりました。白いリネンの上に並べられたごちそうでしたが、胸がいっぱいで食べられませんでした。
それから3日間、毎晩怖い夢を見て、うなされたのです。話には聞いていたけれど、こうして写真で、はっきり見るのは初めてでした。この記事を書いたライターが檻に手をのばすと、犬がぺろぺろと手をなめるのです。最後の日の朝、檻は2メートル四方の鉄の箱にまで狭められ(つまり犬たちはぎゅうぎゅう詰めにされて!)、酸素を抜かれて殺されるわけ。
黒い鉄板が四方から迫ってくるときの犬たちの恐怖を考えると、眠れなくなってしまうのです。
しかも、この鉄の箱の名前は「ドリームボックス」と呼ばれるというではないですか。この名称に、私は絶句・・・です。
他に、もっと親切な、平和な「殺し方」はないのでしょうか。恐怖を味あわせなくて殺す方法はないのでしょうか。
そして、もちろん、人間的な殺し方を考えるよりも、まず、
殺さずにすむ方法はないのでしょうか。
私は今、そのためにはどうしたらいいのだろう、具体的にどうしたらいいのか、何ができるか、そのことを毎日毎日考えています。
そして、このことを私たちは、もっと公にしなければなりません。「見捨てられた犬たち」がどうなるのか、人はあまり考えたくないのだと思う。ああいった
雑誌を見て、「かっわいい!」「ほしい!」と思うだけなんだと思う。
だから、その意味では、あの記事はすごい。何がすごいかというと、「クレア」の犬特集に、ああいう記事を載せたということがすごい。他の記事と、あまりにも対照的だからです。あの雑誌を買った人は、あの記事を避けて通ることはできない。そして、一人でも多くの人が、「こうやって日本では毎日毎日、かつてはかわいい家族の一員だった犬たちが、恐怖のもとで殺されています。一年で何十万頭も!」ということを、「知る」という点では、すばらしい企画だったと思うのです。
私はそのことで、「クレア」の編集部の人たちに礼状を書くつもりです。
ええと、それから、ドイツに帰るときに乗ったチャイナエアラインで、再び「クレア」の次号を見ました。最後の頁の読者欄に、だれかが書いていましたよ!
「いぬのうんめい」を読んで泣いた!と。
泣いたのは私だけではなかった、と思いました。
日本からこの忌まわしい「ドリームボックス」が廃止される日が来ますように。犬たちが殺される代わりに孤児院に収容され、犬を飼いたい人は動物孤児院に行って見つけることが「常識化」される日が来ますように。
これをお読みになったみなさま、どうぞ、「いぬたちのうんめい」のことを、なるべく多くの人たちと語ってください!