大型犬の介護をする

大型犬の介護をする

大型犬トレーシー、ゴールデンリトリバー雌13歳と11ヶ月を老犬でリンパ性白血病、悪性腫瘍、という病をもって介護しました。その体験を通して、大型犬と暮らす方に少しでも参考にしていただけければと書き留めておきます。


<家の中のトイレが使えるようにしておく>
わが家のトレーシーは小柄でしたが、体重は全盛期の頃で30Kg弱、晩年は20?強でした。仔犬の頃は家の中で用を足しましたが、お散歩をするようになってからは、外でしか用を足さなくなりました。家の中のトイレで用をたせるように育てておくことが必須でしょう。

<階段の上げ下ろし>
トレーシーが貧血状態で目が見えない、歩けない状況になったとき、わが家の住むアパートは、5段の外階段、ロビーの4段の内階段があります。外階段は手すりがありますが、内階段は手すりもなく、人の要介護高齢者と暮らす方にとってはこの階段がネックとなっていました。
わが家の場合、愛犬が足腰が弱くなって、この二つの階段は愛犬をお散歩に連れ出すには、愛犬を階段を抱きかかえて降ろしてあげることが課題となりました。
徐々に私も馴れてきて、不思議なことにこの数段の階段の上げ下ろしは一瞬の抱きかかえで出来るようになりました。またトレーシーも私がお散歩に連れ出すときは出来るだけ自分の足で歩いてくれます。かなり母親思いの子でした。

<お外の景色を見る時間>
リンパ性白血病の症状がでてからは、貧血状態の日がありました。徐々にぼーっとしてきました。それでもお散歩に行きたい。お天気の良い日は、アパートの玄関に出て、階段にすわり、しばらく日光浴をしていました。トレーシーは外の風を感じ、行き交う人、車を眺めていました。お散歩は出来なくても、外に出ることは彼女にとっては楽しみだったと思います。

<周りの方に理解をしてもらう>
アパートの中庭は共用部分ですので、本来犬の散歩には使用できません。わが家の部屋のドアからそのジャリまでは平面ですので、退院してから、住民の方にご相談し、そのジャリの庭で排泄させていただくようお願いいたしました。
トレーシーの病状を12月から見守って下さった住民の方々ですので了解下さったのです。もちろん、糞は取り、オシッコはペットボトルの水を上から掛けていました。

<食事台と食欲>
トレーシーは4歳くらいから食事台の上で食べさせていました。床に直接だと首を前にかがめなければなりません。喉の腫瘍が大きくなってからは、やはり台の上の食器からの方が楽であったと思います。具合が悪いときはやむを得ず、お団子にしたフードを手で口の中に入れることもありましたが、状態の良いときは出来るだけ自分の足で食事台まで来させて自分の意志で食べさせるようにしていました。

<お尻の腫瘍がむき出し状態になってからの介護>
12月16日にお尻の腫瘍がむき出しになってから、腫瘍部分に薬剤の塗布その上に女性用の生理用パッドを2枚ないし3枚を腫瘍がすっぽり収まるように形を作って被せ、その上に子供用のオムツパンツに尻尾部分にはさみで切り込みを入れてはかせていました。
オシッコの度に、パンツを脱がせ、パッドを取り替えていました。トレーシーはオムツパンツを嫌がらずはいてくれました。
入院後、腫瘍部分に薬剤塗布後ガーゼを被せ、おなかにバンデージを巻き、ペットシーツを3つ折りにした包帯を背中のバンデージに掛けて包帯をしました。包帯をしたままオシッコもウンチも出来るようにしました。

<家族の協力なしでは大型犬の介護は無理>
退院後、わが家で、朝晩の2回のお尻の洗浄(シャワーで腫瘍部分を洗います)と、患部への薬剤の塗布、包帯。これを夫婦で行いました。
壊死をすすめるクリームを2日〜3日おきに塗っていましたが、トレーシーはこのクリームを塗ると痛いので嫌がっていました。シャワーでの洗浄、薬剤の塗布、包帯、これらの作業を1人では出来ず、必ず主人にトレーシーを保定してもらわないと出来ませんでした。病院では獣医師の治療中は看護士さんが二人付きっきりで保定していました。
大型犬の介護は、1人では無理だと思います。必ず家族の協力なしでは出来ないでしょう。朝晩の包帯替えはもちろんのことですが、病院通い、お散歩、トレーシーは自分の足で歩いてくれましたからまだそれほどの負担ではないのかも知れません。もしも寝たきりとなった場合は、1人で抱きかかえることは不可能だったでしょう。

<介護台を用意する>
大型犬の介護は、特にトレーシーの場合はお尻の腫瘍部分を洗ったり、薬剤を塗布し、包帯を巻きます。いつも中腰で行っていたために、私の持病である股関節に痛みが起こりました。そこで、わが家は、ダイニングテーブルにトレーシーを乗せてケアするようにしました。保定する主人がトレーシーを抱いてテーブルにあげてくれます。
それでもお散歩の度にオムツパンツの脱ぎはかせ、シャワーの時は中腰でなければ出来ません。介護する人も出きる限り楽な姿勢で介護しやすい環境を作ることをおすすめします。

<介護で使用した物>
プラスティック・グローブ:
お尻の腫瘍がむき出しでしたから、直接指で患部を触ることもありますが、薬の塗布などはプラスティック・グローブを使用しました。夜中にトレーシーが自ら腫瘍を振り落としたとき、このグローブをした手で受け止めました。
ペーパータオル:
お尻の洗浄後、ペーパータオルで腫瘍部分、おなか、背中、足を拭きます。
オムツパンツ:
トレーシーは子供用のオムツパンツをはかせていました。最初に購入した物はサイズが合わず、結局袋を開けてそのままでした。最終的にムーニーマンの男の子用ビックよりも大きいサイズを使用していました。
どんどん傷口が大きくなって包帯がはみ出るようになりましたが、ペットシーツとバンデージでカバーしてこのオムツパンツで過ごしていました。
バンデージ:
伸び縮する絆創膏です。毛や皮膚についてもはがすとき痛がらないようにスプレーで水をかけながら少しづつはがします。
ガーゼ:
腫瘍部分と、おなかの柔らかい部分にバンデージが直接触れないようにガーゼをあてました。
ペットシーツ:
家の中でトイレをしない犬でしたが、お尻の洗浄後、足ふきとして、また小型犬用のペットシーツは包帯として使用しました。腫瘍を自分で振り落としたとき、腫瘍をペットシーツでくるみ、病院に連れて行くまでの応急処置に使用しました。ペットシーツは万能なグッズでしょう。

<寝具・ベッド>
トレーシーは2カ所にベッドがありました。夜間の私たちのベッドルームに一つ。昼間は私がパソコンに向かっている時に横に一つ。
お尻の腫瘍がむき出しになってパンツをはかせていましたが、グジュグジュした液や、血がどうしても漏れてきます。ペットシーツをベッドにしていた長座布団のカバーの内側に敷いていました。また長座布団の上には大きめのバスタオルを敷きました。動けないときタオルを両端を持って二人で移動させることが出来ました。
ベッドで光線治療器をあてていましたが、場所を自由に変えるにも長座布団は動かすのは楽です。
喉の腫瘍が大きくなる前から、トレーシーは枕を使っていました。バスタオルの中に衣類を丸めて撒いただけの枕でしたが、喉の腫瘍が大きくなってからは必需品でした。

<シャンプーと毛繕い>
8月にリンパ性白血病と診断されてから、最後のシャンプーは9月に1回だけでした。老齢性のふけはどうしても多かったのですが、体力的にシャンプーは無理と思ってしませんでした。それでも、トレーシーの被毛は決して汚くなりませんでした。別に特別に体中を拭いてもいませんでした。コームでたまに全身を梳かすくらい、被毛がべたべたすることなぞはなく、いつもサラサラとしていました。最後の2ヶ月、お尻の腫瘍のシャワー洗浄は毎日2回していましたが、その度にお尻の周辺、おなか、背中はシャワーの飛沫が飛びますから、きれいに拭いてあげてましたので、それだけで全身がいつもきれいになっていたのでしょう。もしもべたべたになるような毛質の場合は温かい濡れタオルで全身を拭いてあげると良いと思います。

<耳の汚れ・歯磨き>
トレーシーが病気になり、特にお尻のケアが必要になってから、耳の中までケアが行き届かなくなりました。耳の中は、以前からすぐに汚れてしまう体質でしたから、かなりかゆかったのだと思います。病院で耳の状態をみて下さって、毎日掃除をして下さったようです。退院してから、お尻のケアが終了したら必ず耳の薬をと注意しました。
歯は、寝る前に歯磨きをする習慣でしたが、トレーシーがリンパ性白血病と診断されてから、無理に歯磨きを実行しませんでした。気持ちよく寝ているところを無理に歯磨きをしなくても良いと判断したからです。
トレーシーの歯は、霊場の焼き場でお骨となって帰ったときにしっかりした歯が残っていました。8歳の時に歯科専門医で治療していただいたお陰だと思います。

<介護中の気分転換>
飼い主さんが介護で疲れることもあります。トレーシーが病院に入院する期間が2週間ほどあり気分転換の時期ともなりました。こんな時期も作った方が良いかも知れません。

<介護の支えとなった障害犬の存在>
LIVING WITH DOGSには、障害犬と暮らしている方々がたくさん訪問下さっています。
その1人にゴンちゃんがいます。まだ幼いときに交通事故で下半身麻痺となり、車椅子を使用しています。排泄も介護なしでは出来ません。
みずほさんがゴンちゃんと一緒に暮らそうと決めて下さったときから、ゴンちゃんが幸せな暮らしをしているのを見せて下さって、私はみずほさんに感謝の気持ちよりも、「なんと立派〜だろう」、私にここまで出来るかと思えました。
トレーシーがオムツ犬になったとき、いつもゴンちゃんは毎日同じことをみずほさんがしているんだ、だから今、わが家のしているトレーシーの介護が終わる日はゴンちゃんよりも短いのにと、みずほさんの頑張りに改めて気付かされたのです。


これらは、トレーシーの介護を通して体験的に気付かせてくれたものばかりです。

老犬介護は残された日数は見えています。長くても1年から2年でしょう。私たちは8月に発病して8ヶ月間、要介護となってから6ヶ月間でした。
「障害犬と暮らしている方々は、毎日、それもいつ終わるか判らない介護を続けているんだから、今のトレーシーの介護なんて障害犬の介護に比べたらなんて言うことはない。みずほさんが毎日している事を私も出来るはず。」この言葉がトレーシーの介護をするときにいつも支えてくれた言葉でした。
そして障害犬と暮らしている方々に改めて敬意を感じていました。
みずほさん改めて感謝します。ありがとう!
(2006/5/10)(LIVING WITH DOGS)


老犬介護の記事、読みました。
ゴンのことをこうして書いてくださってありがとうございました。
ちょっと褒められすぎてて恥ずかしいんですが…何度も何度も読み返してはウルウルしています。

お世話になっているのはこちらの方なのに!!
障害犬と暮らしていていつも感じることですがわんこの笑顔に背中を押され、わんこの頑張りに応えようと人も頑張れる、まっすぐな瞳の奥にある信頼に応えようと頑張れるし、わんこもまた同じくこちらの頑張りに精一杯応えてくれるんですね。

それぞれに事情や状況は違っても、そこにある思いは共通なんですよね。

で、障害犬と暮らしてもう4年が過ぎての私の現在の状態はと言うと…
今ではゴンのオムツやお尻洗浄も導尿も普通に生活の一部となっています。最初は果てのない介護生活に不安や悲しみ、それに体力的にも限界感じたことがまるで嘘のようです。慣れって凄いと言うか…もう普通の健常犬さんとの暮らしは出来ないと言うか、普通のわんこさんのお世話の方が大変な気さえしています。
里親さんになりたいと思いつつできない理由は実はココが一番大きいんです。
変かも知れないですけど、本当にそんなことを思ってます。

LWDを立ち上げてくださって本当にありがとう!!
障害犬と暮らすことは大変なこともあるけれど、こんなにも素晴らしい経験ができたことも、素晴らしい仲間とめぐり合えたのもこの場所があったからです。
(2006/5/11)(みずほ&ゴン・ノン)

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