リリとボク

リリとボク

[心に残る犬との思い出]

交通事故や遺伝的な疾患で障害を持ってしまった愛犬を介護をされている飼い主さんはとても増えてきました。LIVING WITH DOGS 「障害犬との暮らし」にはたくさんの素晴らしい飼い主さんが体験記を書いて下さっています。今回は、またとっても素敵な飼い主さんからお便りをいただきました。
病院で安楽死を決定された犬は、獣医師の判断により、ケージ飼いで里親さんが現れるのを待っていたのです。本来ならば、生き延びられなかった犬でしたが、獣医師はこの子の生命力を感じ取ったのかも知れません。成犬になっている障害犬の里親になることは、一般的には大変なことと言われていますが、ご夫妻は障害を持つ犬との出会いを普通の犬との出会いとまったく変わらない、出会った犬が偶然障害があったと受け止めて、この子達の成長過程での驚きと感動、そしてこの子達に出会って幸せですとおしゃっています。
リリちゃんもボク君も、たーくさん愛してもらってずーっと可愛い子達でいてね。
(2004/10/24)(LIVING WITH DOGS)


私の家には下半身不随のリリと三本足のボクという小さな犬がいます。確かに2匹とも障害を持っていますが、今の私にとってそんなのはどうでもいい事なんです。一緒にいて楽しいし幸せだからです。2匹もそう思ってくれていると信じています。私が彼らと出会ったのは動物病院で2000年春です。
そこには飼い主さんの手から離れ病院の子となっていた動物たちが数頭いました。その中にポメラニアンのリリとボクがいたのです。そしてすでに障害を持っていました。

リリは1997年生まれで1歳になる前に交通事故により骨髄を損傷し下半身が麻痺してしまったと聞いています。飼い主さんは考えた末、安楽死を選択されましたが、先生はそれをせず病院の子として迎えて飼っていたのです。ボクは1999年生まれです。ボクも1歳になる前に、左の前足を骨折しましたが骨が細く、回復することができず断脚という結果になったという事です。

当初、ボクには飼い主さんがいたのですが1年余り後、理由はわかりませんが飼育放棄されたと先生から聞きかされました。

私は、リリのことが気になって仕方なくいつも考えていました。先生に頼んで何度か家に連れて帰り、遊んだりシャンプーしたりしてまた病院へ。そんな事を繰り返すうち、リリについて色々わかってきました。遊び盛りにケージの中にいたせいか、どうやって遊べばいいのかわからない状態でした。遊んだ事が無いのが理由だと思いますが、乳歯が抜けずに残り、永久歯と重なって生えていました。

何か要求があるときはクルクル回って知らせてくれました、やはりケージの中で動ける範囲でですが。このまま病院のケージの中で生涯暮らすのだろうか?自分に置き換えると30年近く狭い檻の中で生きるなんてイヤだよねって思ってしまったんです。家の子にする事はできないだろうか。とりあえず我が家の、経済的状態、夫の理解、環境、幸せにしてあげれるだろうかなど悩みました。

最初リリは毛が伸び放題で臭く汚かったうえ、動きも独特で、始めて見たときは正直気持ち悪かったし、夫もそうでした。それに下半身不随という障害がある以上、これから起こりうる病気も考えなくてはなりません。でも、何度か家に来るたびに話し合い、うちのリリになってもらう覚悟ができました。
そして病院の先生に相談したところ、病院にいるよりはもちろん良いと快諾してくれ、2001年3月1日乳歯を抜歯して、晴れて正式に家族の一員となりました。 ボクのことも気にはなってましたが、彼は人なつこく里親の話が何件かあったので安心していました。でも結局その後1年間里親は見つかりませんでした。うちにはもうリリがいたし経済的な問題もあったので決心するまで、そうとう時間がかかりました。

実家の母に相談したら『何かあったら協力するから安心しなさい』と言われ、すぐさま夫に相談し、リリと相性が合うようならと何度か連れてきて過ごしました。2匹はつかずはなれずでしたが、なぜか寝る時は一緒で迷いはなくなりました。ボクがうちに来たのは2003年1月21日。その頃は1.5kgしかなく耳の毛も無くリリと同様クルクル回り、乳歯がほとんど残ってました。2匹とも成犬になってから我が家にきましたが、ふたりとも様々な成長を見せてくれました。

リリの下半身はまったく動かなかったのですが、いつもさすったり、運動するようになったからか動くようになりました、自分の意志とは関係なく動くんですけど。骨と皮しかなかった後ろ足も筋肉がつき靴下で遊ぶことも覚えました。試行錯誤の結果できた3台目の車椅子に乗って外で遊ぶことも出来るようになったのです。

ボクは臆病で色んなことにビクビクしていましたが、落ち着いて名前を呼ぶと走ってくるようになりました。ガリガリでしたが筋肉がつき体重も増えました。ジャンプしてお気に入りのソファにあがることも出来るようになりました。まだ遊ぶことが理解できないようですが、おもちゃには興味があるようです。ゆっくりした成長ですが一つ一つが大事件のように私と主人に喜こびをくれます。

知り合いのおばさんは、最初2匹を見て『気持ち悪いから見せないで』と言っていましたが、今では可愛がってくれる1人となりました。後で判ったことですが、可哀相で見ていられなかったようです。外に出るとよく『可哀相だね』等色々言われます。私は、そのようなことを言われると落ち込んだり、腹が立ったこともありますが、時間をかけると理解してくれることを知りました。そういう時は、「出来ない事もあるけど普通の子と変わりない」と説明します。

それに介護という問題もありますが、健康なワンコたちも世話が必要なのと同じで変わりはないと思っています。ちょっと健常犬よりも注意することが多いだけで、どんどん明るい表情になってくれる分、私達を幸せにしてくれるんですね。

リリもボクも過去に痛い思いや辛いことがあったかもしれませんが、彼らは誰も恨んでいないし、自分たちのことをえらいともみじめだとも思ってないし、素直でとっても前向きです。
夫も私も、過去ではなくこれからのリリとボクの人生が重要だと考えてます。世間には、このように飼い主さんを待ってる子がたくさんいることをもっと知ってもらいたいと思います。

最後にひとつ。『こういう子を飼ってえらいね〜』とよく言われますが、絶対にえらくないです、だってリリとボクが来た事はラッキーな出来事なんですもん!! 逆に私達の所に来てくれてありがとうと感謝するだけです。

(2004/10/30)(東京都、I.Iさん)

 

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