動物孤児院 (35)「自由」とは「野放し状態」のこと?

「自由」とは「野放し状態」のこと?
 
2年前、この郊外の住宅地に異変が起き出しました。大木が次々と倒され始めたのです。
チェーン・ソーの不気味な音が聞こえ、外に出てみると、向かい側の家の庭にあったすばらしいマロニエの大木が根元からない!! 
そうやって、次々に、百歳を越えていた杉の大木も、プラタナスも、白樺も、春には見事な花をつけていた八重桜もばっさり切られてしまいました。
それまでは、個人の敷地内にある木であっても、直径が40センチ以上であれば、自由に切ることはできませんでした。ところが、市が「自由化」したとたん、多くの貴重な大木が住宅地から消え去る結果になりました。切る理由も、「倒れる危険があるので、やむを得なかった」のではないのです。以前も、「やむを得ない」場合(木が病気にかかっていたり、寿命がきていたりして、嵐で倒れる恐れがある)は切り倒すことができたのですから。
あまりにも多くの大木が犠牲になったため、この「自由化」に対する批判が起こり、市議会もついに「木を切る自由があり続けると住宅地から大木がなくなってしまう」と懸念したのか、来年からは再び制限されるそうです。しかし、そのニュースを知って、「では今のうちに切ってしまわねば」と考える人もいて、このところチェーン・ソーの聞こえてこない日がありません。

あれ? 犬の話じゃなくて、木の話?
実は、あれほど樹木を愛している(はずの)ドイツ人が、「切り倒す自由」を得るやいなや、「待ってました」とばかりに、どんどん大木を切り倒し始めたときは、正直、ショックでした。そして、この、どこにも持っていきようのない怒りとフラストレーションは、日本の犬事情を考えるときに感じるものと同じだと思ったのです。
日本も、お役所が犬の繁殖を厳しく規制しないかぎり、「不要犬の殺処分」問題は日本から永遠になくならないでしょう。繁殖家たちの多くは利潤追求のために流行犬を増やし続け、ペットショップは犬を売り続けるでしょう。売れなかった犬たちが捨てられ続け、「殺処分」されるでしょう。

日本のお役所がドイツの「殺さないで保護する」という方針を研究してくれたら、と願います。
先日、愛知県のあるお役所専属の獣医師Sさんがドイツの現状を視察に来ました。私たち夫婦は、このときとばかり各地の「動物ホーム」のアポをとりまくり、Sさんに見てもらいました。Sさんは休日さえ返上して精力的にドイツ中を駆け巡っていました。彼女の、「殺したくない」思いが、きっといつか反映されると信じています。

日本に、殺処分する施設が存在するかぎり、要らなくなった犬や、売れなかった犬を連れてくる人間は存在し続けるでしょう。なぜ、ドイツには犬を殺処分する「管理センター」がなくても、なんとかやっていけるのか、その点に、お役所の人たちが興味をもってくれる日を待っています。

ちなみに、ドイツでは :

●避妊手術をしていない雌犬を3頭以上飼っている場合、もしくは、3頭以上の子犬を産ませた場合、登録の義務があります。

●職業として繁殖している人も、趣味で繁殖させる人も、3頭以上の子犬を産ませたら、登録して許可を得なければなりません。多頭飼いのための空間の確保や、衛生管理の条件を満たす必要があります。

●ペットショップでの犬の生体販売はなし。

というふうに、ちっとも自由ではないのです。

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